「令和」問題*1を巡って。
嘉島唯*2「新元号「令和」は、なぜ格好いいと感じるの? 日本語学者による納得感ある分析」https://www.buzzfeed.com/jp/yuikashima/reiwa
曰く、
たしかに、「ラ行音ではじまる言葉は大和言葉に存在しなかった」(今でも存在しない)。要するに、非日本的な音。忌避されると同時にエクゾティックな響きとして欲望される。まあ、プルースト=ドゥルーズ的に考えれば、美しい言葉というのはすなわち外国語なのだった*3。さらに、想像を膨らますと、これは日本語の起源という問題に関わっているといえるだろう。(語族の帰属が定まっていない)日本語の起源に関しては、アルタイ理論と南島(オーストロネジア)理論がある。「ラ行音」で始まらないというのは、日本語とアルタイ語族を結び付ける際の主要な根拠のひとつなのだった。服部四郎『日本語の系統』に曰く、
飯間浩明飯間さんによると、ラ行音ではじまる言葉は大和言葉に存在しなかった。古事記、万葉集などの和歌を見ても、最初にラ行音が来る単語はほとんどない。現在もその名残があるという。
@IIMA_Hiroaki新元号は「令和」と決定。ラ行音で始まるのは斬新でいいと思いました。元来、ラ行音というのは外来音で、大和ことばにはありませんでした。漢字の音読みのほか、ラジオとかレモンとか、カタカナ語に多い。過去の元号の音にも少なく、伝統の中に清新な風を感じます。
63.1K
10:59 AM - Apr 1, 2019
https://twitter.com/IIMA_Hiroaki/status/1112550122150223872例えば、しりとりでラ行音のつく言葉は少なく、多くが外来語である。
語頭のラ行音が日本にもたらされたのは、中国から漢字伝わってきたときだ。以来、大陸から渡ってきた漢字の音読みとして「ラリルレロ」が使われるようになった。「礼儀」「利益」などは音読みだ。
また、江戸時代以降に外来語が輸入され、再びラ行音のつく言葉が広まった。英語やフランス語など欧米諸国では「R」や「L」ではじまる言葉が一般的に使われているからだ。「ラテン」「レモン」「レール」などがそれにあたる。
「日本語で『ラ行』からはじまる言葉は今だに少なく、電話の『リンリン』のような擬音ぐらいしか見当たりません」
語頭のラ行は海外からもたらされた新しい音。新しさの象徴なのだ。
(2)語頭にrが立たない。従ってrで始まる単語(自立語)は借用語である。これは、朝鮮語や日本語にも共通の特徴である。日本語の辞書のラ行音の所を見ると、ライゲツ(来月)、リクチ(陸地)などのような漢語(すなわちシナ語からの借用語)やランチ(<英語 lunch)、リヤカー(<英語 rear car)などのような借用語か、ラシイなどのような附属語、あるいはラ(コドモラのラ)のような接尾辞である。(p.370)
- 作者: 服部四郎
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 1999/03/16
- メディア: 文庫
- 購入: 2人 クリック: 14回
- この商品を含むブログ (14件) を見る
*1:See https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/2019/04/01/134844 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/2019/04/03/020831 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/2019/04/04/094551
*2:https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20170830/1504066381 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20180305/1520203977 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20180527/1527444597
*3:See プルースト「サント=ブーヴに反論する」、ドゥルーズ『批評と臨床』。Also https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20110924/1316881071