All the six people were killed

ニューズウィーク』(日本語版)に掲載されたロイターの記事;


アフガニスタン支援活動の中村哲医師ら6人銃撃で死亡 ダリバンは関与否定
2019年12月4日(水)18時52分


アフガニスタン東部ナンガルハル州のジャララバードで4日、非政府組織(NGO)の車が銃撃され、ピースジャパンメディカルサービス(平和医療団日本)総院長の中村哲医師ら6人が死亡した。

同州の当局者によると、犯人は逃走し、警察が行方を追っている。

同当局者は「中村氏はアフガニスタンの復興、特に灌漑や農業の分野で多大な貢献をしてきた」と述べるとともに、中村氏が今回の銃撃の標的だったとの見方を示した。

まだ犯行声明は出ていないが、反政府武装勢力タリバン」の報道担当者は関与を否定した。

中村医師はアフガニスタンで灌漑(かんがい)や農業の復興作業を支援し、同国政府から最近、名誉市民権を授与された。

大統領府報道官は「アフガニスタン政府は、わが国にとって最も偉大な友人である中村医師への凶悪かつ卑劣な攻撃を強く非難する」と表明。「(中村氏は)アフガン国民の生活を変えるために人生を捧げた」と述べた。

*内容を更新しました。




[カブ-ル/ナンガルハル 4日 ロイター]
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2019/12/ngo6.php

最初、同行していた5名のアフガニスタン人スタッフは死亡したけれど、中村氏は一命を取り留めたという報道だった*1。数時間後には中村氏も「死亡」という報道に変わった*2アフガニスタンにおいてこうした襲撃事件は決してレアなことではないということだが*3、余りにも唐突で絶句するしかない。
See also


“Tetsu Nakamura: Japanese doctor among six dead in Afghan gun attack” https://www.bbc.com/news/world-asia-50654985 *4
ハフポスト日本版編集部「中村哲医師、アフガニスタンで銃撃され死亡 現地で医療活動や水利事業に励んでいた【UPDATE】」https://www.huffingtonpost.jp/entry/news_jp_5de748ace4b0d50f32aaf7a5


原田浩司氏曰く、


古田大輔氏*5曰く、
綿井健陽*6曰く、

中村氏については、2017年にSEALDs*7が行ったインタヴューも参照されたい;


POST編集部「ペシャワール会 中村哲医師に聞く。共に生きるための憲法人道支援 <前編>」http://sealdspost.com/archives/5388

井上真樹夫

NHKの報道;


ルパン三世」の五ェ門など演じた声優 井上真樹夫さん死去
2019年12月2日 20時26分


アニメ「巨人の星」の花形満や「ルパン三世」の石川五ェ門など、多くの人気キャラクターを演じた声優の井上真樹夫さん*1が、先月29日、急性心臓死のため亡くなりました。80歳でした。

井上真樹夫さんは山梨県出身で、舞台に出演するなど俳優として活動を始め、テレビのナレーションの仕事を行うなかで、テレビアニメの草創期から「鉄腕アトム」などの作品に、声優として関わりました。

昭和43年から放送が始まったアニメ「巨人の星」では主人公、星飛雄馬のライバル、花形満の役を演じて一躍有名になりました。

昭和53年には「宇宙海賊キャプテンハーロック」で主人公のハーロック役を演じたほか、人気アニメ「ルパン三世」では、主人公のルパン三世と行動をともにする居合の達人、石川五ェ門役を演じました。

所属事務所によりますと、井上さんは生涯現役を掲げて80歳になっても講演活動などを行っていましたが、先月29日、持病の狭心症が悪化して急性心臓死のため自宅で亡くなったということです。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20191202/k10012199421000.html

巨人の星*2の「花形満」をやっていた頃は「井上真樹夫」という名前を知らなかったし、「ハーロック」とか「石川五ェ門」になった頃は、ちょうど私がアニメから遠ざかっているときだった。何だか間が悪い感じで申し訳ないです。それで巡り合ったのは、今年モンキー・パンチ追悼でオンエアされた『ルパン三世 ルパンVS複製人間*3
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  • 発売日: 2003/10/24
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See also


野口博之*4「声優の井上真樹夫さん、亡くなる5日前までツイート ファン「最近まで見かけてたのに...」」https://www.j-cast.com/2019/12/02374122.html

船橋の川端康成(メモ)

川端康成が見た船橋」『新京成CiaO』(新京成電鉄)147、p.8、2019


少しメモ。


伊豆の踊子』の発表から7年余り経った昭和8~10年頃、30代半ばの川端*1は、執筆のために何度も船橋に足を運びました。目的地は「三田浜楽園」です。
「三田浜楽園」は、「三田浜塩田」の跡地に作られた遊園地や旅館を有する行楽地です。野球場や動物園があったほか、海水浴や魚釣りもでき、多くの人々でにぎわいを見せていました。川端は「割烹旅館三田浜楽園」の奥まった一室に泊まり、『童謡』をはじめとする何編かの小説を執筆したといわれています。
昭和10年に雑誌『改造』に発表された『童謡』は、海辺の町の旅館を舞台に、旅館に泊まって絵を描いている日本画家・滝野と、見習い芸者・金弥の姿を描いた短編小説です。作中に旅館の名称は明記されていませんが、「廊下の長さが三町もある」や「部屋の裏側にあたる遊園地」などという風景描写から、「割烹旅館三田浜楽園」が作品の舞台であったとされています。
伊豆の踊子 (新潮文庫)

伊豆の踊子 (新潮文庫)

  • 作者:川端 康成
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2003/05/05
  • メディア: 文庫
See also


「三田浜塩田 発祥の地」https://840.gnpp.jp/mitahamaenden/
「ぶらり一人ウオーク 川端康成ゆかりの船橋「三田浜楽園跡」を訪ねて (4/8)」https://blog.goo.ne.jp/ntt00012/e/bccdc39557c1079f9d7476ff65779448
「「三田浜楽園」閉鎖?」https://plaza.rakuten.co.jp/playboy69/diary/200603280000/


船橋市役所の近く。この辺りに、かつての行楽地の面影を見たことはない。「割烹旅館三田浜楽園」はその後も営業を続けていたが、2006年に閉館し、その跡地は現在タワー・マンションになっている。また、近くに「玉川旅館」が現存するが、こちらの方は太宰治所縁の旅館。

斜塔を滑って?

共同通信の記事;


高校1年の読解力、15位に低下
OECD調査、上位層と差

2019/12/3 18:17 (JST)


 経済協力開発機構OECD)は3日、加盟国を含む79カ国・地域の15歳を対象として2018年に実施した学習到達度調査(PISA*1の結果を公表した*2。日本の高校1年生の読解力は15位で、8位だった15年の前回調査から低下。点数も12点低くなり、上位層と差が広がった。

 数学的応用力は5位から6位、科学的応用力も2位から5位に後退したが、文部科学省はトップ水準を維持していると分析。3分野の全てでトップは「北京・上海・江蘇・浙江」で参加した中国だった。

 調査は15年に続きパソコンで実施。読解力では新たにブログなどインターネット上の多様な文章形式の出題が行われた。
https://this.kiji.is/574525138869077089

平均点は読解が487、数学が489、理科が489。日本はそれぞれ、504、527、529なので、「トップ水準を維持している」という文科省の見解もそれなりの妥当性を持つように思える。北京、上海、江蘇、浙江、澳門、香港だけでなく、韓国にも負けているということで、国難的な煽りが右から来るのだろうか、それとも陰謀理論が流布されるのだろうか*3
See also


Jenny Anderson & Amanda Shendruk “The best students in the world, charted” https://qz.com/1759506/pisa-2018-results-the-best-and-worst-students-in-the-world/

或る客死

サンケイスポーツ』の記事;


中村玉緒の息子・鴈龍さん、孤独死していた…55歳
12/4(水) 7:00配信サンケイスポーツ


 俳優、勝新太郎さん(享年65)と女優、中村玉緒(80)の長男で俳優、鴈龍(がんりゅう)さん*1が急性心不全のため11月1日に名古屋市内で死去していたことが3日、分かった。55歳だった。

 玉緒の所属事務所などによると、鴈龍さんは同市で働いており、連絡の取れない知人が不審に思って訪ねたところ、亡くなっていたという。一人暮らしだったこともあり、発見されるまで数日間がたっていた。

 葬儀は玉緒の仕事のスケジュールを調整し、11月29日に近親者だけで行い、納骨も済ませた。息子に旅立たれた玉緒は憔悴しきっており、長女が付き添っているようだ。

 鴈龍さんは、勝さんが製作・監督・主演を務めた1989年公開の映画「座頭市」でデビュー。だが、撮影中の88年に真剣を使用し、殺陣師の俳優を死亡させる事故を起こした*2。同作は皮肉にも大ヒットしたが、90年には追い打ちをかけるように勝さんがハワイにコカインを持ち込み逮捕された。

 鴈龍さんは謹慎生活を経て、端役で復帰し、その後は玉緒とドラマで親子初共演も。勝さんが97年に他界した際には、葬儀で司会を務め、「父の名を辱めないように精いっぱいやる」などとあいさつをしていたが、2017年の舞台を機に姿を見なくなっており、今年5月には「女性自身」が鴈龍さんと玉緒の絶縁などを報じていた。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20191204-00000025-sanspo-ent

デビューのときに躓いてしまい、その後も相当の苦労を続けたようだ。
See also


週刊文春編集部「勝新太郎中村玉緒の長男・鴈龍さんが55歳で急死していた」https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20191203-00016714-bunshun-ent

Czech citizenship restored

AFP=時事の記事;


チェコ、仏への亡命作家ミラン・クンデラ氏に市民権授与
12/3(火) 22:22配信AFP=時事


【AFP=時事】共産主義政権下の旧チェコスロバキア出身で、1970年代にフランスへ亡命した小説家ミラン・クンデラ(Milan Kundera)氏(90)*1が、亡命後に剥奪されていたチェコの市民権を改めて獲得した。チェコ外務省が3日、発表した。

 同省報道官はAFPに対し、クンデラ氏と妻のベラ(Vera Kundera)さんは先月28日、駐仏チェコ大使から正式書類を受理したと明かした。

 同大使は日刊紙プラーボ(Pravo)の取材に対し「夫妻は心から喜んでいた。人生が変わる瞬間ではないとは知りながらも、自分たちにとって重要な象徴的意味を確かに感じていたと思う」と話した。

 クンデラ氏は1975年に母国を離れフランスに亡命。1981年にフランスの市民権を取得していた。

 クンデラ氏がチェコを訪れるのはまれ。近年同氏とチェコとの関係が最も大きな話題になったのは、同氏が共産政権時代に警察の密告者だったという疑惑を、2008年にチェコの雑誌が報じた際だった。この疑惑について同氏は「純然たるうそ」だと否定していた。

 同氏の代表作には、1967年の「冗談(The Joke)」、1984年の「存在の耐えられない軽さ(The Unbearable Lightness of Being)」、2013年の「無意味の祝祭(The Festival of Insignificance)」などがある。【翻訳編集】 AFPBB News
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20191203-00000036-jij_afp-int

存在の耐えられない軽さ (集英社文庫)

存在の耐えられない軽さ (集英社文庫)

See also


Laurel Wamsley “Milan Kundera's Czech Citizenship Is Restored After 40 Years” https://www.npr.org/2019/12/03/784473689/milan-kunderas-czech-citizenship-is-restored-after-40-years
Sian Cain “Milan Kundera's Czech citizenship restored after 40 years” https://www.theguardian.com/books/2019/dec/03/milan-kundera-czech-citizenship-restored-unbearable-lightness-of-being


チェコ語の記事は読めない;


Jan Rovenský “Milan Kundera má po 40 letech opět české občanství” https://www.novinky.cz/domaci/clanek/milan-kundera-ma-po-40-letech-opet-ceske-obcanstvi-40305688

As a witness

ヘヴン (講談社文庫)

ヘヴン (講談社文庫)

川上未映子*1『ヘヴン』から。

「ねえ、神様っていると思う?」
ずいぶん時間がたってから、コジマが小さな声できいた。
「神様?」僕はききかえした。「神様って、どんな?」
「どんなでも。ぜんぶのことをわかってる神様。ぜんぶのことをちゃんとわかってる神様よ。見せかけや嘘や悪をちゃんと見抜いて、ちゃんとわたちのことをわかってくれている神様のことよ」
「コジマは」僕はあいまいな声をだした。
「いると思うの?」
「だって」とコジマは僕を見ないで言った。
「それが神様でなくてもいいけれど、そういう神様みたいな存在がなければ、色々なことの意味がわたしにはわからなすぎるもの。お金のことだってそうだよ。お父さんが自分のためじゃなくて家族のためにどれだけ一生懸命に働いても、けっきょくひとりぼっちになってしまって、贅沢を望んでいるわけでもないのに、新しい靴も買えないような生活をしなくちゃいけなくて、そこから逃げるようにしているしていなくなったわたしたちだけがこんな生活をして、どうしてこんな馬鹿みたいなことが起こってしまうのか、わたしには理解できないもの。そんななにもかもをぜんぶ見てくれている神様がちゃんといて、最後にはちゃんと、苦しかったこととか乗り越えてきたものが、ちゃんと理解されるときが来るんじゃないかって、……そう思ってるの」
僕はなんと答えていいのかわからなかった。
「その最後っていうのは、生きてるあいだのこと? それとも、死んだあとのことなの?」
コジマは顔にかかった髪の毛を指でつまんでよけながら、ひとつひとつの発音を確かめるようにして静かな声で言った。
「……生きてるあいだに色々なことの意味がわかることもあるだろうし、……死んでから、ああこうだったんだなって、わかることもあると思うの。……それに、いつなのかってことはあまり重要じゃなくて、大事なのは、こんなふうな苦しみや悲しみにはかならず意味があるってことなのよ」
コジマは言い終えるとしばらく黙ったきりになってしまい、僕もそれにあわせてしばらくのあいだじっと黙っていた。汗があふれ、僕は背中にはりついたシャツをつまんでうかせ、風をつくってなかに入れた。(pp.117-119)
悪人を懲らしめたり自分に利益をもたらしたり不幸を遠ざけてくれるのではなく、自分が遭遇する意味不明で理解困難な出来事を全て見ていてくれる存在としての「神」。そういう存在としての「神」を信じることによって安心立命を得る人にはちょくちょく出会う。ここで「コジマ」は全てを「見てくれている」「神様」が最終的に全ての「意味」を解き明かしてくれることを期待している。「意味」を解き明かすためには、「神様」は全てを見て、記憶しなければならない。「神様」が忘却してしまえば全ての「意味」を解釈することもできなくなる。見て・記憶する証人としての神。イェホヴァの証人ならぬイェホヴァは証人。
川上さんの小説及び「コジマ」の思考から少し離れるけれど、何故悪人も退治せず災難も防いでくれない、或る意味では無力な「神」を、少なからぬ人々が信じるのか。この世で私に対して起こる様々な出来事が私の主観に還元され得ないリアルなこととして存立するためには何が必要なのか。先ず考えられるのは、私ではない他者の証言だろう。私ではない他者がその出来事を目撃し、たしかに起こったと証言すれば、その出来事を私の主観的な思い込み(や妄想や幻想)に還元することはできなくなる。しかし、他方で(死すべき存在である)生身の証人は如何にも弱い存在である。買収されたり恫喝されたりすれば証言を撤回してしまうかも知れないし、証言せぬよう殺されてしまうかも知れない。身体から離れた証言も、シュレッダーにかけられたり内容が改竄されてしまう可能性がある。そうなれば、私が被った不幸や災難も、意味に辿り着く以前に事実性の準位で否定されてしまう! これでは生きる気も起きないし、死んでも死にきれないということになるだろう。そこで、不可視で不死の証人としての〈神〉が要請されるというのは納得できる。
よしもとばななの「ともちゃんの幸せ」という短篇で提示されていた「神」も、やはりこのような証人としての神だった;

「どうして私が? どうして私だけにこんなことが?」という身を裂かるような疑問を、今日も世界中で大勢の人が発している。そう、神様は何もしてくれない。ともちゃんのお父さんの目を覚まさせることもできなかったし、ともちゃんがレイプされているのを天からの雷かなにかで止めてくれることもなかったし、ともちゃんがひとりぼっちで病院の庭で泣いているのに、突然現れて肩を抱いてくれることもなかった。
三沢さんとともちゃんがうまくいくとも限らない。あるいは北海道に一緒に行くかもしれないが、ともちゃんの貧乳や乳首の黒さを見て三沢さんががっかりするかもしれないし、ともちゃんの持つ得体のしれない悟りの雰囲気が、彼をひかせるかもしれない。あるいは、その神秘にどこまでもひきつけられて、ふたりは結婚するかもしれない。結婚したって、ともちゃんがずっと幸せとは限らない。三沢さんもいつか、お父さんのように若い女と逃げてしまうかもしれない。
いずれにしても神様は何もしてくれやしない。
でも、それは神と呼ぶにはあまりにもちっぽけな力しか持たないまなざしが、いつでもともちゃんを見ていた。熱い情も涙も応援もなかったが、ただ透明に、ともちゃんを見て、ともちゃんが何か大切なものをこつこつと貯金していくのをじっと見ていた。
お父さんが秘書にひかれていくのを見て、とてもとても傷つき、夜中に何回も寝返りをうったともちゃんの胸の痛みを、丸く縮こまった背中を。小さいときには一緒に遊んだ場所で、幼なじみの欲望に打ちのめされたともちゃんの感じていた、固く嬉しくない地面の感触を、そのあとひとりで歩いて帰るともちゃんのぼうっとした悲しい顔を。
そして、お母さんが死んだとき、最高に孤独な夜の闇の中でさえ、ともちゃんは何かに抱かれていた。ベルベットのような夜の輝き、柔らかく吹いていく風の感触、星のまたたき、虫の声、そういったものに。
ともちゃんは、深いところでそれを知っていた。だから、ともちゃんはいつでも、ひとりぼっちではなかった。(pp.177-179)*2
デッドエンドの思い出 (文春文庫)

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