寿岳文章

関西在住の人はMUST SEEでしょう。
『日経』の記事;


専門の枠を跳び越す探究心 寿岳文章の業績たどる展覧会
文化の風

関西タイムライン
2021年3月5日 2:01



向日市文化資料館*1で開催中の「寿岳文章 人と仕事」展。寿岳が収集した各地の和紙の資料を一覧できる。
英文学、書誌学、和紙研究――。幅広い分野で業績を残した寿岳文章(じゅがく・ぶんしょう、1900~92年)*2の生涯をたどる特別展が京都府向日市の同市文化資料館で3月21日まで開催されている。市内に残る邸宅「向日庵(こうじつあん)」の遺蔵資料には専門領域にとらわれず探究心を自由に羽ばたかせた姿が刻まれ、学問とは何かを見るものに語りかける。

生誕120年にあたる昨年、英文学や工芸美術史、近現代史の研究者らが向日庵資料の一部を改めて調査。特別展「寿岳文章 人と仕事」に成果が反映されている。調査を統括した中島俊郎・甲南大名誉教授(NPO法人向日庵理事長)は「学者も芸術家もまずは人として誠実に生きるべきだ、との考えが10代から90代まで変わらなかった。この人を見よ、という思いが湧く」と語る。


思索示す日記や書簡
会場にまず並ぶのは思索の行程を示す日記や多くの書簡など。思想家、柳宗悦との親交を物語る手紙のほか、海を越えて飛び交った書簡も多い。英文学者としては英国を代表する詩人・画家のウイリアム・ブレイクの研究が知られる寿岳は「実は生涯に一度も渡航したことがなかった。1929年にまとめたブレイクの書誌は世界的に高く評価されたが、海外の学者の知見に基づいた当時の最新情報を集めてなし遂げた驚異的な研究だ」と玉城玲子館長は説明する。

蔵書を記録した図書原簿には書名やページ数、発行所、体裁など約2万冊分のデータがびっしり書き込まれ、緻密な人柄が浮かび上がる。その書物への愛情は書誌学へと発展した。展示ケースの中でひときわ目を引くのが、本の美を追究した寿岳が自ら刊行した「向日庵本」と呼ばれる私家本の数々。染織工芸家の芹沢銈介が装丁した本もあり、ながめるだけで楽しい。


和紙の伝承と振興に尽力
隣の展示室は趣ががらりと変わる。様々な手すき和紙のサンプルが産地ごとに標本ケースに収まり、寿岳による調査記録とともに紹介される。寿岳は西洋の手すき紙を調べるうち和紙に魅了された。37年から3年がかりで全国の産地を調査。師事した言語学者新村出とともに中世の武家に重用され一般名詞化した「杉原紙」を研究し、その源流は現在の兵庫県多可町と突き止めた。

衰退しつつあった和紙の伝承と振興に尽くしたのも功績とされる。寿岳が収集したこれら資料は現在、多可町の和紙博物館「寿岳文庫」が収蔵しているが「一堂に展示するのは初めてでは」と玉城館長は説明する。


戦後は関西学院大や甲南大で英文学の教授を務めつつ、文化人として活躍。新聞や雑誌への寄稿は2千を超し、自ら整理しスクラップブックに収めていた。翻訳家・文筆家の妻しづと二人三脚で取り組んだ仕事も多い。

「文学、美術、工芸、これらすべての問題とからみあって、私の生活内容となる」「何が専門で、何が余技かなどと言う問題は全く存在しない」。捉えどころがないように見える自らの研究を寿岳はこう述べ、晩年には「学問の専門が細分化され、全体を見る視野がせばめられている。統合していく努力をしなくなった」と苦言を呈した。中島名誉教授は「専門に甘んじ統合への努力を怠って放置する態度が様々なひずみを生むのでは。令和の文化人は社会でどんな役割を果たすのか、と寿岳は絶えず問いかける」と話す。

玉城館長は「この展示は一つの足がかり。日記や書簡の調査が進めば20世紀を生きた知識人の足跡から多くの事が分かるはずだ」と期待する。向日庵と遺蔵資料は現在、個人私有となっており、中島名誉教授は「都市の周縁から中央への知の収れんを物語る文化遺産だ。公有化し公開してほしい」と訴える。

編集委員 竹内義治)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOIH184MD0Y1A210C2000000/

See also


特定非営利活動法人 向日庵「寿岳文章について」https://koujitsuan.kyoto/%E2%80%8Efamily/bunshou
関西学院史編纂室「寿岳文章https://www.kwansei.ac.jp/r_history/r_history_m_001222/detail/r_history_008978.html

極悪な50人

生田綾「夫婦別姓に反対する50人の自民党議員は誰なのか。地方議員への文書全文と議員一覧」https://www.huffingtonpost.jp/entry/story_jp_603c875fc5b601179ebeb2b7


男女共同参画担当相」である丸川珠代*1を含む50人の自民党国会議員が田村琢実埼玉県議会議長個人宛にに「選択的夫婦別氏制度の実現を求める意見書」などが「採択」されないように協力を求める(そのような工作を求める)要請文を送った。文書を送り付けられた田村氏がどういうスタンスの人なのかはわからないが、夫婦別姓*2のことよりも中央による地方自治への介入ということに腹を立てているように見える。
この文書に署名した50人だが、自民党内でもその極右的言動や所作で一世を風靡した者は漏れなく入っているようで、2021年の時点における日本を代表する極悪政治家リストという意味を持つだろう。さて、古寺多見氏はその中でも「安藤裕」*3に注目している*4。まあ私は殆ど知らないけれど。

*1:See also https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20070813/1187012269 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20131219/1387454738 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20180522/1526951457

*2:See also https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20090928/1254069607 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20100104/1262603428 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20100528/1275011275 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20100621/1277091830 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20100625/1277433569 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20100802/1280726806 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20140930/1412049585 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20150219/1424355486 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20170102/1483336796 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20170310/1489118556 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/2019/06/20/014417 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/2019/07/02/111639 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/2019/07/05/110904 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/2019/08/20/011441 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/2020/01/23/103401 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/2020/02/05/100234 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/2020/06/13/032027 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/2020/06/20/081406 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/2020/10/10/010229 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/2020/11/18/110029 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/2021/02/15/094801 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/2021/02/20/210339

*3:https://www.andouhiroshi.jp/ https://ameblo.jp/andou-hiroshi https://twitter.com/andouhiroshi

*4:「地方議員に選択的夫婦別姓制度に反対せよと圧力をかける文書を送った「50人の自民党国会議員」の中に、あの「安藤裕」の名前があった」https://kojitaken.hatenablog.com/entry/2021/03/04/082853

デルヴォー列車

津田雅之氏*1のツィート;


ポール・デルヴォー*2と鉄道については、例えば、


Nicholas Whyte*3 “The Man Who Loved Trains: Paul Delvaux at Train World” https://nwhyte.livejournal.com/3461292.html

Andy Bell covers Breathing


ケイト・ブッシュの「呼吸」*1を歌うアンディ・ベル*2。この人はイレイジュアのヴォーカリストで、元オアシスのベーシストは同姓同名の他人。

Never Forever

Never Forever

  • アーティスト:Bush, Kate
  • 発売日: 1996/07/23
  • メディア: CD

接待すればいい

金子賢一という方曰く、


うる覚え」や(「延々と」と書くべきところを)「永遠と」とするというのは実は殆ど見たことがない。ただ、そういうのと、「ゆう(言う・いう)」というのを同列で論じられるのだろうか。「ゆう」というのは確かに日本語の規範から逸脱した書き方だけど、それほど変な感じはしない。〈行く〉の場合は、いくでもゆくでも許容されている。じゃあ、何故「言う」ではいけないのか? 「ゆう」を「変な言葉遣い」と貶める人はこのことを誰もが納得できるように説得すべきだろう。
この金子発言をコアにした「「うる覚え」「永遠と」といった変な言葉遣いは、書き文字を知らず日常生活から『耳コピ』してるからなのではという話」というtogetterがあるのだけど*1、その中に「破綻」を「はじょう」と読む話が出てくる*2。錠前から類推すれば、「はじょう」になるよね。ところで、「消耗」や「残滓」は正しくは、それぞれショウコウザンシと念む。しかし、「毛」から類推されたショウモウや「宰」から類推されたザンサイが幅を利かせており、辞書でも「慣用」として認められている。さらに、「消耗」の場合は、shoumouと入力すれば一発で変換してくれるのに、shoukouと入力しても変換してくれない。まあ、国語辞典の編集委員をちゃんと接待しておけば、どんな「変な言葉遣い」でも「慣用」として記載しれくれるのだろう。
耳コピ」と表記のずれというと、やはり「女王」と「体育」だろうね*3
さて、岸政彦氏*4曰く、
たしかに、「ベッド」じゃなくて「ベット」と書く人は多い。「ベッド」でも「ベット」でも問題はないのだろうけど*5、「バック」と「バッグ」の混同は時に問題を引き起こす。ティーバッグとティーバック。ところで、昔ジャック・デリダのことを「デリタ」と一貫して表記していたTM君は元気なのだろうか。

虻に好かれて

今福龍太*1手塚治虫先生」『ちくま』598、pp.40-45


『ぼくの昆虫学の先生たちへ』という連載の9回目。
曰く、


むかしからなぜかアブに好かれる性質でした。汗にアブ好みの芳香成分でも含まれているのでしょうか? いまだに理由はわかりません。家族や友人たちと山や草原を歩いていると、たいていぼくのところだけにアブが寄ってくるのです。大型のウシアブ(牛虻)などは、本来は家畜の血を吸うアブだと思うのですが、ふと気づくとぼくの胸に止まっていて、再撮するようにチクッと刺したりするのです。ハチとはちがって刺されても毒などはないので、ただ小さな痛みと、その後のかゆみがしばらく残るだけです。危害を加えようとしているのではないことはわかるのです。でもなぜぼくにだけ? やっぱりアブに好かれているのでしょうか? 先生の漫画にあるように、ぼくにとってのアブもまた、主人公を優しくいざなったり挑発したりする、透明な翅を背中につけた長い髪の可愛い少女の姿をしているのでしょうか?
蠅よりはるかに大きく、複眼が異常に発達したアブは、よく見るととても美しい昆虫です。とくにアオメアブ(青目虻)の緑赤色に光る丸い複眼などは、少年時代に見たもっとも美しいものの一つでした。あの複眼の宝石のような輝きは、自然界に存在する「色」というものの複雑さと妖しさ、その変幻自在の魅力をはじめて教えてくれたような気もしています。魅入る、とはまさにあんな色と輝きを持ったものへの憧れをあらわす言葉かもしれません。それにアブは、縄張りに知らずに入ったりした時に突然攻撃してくるハチとはちがって、どちらかといえば、向こうから人や動物に寄りつき、つきまとう性向を持っているという点で、むしろ人懐っこささえ感じるのです。いえ、それもこれもアブに好かれてしまった者の独りよがりにすぎないのでしょうか?(p.40)