中世人が読めば

承前*1

AbemaTIMES「「令和以外の5つはケチのつけようがない」東大教授が指摘する『令』が抱える3つの問題」https://www.huffingtonpost.jp/entry/reiwa-hantai_jp_5ca41654e4b07982402401f6


「東大教授」というのは本郷和人*2のこと。


(前略)「『令和』以外の5つ*3はケチのつけようがない」と指摘するのは、歴史学者東京大学史料編纂所本郷和人教授。令和の「令」の字に理由があるとして、3つの点を説明する。

 「『令』は上から下に何か『命令』する時に使う字。国民一人ひとりが自発的に活躍するという説明の趣旨とは異なるのではないかというのが、まずひとつ批判の対象にならざるを得ない。

 もうひとつは、『巧言令色鮮し仁』という故事。“口先がうまく、顔色がやわらげて、人を喜ばせ、媚びへつらうことは、仁の心に欠けている”という意味で、この『仁』は儒教で最も大切な概念。今でいう『愛』を意味し、それに一番遠いのが巧言令色だと言っている。そこが引っかかる。

皇太子殿下は日本中世史の研究者で、当然『令旨』という言葉もご存知だと思う。これは皇太子殿下の命令という意味で、天皇の命令ではない。つまり、『令』という字は皇太子と密接な結びつきがあるもので、天皇の密接な関係があるのは『勅』『宣』などの字。(天皇生前退位で定める)新元号とは少しずれている」


本郷氏はこれらを踏まえ、「普通に使うと使役表現となり、中世の人に読ませると『人に命令して仲良くさせる』となる。日本の古典から取ることは何の問題もないと思っているが、どうも自発的な感覚ではなくなってしまう」と改めて述べた。

ところで、本郷氏の謂う「中世の人」というのは、漢文の読み書きができる公家か僧侶であって、田舎の御家人とかではまああり得ないだろう*4
TBSの報道*5

令和「ビューティフル・ハーモニー」で訳語統一


 新元号「令和」の英語の訳について、外務省は、「美しい調和」を意味する「ビューティフル・ハーモニー」と統一し、外国政府などにこの訳語で説明するよう在外公館に指示しました。

 外務省によりますと、新元号「令和」が発表された直後、海外のメディアでは「令」の意味について、「命令」の「令」にあたるオーダー(order)やコマンド(command)と説明する記事が見られました。

 このため外務省は、「令」は「美しい」、「和」は「調和」の意味であり、「令和」を英訳する際は「美しい調和=ビューティフル・ハーモニー」という訳語で統一し、外国政府や海外メディアにそのように説明するよう、在外公館に指示したということです。

 安倍総理は「令和」について、「人々が美しく心を寄せ合う中で文化が生まれ育つという意味が込められている」とする談話を発表しています。
https://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye3639403.htm

「中世の人」にも〈正しい〉意味を教え諭すのだろうか。
それはともかくとして、私の理解する限り、ポスト構造主義以降のテクスト理論に従えば、著者は自らの意味(meaning/vouloir-dire/wanna-say)を読者に強制することはできない筈なのだけど。