「詩的な文章なんてどこにあるのだろう」(湯川豊)

湯川豊*1「核心をつくるユーモア」『毎日新聞』2019年12月8日


田村隆一*2『詩人の旅 増補新版』の書評。
曰く、


『詩人の旅』というタイトルだけど、十二篇の旅行記を一読して、私的な文章なんてどこにあるのだろう、と思ってしまう。話し言葉による、にぎやかな饒舌、ざっかけない言葉遣いの連続。どの旅にも金色のウイスキーがいつもお供みたいにつきまとっていて、酔いどれの足どりが読み手をどこに連れていくのかわからない、その呼吸が詩的なのか。
と思ううちに軽やかな旅の一篇が終わると、うーん、これはやっぱ名文というしかないか、と思いなおし、もう一度読み返したくなる。これは稀有な読書体験といっていいだろう。
また、川本三郎*3が礒崎純一『龍彦親王航海記 澁澤龍彦伝』をレヴューしている(「引用で紡がれた精神の貴族の魅力」)。最初の部分を書き写してみる;

澁澤龍彦*4はほとんど奇跡である。歿後三十年以上になるが、いまだに著作や関連書が出版され続けている。若い読者も増えている。作家以外でこれほど人気が持続している書き手は少ない。
その澁澤龍彦のはじめての伝記。著者は編集者として永遠の少年のような碩学、まさに龍彦親王にその晩年、親しく接した。そこからこの重厚にして明晰な大著が生まれた。
文学者の伝記は難しい。作品と実生活の両面を抑えなければならない。著者はそのために作品だけでなく関係者によって書かれた膨大な澁澤論を読み込み、それを適切に引用することによって、この精神の貴族の魅力を語ってゆく。いわば引用による伝記で、引用はまさに澁澤文学のあり方そのものだった。

*1:See also https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20130325/1364141796 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20130406/1365204988 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20130408/1365430783 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20180122/1516594067

*2:See also https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20050819 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20090706/1246906032 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/2019/02/22/134544 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/2019/05/29/124221

*3:See also http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20060418/1145330536 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20090805/1249485120 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20110206/1296966968 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20110206/1296966968 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20110924/1316802079 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20120103/1325553840 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20120105/1325695215 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20120403/1333385004 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20120702/1341247335 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20130311/1362963510 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20140712/1405130782 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20161011/1476126047

*4:Mentioned in http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20060502/1146600642 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20070416/1176690168 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20090314/1237060417 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20090717/1247839211 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20090717/1247839211 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20090717/1247839211 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20120207/1328623686 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20130225/1361799450 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20130806/1375761335 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20140616/1402937840 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20140725/1406262846 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20150317/1426623462 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20160201/1454298594 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20170226/1488083166 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20170321/1490107207 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/2019/03/26/004056 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/2019/04/11/004641 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/2019/04/12/141252 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/2019/06/05/110145 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/2019/10/21/092748

「いだてんを見るまで」

大河ドラマ『いだてん』*1を巡って。


勿論、嘉納治五郎は知っていたけれど、それはあくまでも柔道の人として。金栗四三田畑政治は知らなかった(汗)。
また、『女性自身』の記事;

「いだてん」編集シーンが放送…安藤サクラの名演に絶賛の声
12/9(月) 19:06配信女性自身


12月8日、大河ドラマ『いだてん~東京オリムピック噺~』(NHK総合)の46話が放送された。女子バレーボール日本代表チームの主将・河西昌枝を演じる安藤サクラ(33)の熱演ぶりに絶賛の声が上がっている。

《先週と今日の放送では、安藤さんの演技で涙が出ました》
安藤サクラの鬼気迫る佇まい完全にスポーツ選手のそれ》
《監督に思いをぶつけるシーンの安藤サクラにまた泣かされた。 このエピソード自体に何の思い入れもないし、台詞が素晴らしいわけでもないのに、何度見ても自然と涙が出る。演技だけで人を泣かせることができるってすごい》

オリンピックまであと3カ月と間近に迫ってきた中、父が危篤のため山梨県に帰省したはずの河西(安藤)は練習場に突如戻ってきた。大松博文監督(徳井義実)から「帰れ、お父さんの側にいろ!」とボールを投げつけられるも、「バレーボールを続けます! でも辞めたくなったらオリンピックの前日でも辞めます!」と涙を流しながら宣言。その4日後、河西の父は亡くなったというあらすじだ。

12月1日の放送回でも安藤は、眉間にシワを寄せながら「私たちは青春を犠牲になんかしていない!これ(バレーボール)が青春だから!」と叫ぶ熱演ぶりや回転レシーブを披露。

そんな安藤は8日の放送開始前に、インスタグラムを更新。レシーブポーズで“いだてん”風にこうつづった。

《今夜はいだてんじゃんねェ 私生活でアツいスポーツ経験がほぼ皆無な私はこんなテーピングにテンション上がってしまう。なんじゃこれイケてるじゃんねぇ! と、記念撮影してしまうじゃんねェ》
《回転レシーブのとき肩から落ちて傷めないようにぐるぐるまきに保護してました。アツい夏だったなぁ! さて、いだてん最終回まであと2話、ぜひみてください》

いっぽう、安藤と共演した徳井義実(44)は今ドラマ放送期間中に合計1億3,800万円の所得隠し及び申告漏れが発覚。そのため、徳井は10月26日に芸能活動の休止を発表。10月1日に本ドラマの全編収録が終了していたため、徳井の出演シーンは撮り直しせずに可能な限り編集した上での放送となった。

当初は当該シーンに懸念の声もあったが、安藤の熱演ぶりが一役買ったようだ――。
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20191209-00010012-jisin-ent

『デイリースポーツ』の記事;

いだてん、コンゴ2人参加にネット「ここで繋がった」…金栗&三島のストックホルム重ね涙
12/9(月) 13:57配信デイリースポーツ


 8日にNHKで放送された大河ドラマ「いだてん~東京オリムピック噺」で、コンゴから2人の陸上選手が東京五輪に参加するシーンが描かれた。これにドラマ序盤に描かれた金栗四三三島弥彦ストックホルム五輪を重ねるファンからの感激コメントが相次いだ。

 8日の「いだてん」では、コンゴからたった2人の陸上選手が東京五輪出場のために来日するシーンが描かれた。コンゴはギリギリに参加を表明し、たった2人で参加。入村式では国家を歌い、食堂では「勉強をしてきた」と、箸で食事をする。

 これは「いだてん」序盤で、金栗と三島弥彦がたった2人でストックホルム五輪に出場した際のエピソードと重なる。金栗も慣れないテーブルマナーを必死に学び、たった2人でストックホルムに乗り込んだ。いだてんファンはそのシーンを重ね「四三さんが半泣きになるほど苦労したテーブルマナー」「コンゴの2人に三島天狗と金栗四三が見事に重なり合って泣くしかない」「すべてを見続けてきてよかったわ。コンゴの2人の選手、いだてんと三島天狗の2人 ここで繋がった」など感激の声が上がった。

 また、開会式で上空に五輪マークを描くと豪語したブルーインパルス軍団が、開会式当日が雨予報なのを知りバー・ローズで「うぇーい」と飲んだくれるシーンでは、三島弥彦の天狗倶楽部が打ち上げで飲んだくれるシーンと重ねる人が多く、「天狗倶楽部のウエーイ枠はブルーインパルスに引き継がれた」の声も上がっていた。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20191209-00000088-dal-ent

共に生き、共に死んだ人たち

承前*1

中村哲さん共々安らかに!


「猫神さま」(メモ)

河北新報』の記事;


東北最古の「猫神さま」泥の中から発見 台風19号で被害の丸森


 台風19号*1で甚大な被害を受けた宮城県丸森町に伝わる東北最古の「猫神さま」の石碑が、現地に残っていた。土砂にのまれたと思われていたが、研究者が現存を確認した。猫神さまは養蚕の守り神とされ、町内には日本一多くの石碑と石像があり、町おこしに一役買っている。その象徴的な碑が失われずに済み、関係者はほっとしている。

 東北最古の石碑が伝わるのは、土砂災害が発生した五福谷川沿いの中島地区・中島天神社境内。江戸時代後期の文化7(1810)年の年号と「猫神」の文字が刻まれている。丸まった猫の姿を彫った安政5(1858)年の石像もある。
 氏子によると、天神社の拝殿は約1.8メートル床上浸水し、泥が入った。大量の流木は鳥居で食い止められ、直撃は避けられたが、境内にあった小さなお堂は約300メートル流された。
 猫神さまを調査している同県村田町歴史みらい館専門員の石黒伸一朗さん(61)が台風襲来直後に2度現地を訪れたが、土砂で手掛かりがつかめなかった。10月24日に3度目に訪れたとき、泥に埋まった石碑の上部がわずかに出ているのを見つけた。石像は泥の中にあおむけに倒れていた。
 阿武隈川流域は全国有数の養蚕地帯で、町も県内最大の養蚕地だった。蚕をかじるネズミを駆除する猫が大切にされ、石碑と石像は計81基を数える。近年、町の観光名所の斎理屋敷で企画展が開かれたり、菓子店が猫の足跡模様の付いた生どら焼きを商品化したりして人気を集めている。
 石黒さんは「学術的に価値の高い民俗資料が失われなくて良かった」と話す。町文化財友の会副会長の鈴木悦郎さん(72)も「祖先の暮らし、郷土の産業を伝える大切な資源。文化財の保存活用にいっそう目を向けたい」と喜ぶ。
 神社は12月1日、氏子とボランティアの手で泥がかき出された。氏子総代の宍戸克美さん(64)は「石碑は丸森らしい観光資源として、見物客が訪れていた。地域は犠牲者も出て大きな被害を受けたが、マイナスイメージを払拭(ふっしょく)して発信したい」と話した。


関連ページ:宮城社会
2019年12月08日日曜日
https://www.kahoku.co.jp/tohokunews/201912/20191209_13023.html

丸森町の「猫神」については、例えば、


「「猫碑」探訪 宮城県丸森町の養蚕文化」https://tanken.com/neko.html


も。
猫と「養蚕」が結びつくのは、蚕を食べる鼠を猫が殺すことため。養蚕の守護神としての「猫神」は全国に拡がっているようだ;


福田博通*2「養蚕守護(ネズミ除け)」http://shinshizo.com/2017/02/%E9%A4%8A%E8%9A%95%E5%AE%88%E8%AD%B7-%E3%83%8D%E3%82%BA%E3%83%9F%E9%99%A4%E3%81%91-2/


木島神社(京都府京丹後市峰山町字泉)
熊田坂・温泉神社(栃木県那須塩原市黒磯・赤坂)
安宮神社(長野県東筑摩郡築北村坂井修那羅山)
高龗神社(栃木県河内郡上河内町西の内)
霊諍山(長野県更埴市八幡)
八海山尊神社(新潟県南魚沼市大崎)
咲前神社(群馬県安中市鷺宮


「猫 ~ ネ コ  養蚕、蚕神、保食命ウケモチノミコト)の猫」http://www9.plala.or.jp/sinsi/07sinsi/fukuda/neko/neko-1.html


木島神社(京都府京丹後市峰山町字泉)
安宮神社(長野県東筑摩郡坂井村)
岩根神社(埼玉県秩父郡長瀞町井戸)
熊田坂・温泉神社(栃木県那須塩原市黒磯・赤坂)
安宮神社(長野県東筑摩郡築北村坂井修那羅山)


clubey「福島県の猫神・日吉神社の猫神」http://nekonokamisama.blog3.fc2.com/blog-entry-59.html


日吉神社福島県伊達市山舟生字大小)


ところで、鹿児島市吉野町の「仙巌園」内の「猫神神社」は養蚕とは無関係;


大崎浩義*3「猫が神様になった「猫神神社」 ルーツは16世紀末の2匹の猫」https://sippo.asahi.com/article/12151600

映画テン年代ベストテン

承前*1
washburn1975.hatenablog.com


まだ締切じゃないよね?

順不同です。一律5点。

賈樟柯『山河ノスタルジー

山河ノスタルジア [DVD]

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高畑勲かぐや姫の物語*2
かぐや姫の物語 [DVD]

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荻上直子『彼らが本気で編むときは、』
彼らが本気で編むときは、 [DVD]

彼らが本気で編むときは、 [DVD]

是枝裕和海街diary*3
海街diary DVDスタンダード・エディション

海街diary DVDスタンダード・エディション

Gareth Edwards『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』*4
Alfonso Cuarón『ROMA/ローマ』*5
Steven Spielbergペンタゴン・ペーパーズ』新海誠言の葉の庭*6
劇場アニメーション『言の葉の庭』 DVD

劇場アニメーション『言の葉の庭』 DVD

  • 出版社/メーカー: 東宝
  • 発売日: 2013/06/21
  • メディア: DVD
片渕須直この世界の片隅に*7
この世界の片隅に [DVD]

この世界の片隅に [DVD]

李玉『観音山』*8

『悲しみの秘儀』など

本を買った。

若松英輔『悲しみの秘儀』文春文庫、2019

悲しみの秘義 (文春文庫)

悲しみの秘義 (文春文庫)

今村夏子『あひる』角川文庫、2019
あひる (角川文庫)

あひる (角川文庫)

松尾恒一『日本の民俗宗教』ちくま新書、2019
日本の民俗宗教 (ちくま新書)

日本の民俗宗教 (ちくま新書)

村上春樹川上未映子『みみずくは黄昏に飛びたつ』新潮文庫、2019

広田照幸『教育不信と教育依存の時代』紀伊國屋書店、2005

教育不信と教育依存の時代

教育不信と教育依存の時代

天童睦子編『育児戦略の社会学 育児雑誌の変容と再生産』世界思想社、2004
育児戦略の社会学―育児雑誌の変容と再生産

育児戦略の社会学―育児雑誌の変容と再生産

関修、志田哲之編『挑発するセクシュアリティ 法・社会・思想へのアプローチ』新泉社、2009
挑発するセクシュアリティ―法・社会・思想へのアプローチ

挑発するセクシュアリティ―法・社会・思想へのアプローチ

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 新泉社
  • 発売日: 2009/02/01
  • メディア: 単行本

Death of Big Bird

NHKの報道;


セサミストリートで“ビッグバード”役50年 スピニーさん死去
2019年12月9日 8時07分


アメリカの子ども向け教育番組「セサミストリート*1で、番組開始からおよそ50年にわたって人気キャラクターの「ビッグバード*2を演じてきたキャロル・スピニーさん*3が亡くなりました。85歳でした。

これは、子ども向けの教育番組「セサミストリート」を制作するアメリカのNPO、セサミワークショップ*4ツイッターなどを通じて明らかにしました*5

1933年にアメリカ東部、マサチューセッツ州で生まれたスピニーさんは、空軍で働いたあと、1950年代からプロの人形使いとして活躍しました。

そして、1969年からアメリカで放送が始まった「セサミストリート」で、長身の黄色い鳥をモチーフにした人気キャラクター「ビッグバード」を、番組開始からおよそ50年にわたって演じました。

ビッグバード」をはじめとした「セサミストリート」のキャラクターたちのコミカルなやり取りは世界中で愛され、番組は150以上の国や地域で放送されています。

スピニーさんは、体が思うように動かなくなったためとして4年前から声だけの出演となり、去年、引退を表明していましたが、今月8日、コネティカット州の自宅で亡くなったということです。

セサミワークショップはツイッターに「スピニーさんの愛情のこもった世界観はセサミストリートを形づくる助けとなりました。彼の愛するキャラクターを未来に引き継いでいくことを誇りに思います」という追悼のメッセージを発表しました。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20191209/k10012207401000.html

See also


“Caroll Spinney: Sesame Street's Big Bird puppeteer dies” https://www.bbc.com/news/entertainment-arts-50705508
Martin Pengelly “Caroll Spinney, who played Big Bird on Sesame Street, dies aged 85” https://www.theguardian.com/tv-and-radio/2019/dec/08/carroll-spinney-dies-big-bird-sesame-street
Caroll Spinney “Experience: I am Big Bird” https://www.theguardian.com/lifeandstyle/2015/apr/24/experience-i-am-big-bird-sesame-street