「皆様、盛大な拍手を!」問題(メモ)

松尾貴史*1「「皆様、盛大な拍手を!」 皆様、盛大な拍手を! 客が自発的にしなければ意味なし」『毎日新聞』2015年11月15日から。
曰く、


結婚式などの宴の司会を引き受けることも少なくないが、大勢の来客を2、3時間「盛り上がっている」という気分にさせたまま持続するのはなかなかやりがいのある作業だ。漫画家の赤塚不二夫さん紫綬褒章を受賞なさったときのお祝い披露宴の司会を担当したとき、パーティーの中盤に司会席の私のそばに立川談志師匠*2が近寄ってこられた。そして耳元で、「客に拍手を催促するな。自分の司会がいかに拙いかを白状するようなもんだ」と囁かれた。それまで当たり前のように使っていた「皆様、盛大な拍手をどうぞ!」は、司会者らしい言葉の最たるものだと思っていたが、実は恥ずかしいことだったのか!
私は目から鱗が落ちたというよりも衝撃を感じた。そういう観点でものを見ていなかった。しかし考えてみれば、拍手喝采は客が自発的にしなければ意味がない。そうだ、主役や登壇する人など、紹介する対象にも失礼なことではないか。
それからというもの、内容と間合いと発声法で、自然と来客から拍手が起きるように工夫することにした。以来17年間、私は司会を務める時に「盛大な拍手を!」という言葉は封印、禁句にしている。