忘れられた？ - Living, Loving, Thinking, Again

小西克哉「「田舎のセックス教団」と見られていた旧統一教会の野望を40年前に見抜いていた、米「フレイザー報告書」の慧眼」https://news.yahoo.co.jp/articles/751ba45992f01ba3e6904c3f98c84afcc91bfde3

このタイトルにある「田舎のセックス教団」というのを見て、1970年代の統一協会 *1のイメージと現在のイメージの間に、ちょっとしたギャップがあることに気づいた。

旧統一教会の実態についての「点検」も綿密だ。1966年8月26日ソウル発の米国大使館極秘電報を公開し、そこに教団の実態がこう記されていたと報告している。
「（旧統一）教会は聖書を性的に解釈し、宗教的経験はセックスと相関関係にあると主張する。教会の指導者、文鮮明は性的行為の数々で逮捕歴があるが、教団スポークスマンは『逮捕は事実だが、起訴には至らなかった』と反論している」

1970年代後半、既に大学の基督教系のサークルは、（統一協会の学生組織である）「原理研究会」とは一切関係がありませんという断り書きを添えて自己紹介するのがほとんど決まりだった*2。当時は〈霊感商法〉というのはまだ問題視されておらず、従って、統一協会＝壺というイメージは成立していなかった。統一協会のイメージとして、アジトのようなところで集団生活しながら布教活動をしていること、反左翼であることというのは現在でも変わらないのだけど、当時は統一協会はエロいというイメージがあった。これは昨今の様々な立場からの統一協会言説には抜け落ちていることだと思う。最近の言説では、「血分け」という用語は殆ど登場していないけれど、1970年代においては、原理（統一協会）といえば血分け、スキナー犬のベルみたいなものだった。ただ、その頃、「血分け」というのは既に都市伝説的な存在になっていた。そもそも統一協会のような内閉的な組織の内部を外側から覗うことは困難なのだけど、それでも今*3は行われていないらしいということは伝わっていた。それで、何時頃まで行われていたのかわからない、或いはそもそも行われていたのかどうかもわからない実践なのだった。上の引用文でも、文鮮明が「性的行為」に絡んで「逮捕」されたということが言及されていけれど、後にそういう歴史を知って、あの1970年代のあの〈噂〉は半分は正しかったんだなと思ったのだった。
よく考えると、字義的な意味での「血分け」というのを教義のコアに据えるのはちょっと無理がある。実際のところ、文鮮明というのはたんなるオヤジであって、性的能力の衰退を伴いつつ年齢を重ね、やがて死んでいった。「血分け」の能力というのは客観的に衰弱していったわけだ。やがて完全に不可能になった。ということで、教祖の性的能力を中心とする身体性に依存しない実践が発明されなければならなくなる。それが統一協会式の「祝福」、集団結婚式ということなのだろう。
或る種の伝統社会においては、王のカリスマ性と性的能力は一体のものと観念されている。カリスマ＝性的能力を失った王は王殺しの対象となる。東アフリカの伝統社会いおいて、王の自然死というのはあり得ない。王が死んで新王が即位した場合、その真偽はわからないが、前の王は新王によって殺されたという噂が流れる（Cf. E. E. Evans-Pritchard The Divine Kingship of the Shilluk of the Nilotic Sudan*4 ）。

The Divine Kingship of the Shilluk of the Nilotic Sudan

作者:Evans-Pritchard, E. E.
Cambridge University Press

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*2:統一協会は聖書研究会とかを名乗ってキャンパスに登場することが多かった。

*3:1970年代における今。

*4:Also https://www.haujournal.org/index.php/hau/article/view/hau1.1.016