JFC

『毎日』の記事;


新日系フィリピン人:不法就労で容疑のブローカー逮捕へ

毎日新聞 2015年02月14日 08時00分(最終更新 02月14日 08時27分)


 日本人の父親とフィリピン人の母親の間に生まれた「新日系フィリピン人」(JFC)らの女性を不法就労させたとして、岐阜県警は13日、来日を仲介したブローカーの男ら約10人について入管法違反(不法就労助長)容疑で逮捕状を取り、岐阜、愛知両県内のパブ計5店舗を家宅捜索した。男は「国籍取得を手伝う」などと持ちかけ、来日した女性にパブで低賃金労働を強いていたとされる。2009年の改正国籍法施行でJFCらの国籍取得が容易になったことを背景に、ブローカーとのトラブルが増えているという。

 捜査関係者によると、男らは、女性に就労できる在留資格がないことを知りながら、パブなどで働かせた疑いがもたれている。

 この男の下から逃げ出した複数の女性やその支援者によると、男は「国際財団」の看板を掲げ、フィリピン人の妻が通訳して現地でJFC母子を勧誘していた。来日させた後、生活費や経費などで「借金がある」と説明し、“返済”のため提携するパブで働くよう指示していた。少なくとも数十人が国際財団の仲介で入国したとみられる。

 改正国籍法によってJFCらは、出生後に日本人の父親らに認知されれば、両親が結婚していなくても日本国籍を取得できるようになった。JFCの母親も、子に日本国籍があれば定住資格が認められやすい。一方で、国際移住機関(IOM、本部・ジュネーブ)駐日事務所には09年ごろから、「ブローカーにだまされた」といったJFCやその母親からの相談が急増している。JFC母子の大半は日本語が不自由で「つけ込む隙(すき)が生じている」と担当者は指摘する。

 アジア・太平洋人権情報センター(大阪市西区)の藤本伸樹研究員によると、国籍取得を支援する人権団体に加え、工場や介護施設など就職先を案内する仲介業者も増えている。だが中には、渡航費を過剰請求する▽休みを与えず低賃金で働かせ、パスポートを取り上げる▽月数万円の貯金を強制する−−など悪質な業者もいる。

 フィリピンの人権団体の女性スタッフによると、こうした業者が日本大使館の近くに軒を並べ、大使館に相談に訪れたJFC母子を勧誘している。【林田七恵、梶原遊、野村阿悠子】

 【ことば】新日系フィリピン人(JFC)
http://mainichi.jp/select/news/20150214k0000m040117000c.html

 1980年代以降に主に興行ビザで来日したフィリピン人の母と、日本人の父との間に生まれ、フィリピンで育った子供たち。JFCは「Japanese Filipino Children」の略。戦前や戦中にフィリピンに渡航した日本人の子孫と区別し「新」を付ける。ピークの2004年には約8万人のフィリピン人が興行ビザで入国しており、JFCも数万人以上いるともされるが、全体像は分かっていない。父親に養育を放棄された子供も多い。
http://mainichi.jp/select/news/20150214k0000m040117000c2.html

また、

新日系フィリピン人:「工場で仕事」実はパブ 手口を証言

毎日新聞 2015年02月14日 08時01分(最終更新 02月14日 08時28分)


 父の面影を求めた“祖国”で、約束はほごにされた。日本人の父親とフィリピン人の母親の間に生まれた「新日系フィリピン人」(JFC)らが働いていた岐阜、愛知両県のパブが、入管法違反容疑で岐阜県警の家宅捜索を受けた。来日に関わったブローカーの男の下から逃げ、今も息を潜めて暮らす女性らが、約束にないパブでの労働を強いる手口を毎日新聞の取材に証言した。

 「お金は要らない。ただ、工場で4年間働いてほしい」。大学生だったJFCの女性(20)はフィリピンの首都マニラで昨年6月、日本人の男に来日を持ちかけられた。

 女性が生まれて9カ月後に姿を消したという日本人の父親。その戸籍には入っておらず、20歳の誕生日までに申請しないと日本国籍を取れない。日本大使館に相談しても話が進まず途方に暮れていた時、「JFCを支援している」という「国際財団」の男を知人に紹介されたのだ。

 自分は、周りの友人や親族とは顔つきも、時に振る舞いも違う。私は何者なのか。日本という国や日本人を知れば父に近づき、自分のことも分かるのではないか。「お金だけの問題じゃない。アイデンティティーの問題」。そんな思いで来日を決めた。

 だが大学をやめて7月に来日すると、中部国際空港に迎えに来た男の車は岐阜県のパブに直行した。数日後、初めて“借金”があると告げられた。食費もただという触れ込みだったが、「ご飯を食べるだけでも借金が積み上がる」と言われた。経費が60万円かかったとも言われ、隠れて泣いたが、酔客の接待を断れなかった。

 別の女性(34)もこの男を頼り、日本人との間に産んだ長男(10)=日本国籍=と昨年4月に来日。だが、パスポートを取り上げられ、名古屋市のパブで働かされた。長男を通学させる約束は破られ、外出も止められた。来日前に30万円と約束された月給は8万円しかなく、「逃げれば罰金150万円。(男の)兄弟がヤクザだから、どこに行っても見つける」と脅された。だが長男の将来を考え、男がフィリピンに渡った昨年8月、隙(すき)を見つけて逃げ出した。
http://mainichi.jp/select/news/20150214k0000m040126000c.html

同時期に来日した女性(29)は、長女(7)に既に日本国籍があるのに「訴訟費用に60万円かかった」と、返済を求められた。来日前に工場での仕事を紹介されることになっていたが、4年間パブで働くよう言われた。10月に逃げたが、居場所が発覚する恐れから支援者のつてで転々とした。「早く働きたい」が、男が捜索しているという情報もあり、息を潜める毎日を余儀なくされている。

【林田七恵、稲垣淳】
http://mainichi.jp/select/news/20150214k0000m040126000c2.html

これは「現代的奴隷制(modern slavery)」として問題になっていることの一形態といえるだろう*1。まあ、「従軍慰安婦の時代とまったく同じやり口が現代でも続いているというお話」*2というか「「広義の強制連行」というやつの実例」ということになる*3。ところで、こうしたことはフィリピンだけでなく、例えばタイでもJTCが問題になっているのでは? また、ここで言及されている「パブ」の労働はたんに酒を注ぐことではないということは、「ソープランド」が銭湯ではないということと同様に*4、大人の常識に属するわけだ。
さて、JFCという存在は、「パブ」と同様に所謂skin trade*5に属するであろう「介護」業界の労働力問題と結び付けられていたのだった。某blogエントリーに全文引用されていた2011年2月の『毎日新聞』の記事;

 日比EPA:枠組みに限界 介護ヘルパーで新日系人受け入れ 国籍取得容易
毎日新聞 2011年2月17日

 ◇「未来、開ける」

 【マニラ矢野純一】日比経済連携協定(EPA)に基づく、フィリピン人看護師・介護士の求人が、受け入れ枠の半分にも満たない状況になっている。一方、日本での国籍取得が比較的容易な、日本人の父とフィリピン人の母の間に生まれ、フィリピンで暮らす新日系人に、日本語を教え、ヘルパーとして日本の介護施設へ送り込む動きが本格化してきた。幼少時に別れた父親との再会と、日本で働くことを夢見る一人の女性の思いを聞いた。

 マニラ市近郊のビルの一室で、21人の新日系人が日本語を学んでいた。日常会話が十分にできるレベルの日本語能力試験(N2)を目指し1年間、ここで学んだ後、日本の介護施設でヘルパーとして働くためだ。

 「これで私の未来が開ける」。この教室で学ぶアリエガ・ツダさん(18)が語った。

 新日系人をヘルパーとして日本に送り込む動きはこれまでにもあったが、まとまった求人先を事前に確保し、フィリピン国内で1年間、日本語を教えて送り出す取り組みは初めてだ。日本の福祉関連会社が1月から本格的に事業を始め、参加者を募集。100人以上の応募があり、アリエガさんは21人の中に選ばれた。

 日本で飲食店従業員として働いていたフィリピン人の母と、建築関係の仕事をしていた日本人の間に生まれた。母が出産で帰国したため、アリエガさんはフィリピンで生まれ、一度も日本に行ったことはない。

 両親は結婚はしていなかったが、3歳のころまで、父は頻繁にフィリピンに会いに来てくれていた。フィリピンの出生証明書には父の名が書かれ、父から届いた手紙が何通もある。しかしその後、連絡は途絶え、母は昨年、白血病で死亡した。父に抱かれて一緒に撮った写真が唯一、父の記憶をとどめてきた。

 父からの仕送りが途絶えたため、三度の食事をとれないときもあった。学校では、「日本人の子」といじめられた。高校を卒業後は、病気がちの母と7歳下の義理の妹の学費を稼ぐため、月2400ペソ(約4500円)の給料で、朝の4時から八百屋で働いた。手はガサガサで、いくつもの小さなひび割れが痛々しい。

 日本行きのチャンスを人づてに聞き、面接に応募した。日本人の父親に認知されていれば、日本の国籍取得はスムーズに進むが、アリエガさんは日本人の父親には認知されていない。送り主となるこの福祉関連会社の弁護士が、出生証明書や父から送られてきた手紙の住所を基に国籍取得を進めている。「父に会えたら、私をまだ愛しているのかを知りたい」と語り、涙をぬぐった。

 ◇国家試験、高いハードル 看護師・介護士の求人、目標割れ

 新日系人を送り出す新たな動きの背景には、EPAの枠組みに限界があるためだ。EPAに基づく日本側からの求人は今年、介護士85人、看護師102人の計187人にとどまり、日比両政府が目標とした最大受け入れ人数の500人を大きく下回っている。

 これについて、受け入れあっせん機関の国際厚生事業団は「日本の施設では、不景気で日本人の求職者が増え、外国人を受け入れる必要性がなくなったため求人が減った」と説明した。しかし、日本の介護施設関係者は「EPAは使い勝手が悪い」と指摘し、日本側のメリットの少なさを強調した。

 EPAで受け入れた介護士は、国家試験に合格しないと4年で帰国しなければならない。日本人と同じ試験を受けるため、漢字など日本語のハードルが高い。フィリピン人介護士が受験するのは13年からだが、EPAの枠組みで来日し、すでに受験資格を満たしているインドネシア・フィリピン人看護師の国家試験の合格者はわずか3人だった。恒常的に人手不足の介護施設にとって、育て上げた介護士が、数年で帰国するのは大きな痛手だ。

 一方、新日系人の場合は、両親に婚姻関係が無くても、子供が日本の父親に認知されれば日本の国籍を取得できる。フィリピン人の母親も、日本国籍を取得した子供とともに、養育責任者として、日本で在留資格を取得できる。EPAとは異なり、ハードルが高い国家試験の介護福祉士ではなく、ヘルパーの資格で長く働くことができる。

 フィリピンで暮らす新日系人の実数は不明だが、10万人以上はいるといわれる。新日系人の送り出し事業を手がける福祉関連会社の代表は利点について、「国籍取得を支援して日本で暮らせる基盤をつくることができるうえ、日本の介護施設の人手不足解消にも寄与できる」と話した。

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 ■ことば
 ◇新日系人

 日本人とフィリピン人の間で戦後、生まれた子供。父親が日本人のケースが大半で、養育や認知を拒否され、多くの子供が母親の母国で貧しい暮らしを強いられている。08年12月の国籍法改正で、日本人の父親に認知されれば、日本国籍の取得が可能となった。だが、フィリピンの出生証明書に日本人の父の名が記載されていないケースが多く、記載があっても認知されていないケースが大半だ。
Cited in http://hibikan.at.webry.info/201102/article_344.html

この引用者のコメントも曝しておく価値があるだろう;

日本の男がフィリピン女に生ませたと主張しているが、日本男によって認知されていないハーフの子を、「新日系人」と呼ぶのだそうだ。この新日系人に日本語を教え、ヘルパーとして日本に送り込むのだそうだ。

毎日新聞らしく、可愛そうな話に仕立て上げられている。父親によって認知されている子は日本に渡って楽な生活をしているのだから、認知されていない子にもビザを配れと言わんばかりの記事。

この「ことば」解説では、2008年の「国籍法改正」が言及されている。これはかつて城内実が反対をレイシズム的に煽っていたものだ*6。しかし、上で言われているJFCの受難というのは、当時城内(ら)が煽ったのとは全く違った事情或いはメカニズムによって生起しているということは申し上げておかなければならない。