上海でミロを観る

日曜日、上海美術館*1と上海当代藝術館*2へ行った。
上海美術館では先ずカナダ在住の中国人画家劉溢*3の初の中国大陸巡回展*4。彼の近作30点余りが展示されている。劉溢の作風は構造においても遠近法においても厳格な古典主義である。伝統的な意味でのリアリズムの極とも言えるのだが、そのリアルさ故に奇妙な非現実性が喚起される。つまり、瞬間というかリアルの死骸が冷凍保存されたという感じ。その意味では、シュールレアリスト、特にポール・デルヴォーの画風に近い印象を受けた。続いて、『現実的幻象――2012米羅版画作品特展(Real Illusions – Joan Miro's Engravings)』*5ジョアン・ミロの版画作品155点を一挙に公開する。これだけ大量のミロの作品を一度に観たことはなかったので、(心地よい意味で)目と頭がくらくらした。また、ミロの作品は劉溢とは対極的であるといえるだろう*6。上海当代藝術館ではグラフィック・デザイナー陳漫の『漫――陳漫視覚藝術展』*7。こちらは劉溢ともミロとも違った極に立つ作品であるといえる。

*1:http://www.sh-artmuseum.org.cn/

*2:http://www.mocashanghai.org/

*3:See http://baike.baidu.com/view/1776078.htm

*4:http://www.sh-artmuseum.org.cn/Infor_show.aspx?id=2398

*5:http://www.sh-artmuseum.org.cn/Infor_show.aspx?id=2383

*6:これらの作品は「上海世貿控股公司」のコレクションであり、元々は某日本人のコレクションであった。その背景については、徐佳和「米羅被上海収蔵的背後:日本”藝術泡沫”」(『藝術評論』2012年1月16日、p.9)を参照されたい。

*7:http://www.mocashanghai.org/index.php?_function=exhibition&_subFunction=currentExhibition&exhibition_id=59&_view=detail