摩擦以上

AbemaTV「日本のセックスレス、原因はAVか ネットの普及で「価値がなくなった」専門家が指摘」http://www.huffingtonpost.jp/abematimes/sexless-av_a_23324473/



結婚する前はあんなにラブラブだったのに......。心の病気、コミュニケーションの不足......何らかの理由で夫婦間のセックスレスに悩む人たちが増えている。

結婚しているのに夫に片思い。『Wの悲喜劇〜日本一過激なオンナのニュース〜』(AbemaTV/アベマTV)*1では、「セックスにタブーはない!禁断の4時間スペシャル」を放送。前編では「なんでしてくれないの? セックスレス」をテーマに当事者たちが赤裸々に本音を語った。

さて、

一方で、恋愛や結婚生活について詳しいフリーライタートイアンナさん*2は実際にVRのAVを観たことがあるという。トイアンナさんは「女の子のおっぱいがグイグイ寄ってくるし、今まで映像で見ていたものがもっとリアルになる。二次元との境がなくなって、(AVの)ファンタジーがファンタジーじゃなくなってきている」と指摘した。
さて、どうなんでしょうか。たしかに、所謂アダルトVR*3とセックス・ロボット*4が組み合わさることによって、性産業(特に射精産業)は大きな変容を被り、例えばセックス・ワーカーの大量失業ということも起こりかねないといえるだろう。セックスが摩擦とエントロピー低減に還元できるのなら、話はそれで終わりなのだが、近代人にとってセックスとはたんなる摩擦の問題ではなく、人格やアイデンティティの問題でもあるのだった*5。とすれば、誰とやるのかということが問題になって来る。誰に関しては、テクノロジーが介入する余地はないのではないか。また、VRが幾ら凄いと言っても、性愛に特有のあの匂いとかぬめぬめ感といったクオリアを括弧で括った上で、その凄さは成立しているわけでしょ。それ故に古市憲寿氏は忌避するかも知れないけれど*6、他方でこれこそが生の性愛の醍醐味である言えるかも知れない。だから、VRの恋愛生活や結婚生活に対する影響は性産業に対する影響よりも限定的といえるのではないか。
クオリアということだけど、丸谷才一『持ち重りする薔薇の花』*7で、「西」と「小山田」の妻「雪ちゃん」との戯れを語る「梶井」――「(前略)柔らかいボタンや襞や潤つてゐる畝や窪みの翳りにあれこれと優しく指を使つてかはいがつてやつたら、喜んで、声をあげて、おお! 紫一色の虹が立つと言つたさうです」(p.197)。VRはここに迫れるか。
持ち重りする薔薇の花 (新潮文庫)

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