物語の不在？ - Living, Loving, Thinking, Again

「小人プロレス（ミゼットプロレス）は人権団体がつぶした？　　#ネトウヨデマ対抗テンプレ」https://odd-hatch.hatenablog.com/entry/2020/05/18/160255 *1

Twitter上では、小人プロレスは「人権団体」によって潰されたと宣う浮塵子の如き熱湯浴の群れに対して、Washburn氏*2 がほぼ孤軍奮闘しているのだった。でも、このエントリーが投入されたからには、少なくとも暫くの間は雲霞も鳴りを潜めるんじゃないか。
「小人プロレス」を抑圧したのは「人権団体」というよりは世間の声だったということになる。また、このエントリーにインスパイアされて、関連するWikipediaの項とかをちょっとブラウジングしていたのだけど、白木みのる *3は「視聴者に不快感を与える」ということでNHKに出演を拒否され、怒った白木はNHKの受診料の支払いをボイコットしただけでなく、自宅のTVもNHKが一切映らないように改造させたという*4。
現在では、「人権団体」も世間もパラ・アスリートを抑圧しようとは思わないだろう。しかし、1960年代には、抑圧や隠蔽の対象だった。1964年の第２回パラリンピックの「日本選手団長」を務め（山口文憲「パラリンピックと白衣の時代」in 『やってよかった東京五輪』*5、p.208）、「日本の障碍者スポーツの父、日本のパラリンピックの父ともいわれる医師・中村裕」（p.207）は、1961年に「第一回大分身体障害者体育大会の開催に奔走する」が、

（前略）身障者スポーツに対する世間の理解はまだおそろしく低く、「障害者を見せ物にするのか」という非難の声さえ上がったという。手厚いケアを受けながら病院のベッドで過ごすのが身障者にとってのしあわせ。いいかえれば、身障者は社会から隠し、隠れるのが、社会にも本人にもいいことだというのが、この時代の常識でありコンセンサスだったのである。（pp.207-208）

この「コンセンサス」は『全員集合』からミスター・ボーンが追放された1980年代初頭にはまだ生き残っていたことになる。
パラ・スポーツが世間に公認されたことについては、国際的な権威の存在もさることながら、（屡々「感動ポルノ」*6とも揶揄される）感動的な物語の力があったのでは？　翻って、「小人プロレス」の方にはそのような物語がなかった、或いは敢えて作らなかった？

やってよかった東京五輪 ―オリンピック熱1964 (新潮文庫)

作者:山口文憲編
発売日: 2020/03/28
メディア: 文庫

*4:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%99%BD%E6%9C%A8%E3%81%BF%E3%81%AE%E3%82%8B

*5:Mentioned in https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/2020/04/05/105514 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/2020/04/29/085824 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/2020/05/06/133926