「熱帯夜」の人

(2年前の)『産経新聞』の記事;


2017.8.4 20:29
気象キャスター倉嶋厚さん死去 93歳、気象解説者の草分け 「熱帯夜」の言葉つくる


 気象解説者の草分けで、気象に関する知識をわかりやすい語り口でお茶の間に伝えた気象キャスター倉嶋厚(くらしま・あつし)さんが3日、腎盂がんのため死去した。93歳。葬儀・告別式は近親者で行う。喪主はおい、小堀文明(こぼり・ふみあき)さん。

 大正13年、長野市生まれ。昭和24年に中央気象台付属気象技術官養成所(現気象大学校)を卒業後、気象庁で主任予報官や鹿児島気象台長などを歴任。退官後はNHKの解説委員となり、ニュース番組の気象キャスターとして活躍した。「熱帯夜」という言葉をつくったことでも知られる。

 エッセイストとしても活躍し、「季節の366日 話題事典」「暮らしの気象学」など多くの著作を残した。平成14年には、妻を亡くした後、鬱病になり、克服した体験記「やまない雨はない」を出版した。
https://www.sankei.com/entertainments/news/170804/ent1708040023-n1.html

ところで、『熱帯夜』というフジTVがつくった桃井かおり松田優作主演のドラマがあったのだが、この脚本は向田邦子*1だとずっと思い込んでいた。しかし、このドラマは1983年で、向田さんは1981年に台湾にて飛行機事故のために亡くなっているのだから、『熱帯夜』の脚本を書けるわけはないのだった。正しくは、早坂暁*2
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そういえば国籍論争(笑)があった

承前*1

安藤健二モンキー・パンチさん死去。「ルパン三世」の生みの親、ペンネームの由来は本人も知らなかった」https://www.huffingtonpost.jp/entry/monkeypunch_jp_5cb6726de4b098b9a2dbec10


モンキー・パンチ」という名前について。


モンキー・パンチという変わったペンネームの由来については、双葉社で「週刊漫画アクション」の初代編集長だった清水文人さん(故人)の命名だという。本人は産経新聞のインタビューで以下のように振り返っていた*2。<<あるとき、僕の漫画を見た清水さんが「加藤一彦という絵じゃねえよな。ペンネームつけてやる、モンキー・パンチだ」って。理由は聞けずじまいでしたが、作者が外国人か日本人か、わからなくしたかったんじゃないでしょうか。>>
そういえば、『ルパン三世』のアニメが放映され始めた頃、小学校のクラスで「モンキー・パンチ」国籍論争があった(笑)。頑なに外国人だと主張する奴と頑なに日本人だと主張する奴がいた。
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See also


ハフポスト日本版編集部「モンキー・パンチさん死去に悲しみの声。叶姉妹浅野忠信さんも追悼 「心より愛を込めて」」https://www.huffingtonpost.jp/entry/rip-monkey-punch_jp_5cb6a452e4b082aab08e0a32
叶美香モンキー・パンチ先生🌹✨謹んで哀悼の意を表すとともに感謝を申し上げます。 💎✨✨」https://lineblog.me/kanosisters/archives/13222162.html

「第一世代」

竹森俊平、中西宏明、新浪剛史柳川範之就職氷河期世代の人生再設計に向けて」https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2019/0410/shiryo_02-1.pdf
AbemaTIMES「就職氷河期世代が「人生再設計第一世代」に名称変更、SNSでは「言葉遊びか!?」の声も」https://abematimes.com/posts/6068042


「ロスジェネ」とも言われた「就職氷河期世代」*1が「人生再設計第一世代」に改称されるのだと。連想したのは、「第一世代」があるなら、今後、第二世代、第三世代もあるのか、ということ。
悲観的な意見としては、例えば、


フロイド*2「いいかい学生さん、革命をな、革命をいつでも起こせるくらいになりなよ」https://www.byosoku100.com/entry/2019/04/16/134843


曰く、


就職氷河期という固有名詞に第一世代というインデックスをつけるあたり、底知れぬ悪意を感じる。僕は今までクソゆとり世代扱いを度々受けてきたが、氷河期世代についてはもうちょい悲惨ということで、見てみぬふりをしてきたというか、知り合いにその世代の人がいないので気にしないできた。それを第一世代とかオートインクリメントしそうな番号つけられたら、おいやめろバカ、この日本は早くも終了ですね、と言わざるを得ない。

氷河期世代はおそらく今までの感じからして無抵抗でと殺されるのだろうが、僕らの世代はどうか。なんだかんだで不況なれしつつも、就職率が高いこともあって糊口をしのいでいる人が多くいるような気もする。ただそれは微々たる差であって、引きこもりも非正規安月給も山ほどいて、やっぱり沈黙気味なのは氷河期もゆとり世代も変わらないのかもしれない。

つまり氷河期が鞭打たれれば、時間差で僕らも鞭打たれる。次の世代はその流れをみるから抵抗するかもしれない。それはおそらく氷河期世代がどの程度傷を負って、どれほど悲惨な目に会うかによって変わるのだろう。日本とて昔は一揆などが頻発したり反乱があったりしたのだから、その日食う飯に困り、未来が見えなくなり、さらに前にいた人々が血反吐を吐いてのたうち回る姿を見れば、いよいよ街頭に繰り出し連帯を組むかもしれない。

逼迫していた?

『ハフィントン・ポスト』(『朝日新聞』)の記事;


2019年04月17日 10時45分 JST
文字盤で会話するALS患者に「時間稼ぎか」と発言 埼玉県吉川市の職員
障がい福祉課は「本人ではなく代理人弁護士に対する発言」と説明しています。


文字盤使うALS患者側に「時間稼ぎか」 市職員が発言

 筋肉が徐々に縮み力がなくなる筋萎縮性側索硬化症(ALS)*1を患う43歳の男性が16日、重度訪問介護の支給を決める調査に訪れた埼玉県吉川市障がい福祉課の職員から、文字盤を用いて話すことに「時間稼ぎですか」などと言われ、精神的苦痛を受けたと、県庁で開いた会見で明らかにした。男性は市に対して抗議し、代理人弁護士は「人格毀損(きそん)だ」と批判。市は「男性に対しては言っていないが、誤解を与えたのは申し訳ない」としている。


 ALSを患う男性は吉川市の高田泰洋さん。代理人弁護士によると、1カ月50時間の重度訪問介護の支給を受けるが、介護時間数を増やそうと昨年5月から市に要望。今月12日に初めて、同課職員3人が自宅へ調査に来たという。

 レコーダーの記録などによると、職員が「寝返りは自分で出来ますか」と尋ねた際、声が出せず手足も動かない高田さんは、目の動きで会話する文字盤で回答しようとした。すると職員の1人が「時間稼ぎですか」と発言した。その場にいた代理人弁護士が抗議したが、謝罪は無かったという。高田さんは会見で文字盤を使って「ただただ悔しかった」と述べた。

 同課の加藤利明課長は発言を認めた上で、「本人ではなく代理人弁護士に対する発言。文字盤で話すことではなく、調査に至るまでの経緯など全体に対して述べたが、言葉自体が不適切だった」と説明。抗議声明に対し「今後の対応を協議し、男性に回答を早急に差し上げる」としている。(小笠原一樹

朝日新聞デジタル 2019年04月17日 08時24分)
https://www.huffingtonpost.jp/entry/als-yoshikawa_jp_5cb67d9ce4b0ffefe3b8b6f5

吉川市側の弁明だけど、文脈を逸脱しているような気がした。少なくとも、このような発話に割り込む仕方で発するべきものではないだろう。口頭の会話よりもスローである「文字盤」を使ったコミュニケーションを揶揄してプレッシャーを与えていると取られても仕方がないと思った。また、そうしなくちゃならないほど、ほんとうに時間が逼迫していたのだろうか。
See also


岩永明子*2「ALSの患者に「時間稼ぎですか?」 文字盤コミュニケーション中、市役所職員の発言に抗議」https://www.buzzfeed.com/jp/naokoiwanaga/als-bougen

低学年の記憶

共同通信の記事;


消毒薬「赤チン」、来年で姿消す 最後のメーカーが生産中止
2019年4月16日 20時44分 共同通信

 傷口に塗ると赤色になることから「赤チン」の愛称で親しまれた消毒薬「マーキュロクロム液」*1の国内生産が2020年末で終わることが16日、分かった。日本で唯一のメーカーとみられる三栄製薬(東京)が生産をやめると明らかにした。昭和世代になじみ深い製品がまた姿を消す。

 赤チンはかつて家庭や学校の常備薬の定番だった。しかし、水銀が原因の水俣病が公害に認定され、生産過程で水銀を含んだ廃液が発生することから、1973年に原料の国内生産が終了した。

 三栄製薬などは海外から原料を輸入して生産を続けたが、71年に無色の消毒薬「マキロン」が登場し、売れ行きは落ち込む一方だった。
http://news.livedoor.com/article/detail/16326641/

今まで生き残っていたという方が吃驚。
昔、たしかに傷口に「赤チン」を塗られた赤い脚の子どもは沢山いた。でも、「赤チン」と結びついているのは、小学校低学年までの記憶。特に、学校の保健室の。高学年以後の記憶とは全然結びつかない。多分、それは既に1971年には「マキロン*2が登場しているということによるのだろう。ところで、「赤チン」だけを塗ったということはなかったように思う。先ず、「オキシフル」*3という過酸化水素水を塗って、出てきた泡を脱脂綿で拭き取って、それから仕上げとして「赤チン」を塗るという感じだったと思う。これって、無駄手間だったのか。

まんにょう話

「令和」*1の波及効果で、『万葉集』が(プチ)ブームになっているのだという。
万葉集』を巡ってのShin Horiという弁護士の方の呟き;


→なお万葉集が世間一般で日本の和歌(短歌)の模範であるかのような扱いになったのは基本的には明治以降で、江戸時代までは、万葉集を尊重する人もいたものの、基本的に和歌の模範としては『古今集』が圧倒的な権威を持っていたと思います。


6:39 PM - 15 Apr 2019
https://twitter.com/ShinHori1/status/1117965784876109824


→明治になって、古今集は、古い因習や軟弱な公家文化の象徴ののように扱われて、万葉集が、素朴で力強く勇ましく、庶民と天皇が直結して一体となっているかのようなイメージに結びつけられて、広く歌の手本となっていったと考えられます。


6:43 PM - 15 Apr 2019
https://twitter.com/ShinHori1/status/1117966658738352129

たしかに、江戸時代の古学(国学)でも、契沖法師や賀茂真淵は『万葉集』を推したけど、本居宣長は『古今』を推した。明治以降の情況は手短にいえば上で呟かれている通りで、所謂日本文化の総体的なますらお化(マッチョ化)ということなのだろうけど*2アララギ派か明星派かということもある。明星派は『古今』に対して肯定的だった。さらに扱いが酷かったのが『新古今』で、これは衰退せる貴族文化の頽廃の極み、みたいな扱いをされて、復権されたのは塚本邦雄*3などの前衛短歌の登場以降。戦前に知的な自己形成をした知識人で、典型的な万葉贔屓/古今嫌いというと、白川静先生(Cf.『回思九十年』)。なお、この近代的なマッチョ主義に基づく万葉贔屓は右翼だけではなく左翼の問題でもあった。もしかして、左翼の方が酷かった? 農民から天皇までの全人民参加というポピュリズムは左右共通。昔寺尾五郎*4『悪人親鸞』という本を読んだのだけど、肝心の親鸞に対するコメントよりも、突然藤原定家を呼び出して『新古今』を日本文学史上で最も愚劣と罵った箇所の方が記憶に残っているのだった。
古今和歌集 (岩波文庫)

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新訂 新古今和歌集 (岩波文庫)

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回思九十年 (平凡社ライブラリー)

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悪人親鸞 (徳間文庫)

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ところで、『万葉集』は平安時代に入ると直ぐに意味不明の文書になってしまったという。『万葉集』の解読は平安時代の400年かけてゆっくりと進められ、全体の意味が明らかになったのは、(新古今の時代に属する)平安末期から鎌倉初期辺りだったわけだ(Cf. 小西甚一『道――中世の理念』*5)。鎌倉右大臣源実朝が新古今の時代にいながら所謂万葉調の歌を詠んだのも、400年かけての解読作業の完結と無関係ではないだろう。
金槐和歌集 (岩波文庫)

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YYM plays Bach on the Border

Amanda Jackson “Cellist Yo-Yo Ma plays a concert at a US-Mexico border crossing to make a point” https://edition.cnn.com/2019/04/14/us/yo-yo-ma-us-mexico-border-trnd/index.html
Nelson Pressley “Yo-Yo Ma’s concert at the border was a beautiful prayer amid an ugly conflict” https://www.washingtonpost.com/entertainment/music/yo-yo-mas-concert-at-the-border-was-a-beautiful-prayer-amid-an-ugly-conflict/2019/04/15/a1c844a0-5fa2-11e9-9ff2-abc984dc9eec_story.html
Norma Matinez, Lauren Terrazas and Jack Morgan “Cellist Yo-Yo Ma Plays Bach In Shadow Of Border Crossing” https://www.npr.org/2019/04/13/713092703/cellist-yo-yo-ma-plays-bach-in-shadow-of-border-crossing
Yuko Funazaki「チェロ奏者ヨーヨー・マ氏「文化は橋を作ります。壁ではありません」米メキシコ国境で演奏」https://www.huffingtonpost.jp/entry/yoyoma-border_jp_5cb3f995e4b098b9a2d5beea


米国(テクサス州ラエド市)と墨西哥(ヌエボ・ラエド市)の国境でバッハの「無伴奏チェロ組曲第1番」を演奏する馬友友*1。「バッハ・プロジェクト」*2の一環。「壁」ではなく「橋」を。