承前*1
3月18日のクロノス・カルテットのライヴでは、琵琶奏者の呉蛮が共演するが、それに合わせて、『外灘画報』(2007年3月15日)では、彼女についての楊聖捷「為伝統器楽樹立先鋒立場」(C6-7)という記事を掲載している。
その記事によると、呉蛮は杭州に生まれ、北京の中央音楽学院を卒業した。彼女が師事した人々には、劉徳海、〓*2宇忠、陳澤民、林石城といった人がいたという。何れも中国音楽の大家なのだろう。また、最後の林石城は「浦東派」の「嫡伝人」であるという。1990年に米国に移住。米国に到着したばかりの頃、彼女はボストンと紐育の間を奔走して、華人コミュニティの学校、老人ホーム、病院、教会などで演奏活動をしていたという。ある日、当時コロンビア大学に留学していた中国人作曲家である陳怡*3をクロノス・カルテットが訪ねてきたとき、彼は呉蛮が教会で琵琶を弾いているヴィデオ・テープを見せ、これを契機として、クロノス・カルテットは呉蛮に1992年のピッツバーグ音楽祭への参加を誘い、そこで中国人作曲家の周龍作曲の『魂』を演奏した。1994年には、呉蛮は譚盾をクロノス・カルテットに紹介し、彼女とクロノスのために『鬼戯』を作曲してもらう。また、2005年には、テリー・ライリーが彼女とクロノス・カルテットのために『琵琶弦楽五重奏』を作曲しており、それと前後して、フィリップ・グラスは彼女のために、『声之歌』(室内オペラ)、『琵琶五行』(琵琶五重奏)、『猟戸座*4』(琵琶協奏曲)を作曲し、最後のものは2004年のアテネ・オリンピックの際に演奏された。また、映画作家の李安も呉蛮に注目し、『ウェディング・バンケット』と『飲食男女』のサントラに彼女は参加している。さらに、1999年に朱鎔基が米国を訪問した際には、ホワイト・ハウスで馬友友(Yo-Yo MA)とともに演奏を行っている。また、この記事にはミュージシャン/小説家の劉索拉の言葉も引かれている。
この記事には、同じ楊聖捷が書いた「呉蛮重要専輯精粋」という記事も付せられている。私は呉蛮のディスクとしては、クロノス・カルテットの『鬼戯』のほかには、劉索拉と共演したChina Collage(1997)
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ところで、安〓*5「琵琶名家呉蛮在滬携手古典先鋒士樹霜:“克羅諾斯是我音楽転折点”」(『東方早報』2007年3月14日)という記事では、呉蛮とクロノス・カルテットの出会いについて、
ここでいう「偶然的機会」というのは陳怡を訪ねたときだったわけだ。
1991年某天、剛到美国、英文不通的呉蛮接到了来自該楽団的電話尋求合作、之後才弄明白、是克羅諾斯楽団成員在偶然的機会聴了其演奏被感動、遂找上門来。
『外灘画報』には、クロノス・カルテットの「霊魂人物」である「大衛・哈林頓(David HARRINGTON)」にインタヴューした、楊聖捷「四支琴弓、書写世界当代音楽史」「克羅諾斯弦楽四重奏組重要唱片拾粋」という記事も掲載されている。