石塚就一「『ズートピア』が、『ローグ・ワン』が、ディズニーランドがより深く見えてくる! ダークサイドに切り込むディズニー評論」http://news.livedoor.com/article/detail/12908101/
高橋ヨシキ『暗黒ディズニー入門』(コアマガジン)という本の紹介。
「数多くの映画評論も残している」という表現は不味いだろう。高橋さんてもう死んでるの? それはともかくとして「魔法への信頼」というのは〈技術(テクノロジー)への信頼〉と言い換えることができるだろう*2。というか、近代科学に基礎づけられ、現実的に効果のある「魔法」をテクノロジーと呼ぶのではないか。ということは、ディズニーは近代社会の主流の価値観に寄り添っていることになる。
著者の高橋ヨシキ氏は映画秘宝誌や映画ポスターで知られるデザイナーであり、数多くの映画評論も残している。しかし、彼の仕事の多くがバイオレンス色の強い作品を対象としてきたため、ディズニーとの組み合わせを意外に思う人もいるだろう。著者がディズニー作品に興味を持つきっかけとなったのは、幼少期に映画館で見た『ダンボ』と『メリー・ポピンズ』*1だった。特に、魔法使いが人間社会で大活躍する『メリー・ポピンズ』からは「魔術への信頼」を感じとったという。そして、この「魔術への信頼」こそがディズニー世界の根底にあるのではないかと考えるようになった。ありとあらゆる手段を使って幻想を現実化するのが、ウォルト・ディズニーの時代から受け継がれているディズニーの特徴だと主張するのである。
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現実社会における「魔術への信頼」は、まず映画技術という形で現れる。ディズニーの過去作品をひもとくことで、その革新性が明らかになっていく。アニメーションのキャラクターをまともな「俳優」のように見せた『白雪姫』。マット・ペインティングを駆使しながら、絵画の世界と実写の世界の境界線を消し去った『メリー・ポピンズ』。これらの技術の発展型は、現在のディズニー作品にも受け継がれている。主人公の少年以外のほぼ全てがCGで描かれた『ジャングル・ブック』には、それでも「絵画的な絵作り」の名残があると著者は見抜く。また、『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』*3で、若かりしレイア姫の姿をCGで蘇らせたこともまた、(ファンへの道義的な問題はさておき)「幻想の現実化」といって差し支えないだろう。
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〈闇〉の排除というのも近代と平仄が合う。ただ、それを補完するかのように陰謀理論めいた都市伝説が増殖するということもある。
ディズニーランドもまた、ウォルトが信じた「魔術」の結晶である。本書ではディズニーランド登場以前の遊園地とディズニーランドを徹底比較し、その違いを解明していく。かつて、遊園地は若い男女をターゲットとした場所であり、暗闇を乗り物で進んでいくライドは、隠れてキスできるアトラクションとして人気だった。そんな破廉恥ともいえる従来の遊園地を健全に「ディズニー化」することで、家族連れでも安心して楽しめる「夢の王国」に変えたのがディズニーランドだったのである。
*1:Mentioned in http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20160619/1466266217
*2:科学への信頼ではないことに注意。
*3:Mentioned in http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20170115/1484499361