生きている「リョーマ」 - Living, Loving, Thinking, Again

「小田急線事件」*1をきっかけに、「負の性欲」という言葉がしゃしゃり出てきたみたい。「インセル」というか所謂「弱者男性」ども*2によって。
たけのこ（あび一味）曰く、

たけのこ（あび一味）
@k3125ctj

小田急事件みたいなのが起きないように、女性の負の性欲の抑制と弱者男性への支援が必要なんだよな。でも、社会はそんなことに気付かない。これからも女性の負の性欲は無制限に解放され、弱者男性は社会から見捨てられる。だから、これからも女性なら誰でもよかったという事件は起き続ける。
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3:13 PM · Aug 7, 2021·Twitter for iPhone
https://twitter.com/k3125ctj/status/1423890122915811332

また、「リョーマ」という人が８月20日に、

リョーマ
@ryoma_v2

負の性欲を科学的去勢で無くしたら良くない？どんなに格下で低年収のキモ男であろうと、セックスすることに抵抗無くなったら解決じゃね？キモい男から言い寄られる苦痛も消えるし、少子化も解決して社会の持続性も保たれるし。
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3:27 AM · Sep 10, 2021·Twitter for iPad
https://twitter.com/ryoma_v2/status/1436033514638438400

とツィートしている。
要するに、女性の「キモ男」や「弱者男性」との性的接触に対する「抵抗」や嫌悪を「負の性欲」というらしい。この「負の性欲」というコンセプトを、進化生物学を動員して、解説・弁護している御田寺圭「「負の性欲」はなぜバズったのか？そのヤバすぎる「本当の意味」」*3によると、この「負の性欲」というのは「リョーマ」なる「アンチ・フェミニスト系」のアカウントによって2019年７月につくられた言葉である*4。この記事によれば、「リョーマ」のツィッター・アカウントは「凍結」された筈だけど、上に見るように、堂々と復活している。生きているのだ。
さて、ワッシュ氏*5は

興味深いのは「負の性欲」論をぶつ人の多くが、男の性的魅力と社会的地位・経済力をほぼイコールで捉えていること。女には打算しかないと思っているのかね。 https://t.co/y9UzAF0QVF
— ワッシュ (@washburn1975) 2021年9月10日

「負の性欲」という言葉がなぜこれほど一部の男を惹きつけるのか考察してみたんだが、どう考えても「自分も女が性欲を向ける対象でありたいという願望」という結論にしかならないんだよなぁ。 https://t.co/zjrFpAzNpq
— ワッシュ (@washburn1975) 2021年8月8日

と言っている。
私が違和感を持つのは、「負の性欲」論のみならず「弱者男性」による言説においては、性というのがエントロピー論的な準位でしか語られていないんじゃないかということだ。もっと下品な言葉を使えば、排泄としての性。だから、「女性の負の性欲の抑制」云々というのは、女性は「弱者男性」のための〈肉便器〉になれ！　という意味でしょ？　倫理的にも・現実的にも、そんなことが容認されることはないだろう。また、別の側面から見ると、これは〈他者〉のいない性だと言えるかも知れない。つまり、そこで意識されているのは自分が抜くことだけで、他者がどういう経験を得るのかというようなことは考慮の外なのでは？
こちらは、「負の性欲」論をマジに受け取って、応答してしまった例；

トイアンナ *6「女が男を差別？恋愛対象ではない男性を排除する「負の性欲」の正体」https://gendai.ismedia.jp/articles/-/68971

*1:See eg. https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/2021/08/07/145606

*3:https://gendai.ismedia.jp/articles/-/69024

*4:実は、既に2018年９月に「リョーマ」による「負の性欲」というblogエントリーがアップロードされている。http://senyousociety.blog79.fc2.com/blog-entry-62.html