岩永直子*1、朽木誠一郎*2「子宮頸がんワクチン、国内でも予防効果を示す研究報告が続々」https://www.buzzfeed.com/jp/naokoiwanaga/hpv-vaccine-seimei-3rd
曰く、
その背景としての日本国内におけるエヴィデンスの蓄積;
日本産科婦人科学会は26日の定例記者会見で、国に対して[HPVワクチン接種の]積極的勧奨を再開するように強く求める声明を発表した。その一部は以下の通りだ。「将来、先進国の中で我が国に於いてのみ多くの女性が子宮頸がんで子宮を失ったり、命を落としたりするという不利益が、これ以上拡大しないよう、国が一刻も早くHPVワクチン接種の積極的勧奨を再開することを強く求めます」
HPVワクチン問題については、http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20161211/1481482837 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20161230/1483062760 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20170122/1485049033 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20170123/1485189611も。
この間、HPVワクチンの有効性を明らかにする研究が、国内からも続々と報告され始めている。その一つが、2015年度から厚生労働省科学研究として始まった「HPVワクチンの有効性と安全性の評価のための大規模疫学研究」(研究代表者=榎本隆之・新潟大産婦人科教授)だ。
新潟県の女性2196人が登録している追跡調査(NIGATA STUDY)の中間解析で、ハイリスクとされるHPV16・18型に20〜22歳で感染している率は、ワクチン接種者で0.2%、未接種者で1.8%と、接種者の方が有意に(統計学的に意味のあるレベルで)低かった。
接種者にも感染者がいることについて、榎本さんは「初性交前に打った人を見ると、ほぼ感染ゼロということが伺える」としている。
大阪府で行われている追跡調査(OCEAN STUDY)の中間解析でも、ワクチンを接種していない人では20歳時点でのハイリスク型HPV感染率が4.9%だったのに対し、接種者では0%と有意に低い結果が出ている。
宮城県で2014年度に子宮頸がん検診を受けた20〜24歳の女性3272人のデータを解析したところ、細胞診で何らかの異常が指摘された率は、HPVワクチンを接種していない人で5.03%だったのに対し、接種した人で2.41%と有意に低かった*3。
秋田県でも、2014年1月〜16年10月に検診を受けた2425人を解析した結果、やはり細胞診で異常が確認された率は未接種者で2.04%だったのに対し、接種者で0.242%。ワクチン接種が、異常が見つかる率を88.1%下げた*4。
さらに、国内の21施設で前がん病変か子宮頸がんと診断された女性のハイリスクHPV感染率を調べる大規模研究(MINT Study)も実施されている。
このMINT Studyの中間解析でも、ワクチンを接種する機会がほぼなかった1986〜93年生まれの感染率が54.6%だったのに比べ、定期接種で受ける機会があった1994〜95年生まれの感染率は23.8%と有意に低かった*5。
*1:See also http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20170519/1495162858 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20170527/1495852041
*2:See also http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20170531/1496208707
*3:Ozawa N, Ito K, Tase T, Metoki H & Yaegashi N. “Beneficial Effects of Human Papillomavirus Vaccine for Prevention of Cervical Abnormalities in Miyagi, Japan.” https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27746423
*4:Tanaka H, Shirasawa H, Shimizu D, Sato N, Ooyama N, Takahashi O & Terada Y. “Preventive effect of human papillomavirus vaccination on the development of uterine cervical lesions in young Japanese women.” https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28707725
*5:Koji Matsumoto,Nobuo Yaegashi,Takashi Iwata,Kasumi Yamamoto,Minoru Nagashima,Toshiaki Saito,Kimio Ushijima, Fumiaki Takahashi,Kiichiro Noda & Hiroyuki Yoshikawa “Early impact of the Japanese immunization program implemented before the HPV vaccination crisis” http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/ijc.30855/