一つの波頭 - Living, Loving, Thinking, Again

最近、グローバルな「反リベラル・バックラッシュ」の潮流という自分でも手慣れない言葉を使っているのだけど*1、そのときに念頭に置いていたのは、妊娠中絶を巡る米国の連邦最高裁判所の暴挙*2のほかに、以下のような報道なのだった；

子のない夫婦は「伝統的家族観の否定」、LGBTの権利宣伝は「少子化の原因」　ロシア下院が処罰法案を審議へ
2022年7月29日 20時40分

　ロシア下院は「夫婦が子を持たない価値観」や、性的少数者（ＬＧＢＴ）の権利について情報を拡散することを禁じる法案を審議する。異性間の婚姻による出産を奨励し人口を増やす狙いだが、さらなる人権侵害につながる恐れが強い。
　法案は、プーチン政権下で「体制内野党」と呼ばれる共産党や自由民主党が１８日に提出。ボロジン下院議長は２８日、「非伝統的な価値観のプロパガンダは禁止されると確信している」と述べ、秋に可決されるとの見通しを示した。
　ロシアメディア「ガゼータ・ルー」によると、法案は「夫婦が子を持たずに幸福を追求する」との考え方は「伝統的な家族の価値観の否定」とみなした。また、同性婚や性的少数者の権利を宣伝することは「少子化の原因となり、社会発展に悪影響を与える」として全面的に禁じるとした。
　「夫婦が子を持たずに幸せに暮らす価値観」や性的少数者の意見を、公共の場やネット空間で流布した場合、罰金を科す方針だ。
　ロシアでは２０１３年に「同性愛宣伝禁止法」*3が成立。性的少数者のパレードや虹色旗の掲揚を「青少年に悪影響を与える」との理由で禁じた。今回の法案は同性愛の価値観が「大人を含めて悪影響を与える」と解釈を拡大している。
　インタファクス通信によると、プーチン大統領直属の諮問機関「人権評議会」の議長は「言論の自由を守る観点では議論が必要だ」とする一方「人口動態の改善という点では理にかなう」と話している。
https://www.tokyo-np.co.jp/article/192617

さて、岸政彦氏*4曰く、

逆にいうと同性婚と夫婦別姓に強硬に反対する政治家は統一協会と関係あると思ってええんちゃうかな
— 岸政彦 (@sociologbook) 2022年8月17日

たしかに、「同性婚と夫婦別姓に強硬に反対する」奴が統一協会と関係を持っている確率は、祝電程度の薄い関係を含めれば、かなり高くなるだろう。逆に言えば、「同性婚と夫婦別姓に」賛成の人が統一協会と関係を持つというのはちょっと考えづらい。でも、いくら確率が高いとは言っても、統一協会とは関係なく「同性婚と夫婦別姓に強硬に反対する政治家」はいる可能性はある。また、統一協会との関係の有無を問わず、「同性婚と夫婦別姓に強硬に反対する政治家」は攻撃の対象としなければならないだろう。
何を言いたいのかと言えば、反リベラル的バックラッシュというのはグローバルな潮流として存在しており、統一協会というのは（主流かどうかは知らないけれど）その潮流の中のひとつの波だということだ。

*1:https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/2022/08/06/110749 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/2022/08/08/091228

*2:See also https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/2022/06/26/141422 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/2022/06/27/143858 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/2022/07/01/101500 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/2022/07/04/014702 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/2022/07/20/110755 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/2022/07/22/110626

*3:See also https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20131013/1381669936 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20131020/1382242882 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20141105/1415113381 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/2019/06/11/003132