城内に山谷

久々に城内実*1とか山谷えり子*2という名前を見た。
時事通信の記事;


自民、子ども第三者機関で紛糾 保守系「左派政策」と批判
2022年02月05日08時40分



 自民党は4日、「『こども・若者』輝く未来実現会議」を開催し、子どもの権利を守る議員立法「こども基本法案(仮称)」について意見交換した。第三者機関「コミッショナー」創設をめぐり、保守系議員から「左派の考え方」などと異論が噴出。引き続き議論することとなった。

 コミッショナー制度は、公明党が昨年の衆院選で掲げた。自民党の資料によると、子ども政策の実施状況を調査し、首相や文部科学相らへ勧告する権限の付与を想定。国家公安委員会のように高い独立性を持つ国家行政組織法の「3条委員会」とする案も示している。
 4日の実現会議では、城内実氏が同制度について「個人を大事にし、それを拘束するものは悪であるというマルクス主義思想があり、制度を作ったらそういう人たちばっかりだったみたいなことになる」と主張。山谷えり子拉致問題担当相は「左派の考え方だ。恣意(しい)的運用や暴走の心配があり、誤った子ども中心主義にならないか」と訴えた。岸田文雄首相が実現を目指すこども家庭庁に「機能を集約すればいい」との意見も出た。
 これに対し、賛成論も相次いだ。阿部俊子氏は「子どもの権利を守る機関を置かないと、党のイメージへの影響は破壊的だ」と指摘。山田太郎氏は「子どもの意見を聞きながらどういう問題があるか、現場からも解決できるルートを作っておこうということだ。マルキシストによって作られたものでは決してない」と反論した。
 一方、自民党内の議論に関し、公明党石井啓一幹事長は記者会見で「コミッショナーにはいろんなやり方がある。自公間の議論が既に開始されているので、十分検討していただきたい」と促した。共産党の田村智子政策委員長は会見で「科学的社会主義マルクス主義)は女性や子どもの権利を重要視していた。先駆的な役割を評価すべきだ」と強調した。
https://www.jiji.com/jc/article?k=2022020401100&g=pol

マルクス主義」は「個人を大事にし、それを拘束するものは悪である」というような素晴らしいことは言っていないぞ。
さて、城内や山谷のような人間が仮にも「自由」と「民主」を掲げた政党に所属しているということを、支持者は勿論反対派も不思議に思わないというのはどういうことなのか? と問いたい。
ところで、この記事を紹介している宮武嶺氏*3の「【大切なのは個人の尊重】こども基本法に反対する自民党右派が戦前過ぎる!城内実議員「個人を大事にし、それを拘束するものは悪であるというマルクス主義思想」山谷えり子議員「誤った子ども中心主義」」というエントリー*4にも少し突っ込んでおく。「個人主義」の反対は「全体主義」ではない。「個人主義」の反対は(普通)集団主義(中国語で言うと、集体主義)。勿論、「全体主義」は「個人」を抑圧し、「個人主義」に反対すると宣うだろう。しかし、事情はそれほど単純ではない。歴史的に言えば、ファシズムスターリン主義といった「全体主義」は、様々な社会変動によって伝統的な社会的絆やコミュニティから切断されて、〈孤独(loneliness)〉に沈んだ剥き出しの諸「個人」を、「全体」が吸い込むという仕方で形成されたといえる。この社会-心理的な機制に関する古典的な著作としては、例えばエーリッヒ・フロムの『自由からの逃走』*5があるだろう。また、ここでいう〈孤独(loneliness)〉は、ハンナ・アレントの『全体主義の起源』を踏まえている*6。話を戻すと、孤独な剥き出しの個人たちが吸い込まれる「全体」とは何なのか。それは例えば階級とか民族とか国民とか人種といったものなのだが、その意味を理解するためには、現実存在(実存)/本質(存在)という対立を持ち出した方がいいだろう。私たちは様々な本質或いは属性*7も持っている。しかし、実際の(現に存在している)私は、日本人、男性、ヘテロセクシュアル、左翼、酒飲み等々の本質或いは属性の総和には還元されえない。また、そもそもこれらの本質或いは属性は概念としてしか存在せず、実践的・理論的目的のために使用されるべきものであり、現実に存在するものと取り違えられてはいけないものだ。偶々日本人という本質或いは属性を持った人は実在するが、本質或いは属性としての日本人は(前者と同じ権利においては)実在し得ないということだ。「全体主義」は例えば階級とか民族とか国民とか人種といった本質或いは属性(のひとつ)を「全体」と僭称し、それへの帰一を呼びかける。孤独な剥き出しの個人たちがそのような「全体」に吸い込まれてしまった結果、極限的には何が起こるのか? それは、現実存在の忘却或いは隠蔽であろう。個人は「全体」(概念)のサンプルになってしまう。サンプルは定義上交換可能である。ここには、かけがいがないという意味での〈個性〉が存立する余地はないだろう。また、ここでは、〈他者〉も概念のサンプルとして現われる。「全体主義」において、人は生身の存在としてではなく、(例えば)ユダヤ人とか反革命分子といった本質(属性)のサンプルとして虐殺される。

*1:See also http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20081201/1228105248 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20090327/1238126481 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20090729/1248869190 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20090731/1248969633 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20090804/1249405632 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20090805/1249492266 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20090808/1249714415 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20090809/1249835813 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20090813/1250162720 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20090910/1252567925 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20090912/1252732340 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20090914/1252865497 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20090915/1252981143 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20100104/1262603428 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20100131/1264951293 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20100220/1266635022 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20100226/1267115264 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20100311/1268311996 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20100329/1269840594 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20100626/1277554290 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20110329/1301370489 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20110426/1303840125 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20110502/1304366060 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20120501/1335857602 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20130522/1369237305 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20130617/1371433813 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20130828/1377710677 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20131206/1386345428 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20141112/1415767388 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20150217/1424186502 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20150310/1426005115 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20150314/1426355148 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20170321/1490115049 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20170527/1495852041 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/2021/10/08/020307

*2:See also https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20060909/1157830200 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20060912/1158067383 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20061014/1160795465 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20061020/1161367917 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20070323/1174618782 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20100131/1264951293 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20110612/1307901725 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20140922/1411391113 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20140927/1411778587 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20141115/1416008333 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20150213/1423756575 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20150426/1430011188 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20160601/1464787357

*3:See also https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20110910/1315671133 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20120202/1328109991 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20130306/1362584719 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20130403/1365006904

*4:https://blog.goo.ne.jp/raymiyatake/e/cee07e24f09354682120ec87b5b3ae01 Via https://kojitaken.hatenablog.com/entry/2022/02/08/215702

*5:Mentiioned in https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20070320/1174400423 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20091130/1259555364 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20101018/1287421121 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20131120/1384914970 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20131228/1388214636 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20160125/1453694119

*6:See also https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20050630 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20061113/1163423052 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20061226/1167151875 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20070420/1177093181 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20081209/1228825652 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/2019/05/08/234216 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/2020/12/13/103707 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/2021/02/07/081228

*7:What is?の答えになり得るようなものたち。