毒蝮ケーシーを語る

承前*1

Via https://nessko.hatenadiary.jp/entry/2019/04/18/132214

サンケイスポーツ』の記事;


毒蝮三太夫、ケーシーさんは“芸人殺し”「談志が『すげー』って」
4/11(木) 7:00配信 サンケイスポーツ


 ケーシー高峰さん(享年85)の訃報に、演芸仲間やジャンルを超えた俳優たちも10日、悲しみに暮れた。ともに昭和の笑いを牽引し、公私ともに親交を深めてきたタレント、毒蝮三太夫(83)は晩年まで自身の芸に誇りを持っていた故人の素顔や温かい人柄を回想し、「半年前から人前に出なくなった…。痩せてエロ漫談をしたら、見ているお客さんに悪いと思ったんだろうね」としみじみ語った。

 2カ月前から「悪い」という話があった。マネジャーから「すごく痩せた」って聞いていて、いつ(訃報の)知らせがきてもおかしくない状況だったんだよ。

 最後に一緒になった仕事は1年ほど前の演芸会だった。そのときは元気だったけど、福島に住んでいたから「俺はもう、東京には行かない」って言ってたな。

 半年くらい前から人前に出なくなったんじゃないかな。痩せてエロ漫談をしたら、見ているお客さんに悪い、と思ったんだろうね。まじめで細やかな人だったからさ。

 俺が主催している「マムちゃん寄席」にも出てもらったな。2013年5月の寄席に出演予定だった牧伸二さんが、直前の4月29日に橋から転落して亡くなったとき*2、困って出演のお願いをしたら「(依頼の)電話がくるのを待ってた」って二つ返事で引き受けてくれてさ。情に厚かったよ。

 代役を立てるときは同等か、それ以上の人を入れないといけない。しかも牧さんは落語家じゃないでしょ。そこを牧さんと同じ昭和9(1934)年生まれのケーシーさんが引き受けてくれて、ありがたかった。

 約40年前には、2人でNHKから“出禁”になったことも。理由? 俺は名前がふざけてる、ケーシーさんはエロ漫談だからって。2人で「出るもんか」ってさ。最近は「出てくれ」だろ、NHKも変わったよね。

 そうそう、立川談志*3もケーシーさんと仲がよかった、尊敬してたよ。「俺の前に(ケーシーさんを)出すな。俺がウケなくなるから」ってさ。笑いの質が違うんだよ。ドーッと笑うだろ、それで客が疲れちゃって、談志が出て行っても笑わない。“バカウケ”なケーシーさんは“芸人殺し”だったな。俳優としても、シリアスな演技がうまかったし、談志が「すげー」って言っていたのも分かるよ。

 俺かケーシーさんが歌丸師匠の次の「笑点」司会って話題になったこともあったな。受ける気もなかったよ。俺らがやったらグチャグチャになっちゃうだろ。(春風亭)昇太でよかったんだ。

 向こうには談志、永(六輔)さん、(三遊亭)圓楽さんもいるから歓迎されるだろ。まだ、俺に「来い」って言わないでくれよ。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190411-00000028-sanspo-ent

最近つくづく思うのは、とにかく毒蝮三太夫の語り口は面白いということ。
また、nesskoさんの、

「日本人でよかった」「日本で生まれてよかった」というのは、私にとっては、子供の頃テレビでソウルトレイン見るより大正テレビ寄席が見られてほんとうによかった幸運だったって、そういうことですよ。グラッチェ、ケーシー、安らかに。
というのは至言。
See also


濵田理央「ケーシー高峰さん死去 『医事漫談』で人気 サンド・伊達さん「根っからの東北人だった」と悼む」https://www.huffingtonpost.jp/entry/takamine_jp_5cad5161e4b0d6eb63c13eb9
伊達みきおケーシー高峰師匠☆」https://ameblo.jp/mikio-date/entry-12453246233.html


ところで、元司法試験浪人という「ミスター梅介」という漫談藝人がいて、要するにケーシー高峰の法律版? と思ったのだけど、今何をしているのか知らない。

「チャンプルー」としての「神道」(鎌田東二)

鎌田東二*1神道とは何か」『草思』(草思社)46、pp.6-13、2003


ラフカディオ・ハーン小泉八雲*2の、出雲大社について叙述した「杵築――日本最古の神社」というエッセイが引用・言及されて(pp.9-11)、


おそらく、この時代の外国人の中で、ラフカディオ・ハーンほど深くデリケートに、また肯定的に「神道」を感じ、理解し、評価した人は稀である。ハーンにそれが可能となったのは、彼がアイルランド人の父とギリシャ人の母を持ち、カリブ海のマルティニク島でジャーナリストとして活動したことなどの出自と経験があったからだと思う。ハーンはキリスト教以前の異教的な風土と世界にどっぷりと浸るという経験を持っていたのだ。このハーンの見解は、今なお、神道について、多くの戦後日本人がもっている先入見を払拭するだけの新鮮な着眼点と息吹に満ちている。
ラフカディオ・ハーンは、この出雲大社参拝時に舟で、遠く大山の山を望み見ながら宍道湖を渡り、この光の中に何か神々しいものが宿っていると感じとる。それを彼は「これが神道の感覚というものだろうか」と述懐している。それはハーンが神道の根柢にアニミズム的な感覚阿あることを深く察知した瞬間である。
思うのは、ケルトの地で育ち、日本の地で『怪談』を書いたハーンが今生きていたら、必ずや、宮崎駿の『となりのトトロ*3や『千と千尋の神隠し*4を見て大喜びするか、共作者に名を連ねていることだろうということである。実際、トトロは「森の主」であり、妖精や妖怪であり、アニミズム的「カミ」であった。『千と千尋の神隠し』には、そのトトロが八百万の神々の中の一神として神々の湯屋に赴く場面が描かれていた。宮崎駿のアニメには、ハーン的な意味での「神道の感覚」があますところなく描かれていると思う。それは宮沢賢治の『注文の多い料理店』にも通じる、日本のアニミズム的世界の描出である。(pp.11-12)
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千と千尋の神隠し (通常版) [DVD]

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注文の多い料理店 (新潮文庫)

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ともあれ、日本人の神観念は、「チ・ヌシ・オニ・ミコト」などの語によって多様に表現されていて、「ホトケ(仏)」もそうした「神」の一神として理解され、受容されたのである。わたしはその日本人の神観念生成の歴史的過程を巨視的に、石器時代縄文時代以来の長い間の「神神習合」という神々の習合過程があり、その一ブランチとして、六世紀以降に「神仏習合」が根づき、展開していったと考えている。ということは、「習合」という文化の形こそが神道の精髄であるということだ。したがって、それは、本居宣長平田篤胤が考えたように、儒教や仏教伝来以前に純粋な古神道があるなどとは言えないと考える。それは認識論的な倒錯である。むしろ、ラディカルなほどに徹底的に習合的・クレオール的・ハイブリッド的・チャンプルー的な伝承体系が神道であり、日本文化であるとわたしは考えている。
かくして、日本という場所は、宮崎駿が描くところの世界宗教史における「神々の湯屋」のような地場であり、神道はその湯屋温泉の「地主」的存在なのである。(p.13)

*1:See also https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20071031/1193848667 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20080821/1219288458 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20090428/1240932635 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20130313/1363141131 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20130320/1363717162 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20140626/1403801240 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20180117/1516165144 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20180124/1516771434 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20180617/1529170865 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/2019/01/30/175741 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/2019/02/02/105759

*2:Mentioned in https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20060502/1146551271

*3:Mentioned in http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20081201/1228127995 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20090215/1234633284 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20140712/1405165610 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20141023/1414075027 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20141208/1418014587 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20160629/1467167097 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20170602/1496329664 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20180923/1537668336 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/2019/03/20/033029

*4:Mentioned in http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20130316/1363405417 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20141201/1417448546 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20161101/1478018802 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20170217/1487307939 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/2019/03/05/210810

予言していた?

Related to https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/2019/04/16/091818

ノストラダムス(本名:Michel de Notre-Dame)*1は「ノートルダム大聖堂」の火事を予言していたのだろうか。五島さんは?

*1:山本弘『トンデモ ノストラダムス本の世界』、p.24)

トンデモ ノストラダムス本の世界

トンデモ ノストラダムス本の世界

「熱帯夜」の人

(2年前の)『産経新聞』の記事;


2017.8.4 20:29
気象キャスター倉嶋厚さん死去 93歳、気象解説者の草分け 「熱帯夜」の言葉つくる


 気象解説者の草分けで、気象に関する知識をわかりやすい語り口でお茶の間に伝えた気象キャスター倉嶋厚(くらしま・あつし)さんが3日、腎盂がんのため死去した。93歳。葬儀・告別式は近親者で行う。喪主はおい、小堀文明(こぼり・ふみあき)さん。

 大正13年、長野市生まれ。昭和24年に中央気象台付属気象技術官養成所(現気象大学校)を卒業後、気象庁で主任予報官や鹿児島気象台長などを歴任。退官後はNHKの解説委員となり、ニュース番組の気象キャスターとして活躍した。「熱帯夜」という言葉をつくったことでも知られる。

 エッセイストとしても活躍し、「季節の366日 話題事典」「暮らしの気象学」など多くの著作を残した。平成14年には、妻を亡くした後、鬱病になり、克服した体験記「やまない雨はない」を出版した。
https://www.sankei.com/entertainments/news/170804/ent1708040023-n1.html

ところで、『熱帯夜』というフジTVがつくった桃井かおり松田優作主演のドラマがあったのだが、この脚本は向田邦子*1だとずっと思い込んでいた。しかし、このドラマは1983年で、向田さんは1981年に台湾にて飛行機事故のために亡くなっているのだから、『熱帯夜』の脚本を書けるわけはないのだった。正しくは、早坂暁*2
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そういえば国籍論争(笑)があった

承前*1

安藤健二モンキー・パンチさん死去。「ルパン三世」の生みの親、ペンネームの由来は本人も知らなかった」https://www.huffingtonpost.jp/entry/monkeypunch_jp_5cb6726de4b098b9a2dbec10


モンキー・パンチ」という名前について。


モンキー・パンチという変わったペンネームの由来については、双葉社で「週刊漫画アクション」の初代編集長だった清水文人さん(故人)の命名だという。本人は産経新聞のインタビューで以下のように振り返っていた*2。<<あるとき、僕の漫画を見た清水さんが「加藤一彦という絵じゃねえよな。ペンネームつけてやる、モンキー・パンチだ」って。理由は聞けずじまいでしたが、作者が外国人か日本人か、わからなくしたかったんじゃないでしょうか。>>
そういえば、『ルパン三世』のアニメが放映され始めた頃、小学校のクラスで「モンキー・パンチ」国籍論争があった(笑)。頑なに外国人だと主張する奴と頑なに日本人だと主張する奴がいた。
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See also


ハフポスト日本版編集部「モンキー・パンチさん死去に悲しみの声。叶姉妹浅野忠信さんも追悼 「心より愛を込めて」」https://www.huffingtonpost.jp/entry/rip-monkey-punch_jp_5cb6a452e4b082aab08e0a32
叶美香モンキー・パンチ先生🌹✨謹んで哀悼の意を表すとともに感謝を申し上げます。 💎✨✨」https://lineblog.me/kanosisters/archives/13222162.html

「第一世代」

竹森俊平、中西宏明、新浪剛史柳川範之就職氷河期世代の人生再設計に向けて」https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2019/0410/shiryo_02-1.pdf
AbemaTIMES「就職氷河期世代が「人生再設計第一世代」に名称変更、SNSでは「言葉遊びか!?」の声も」https://abematimes.com/posts/6068042


「ロスジェネ」とも言われた「就職氷河期世代」*1が「人生再設計第一世代」に改称されるのだと。連想したのは、「第一世代」があるなら、今後、第二世代、第三世代もあるのか、ということ。
悲観的な意見としては、例えば、


フロイド*2「いいかい学生さん、革命をな、革命をいつでも起こせるくらいになりなよ」https://www.byosoku100.com/entry/2019/04/16/134843


曰く、


就職氷河期という固有名詞に第一世代というインデックスをつけるあたり、底知れぬ悪意を感じる。僕は今までクソゆとり世代扱いを度々受けてきたが、氷河期世代についてはもうちょい悲惨ということで、見てみぬふりをしてきたというか、知り合いにその世代の人がいないので気にしないできた。それを第一世代とかオートインクリメントしそうな番号つけられたら、おいやめろバカ、この日本は早くも終了ですね、と言わざるを得ない。

氷河期世代はおそらく今までの感じからして無抵抗でと殺されるのだろうが、僕らの世代はどうか。なんだかんだで不況なれしつつも、就職率が高いこともあって糊口をしのいでいる人が多くいるような気もする。ただそれは微々たる差であって、引きこもりも非正規安月給も山ほどいて、やっぱり沈黙気味なのは氷河期もゆとり世代も変わらないのかもしれない。

つまり氷河期が鞭打たれれば、時間差で僕らも鞭打たれる。次の世代はその流れをみるから抵抗するかもしれない。それはおそらく氷河期世代がどの程度傷を負って、どれほど悲惨な目に会うかによって変わるのだろう。日本とて昔は一揆などが頻発したり反乱があったりしたのだから、その日食う飯に困り、未来が見えなくなり、さらに前にいた人々が血反吐を吐いてのたうち回る姿を見れば、いよいよ街頭に繰り出し連帯を組むかもしれない。

逼迫していた?

『ハフィントン・ポスト』(『朝日新聞』)の記事;


2019年04月17日 10時45分 JST
文字盤で会話するALS患者に「時間稼ぎか」と発言 埼玉県吉川市の職員
障がい福祉課は「本人ではなく代理人弁護士に対する発言」と説明しています。


文字盤使うALS患者側に「時間稼ぎか」 市職員が発言

 筋肉が徐々に縮み力がなくなる筋萎縮性側索硬化症(ALS)*1を患う43歳の男性が16日、重度訪問介護の支給を決める調査に訪れた埼玉県吉川市障がい福祉課の職員から、文字盤を用いて話すことに「時間稼ぎですか」などと言われ、精神的苦痛を受けたと、県庁で開いた会見で明らかにした。男性は市に対して抗議し、代理人弁護士は「人格毀損(きそん)だ」と批判。市は「男性に対しては言っていないが、誤解を与えたのは申し訳ない」としている。


 ALSを患う男性は吉川市の高田泰洋さん。代理人弁護士によると、1カ月50時間の重度訪問介護の支給を受けるが、介護時間数を増やそうと昨年5月から市に要望。今月12日に初めて、同課職員3人が自宅へ調査に来たという。

 レコーダーの記録などによると、職員が「寝返りは自分で出来ますか」と尋ねた際、声が出せず手足も動かない高田さんは、目の動きで会話する文字盤で回答しようとした。すると職員の1人が「時間稼ぎですか」と発言した。その場にいた代理人弁護士が抗議したが、謝罪は無かったという。高田さんは会見で文字盤を使って「ただただ悔しかった」と述べた。

 同課の加藤利明課長は発言を認めた上で、「本人ではなく代理人弁護士に対する発言。文字盤で話すことではなく、調査に至るまでの経緯など全体に対して述べたが、言葉自体が不適切だった」と説明。抗議声明に対し「今後の対応を協議し、男性に回答を早急に差し上げる」としている。(小笠原一樹

朝日新聞デジタル 2019年04月17日 08時24分)
https://www.huffingtonpost.jp/entry/als-yoshikawa_jp_5cb67d9ce4b0ffefe3b8b6f5

吉川市側の弁明だけど、文脈を逸脱しているような気がした。少なくとも、このような発話に割り込む仕方で発するべきものではないだろう。口頭の会話よりもスローである「文字盤」を使ったコミュニケーションを揶揄してプレッシャーを与えていると取られても仕方がないと思った。また、そうしなくちゃならないほど、ほんとうに時間が逼迫していたのだろうか。
See also


岩永明子*2「ALSの患者に「時間稼ぎですか?」 文字盤コミュニケーション中、市役所職員の発言に抗議」https://www.buzzfeed.com/jp/naokoiwanaga/als-bougen