挟まれたクーリー - Living, Loving, Thinking, Again

船津衛「認識する私」（in 井上俊、船津衛編『自己と他者の社会学』、pp.3-20）の第１節「「私」を認識する」の「鏡に映った自我」という項（pp.5-6）では、クーリー*1の「鏡に映った自我（looking-glass self）」という概念が解説されている*2。
さて、

鏡の前で自分の姿をそれと認識できるようになるのが、いわゆる「鏡像段階」である。フランスの精神分析学者のJ. ラカン *3（1901-81）によれば、幼児は生後６カ月から18カ月に「鏡像段階」に達し、「他者との同一化」と「言語活動」を通じて、鏡に映る像を自分のものとして認識できる能力を獲得するようになる（ラカン 1949=1972*4）。（p.6）

突然、年代も国境も分野も飛び越えて、ラカンが言及される。しかし、次のパラグラフからは、まるでラカンなんていなかったかのように、話はクーリーに戻る。何か変な感じ。
ところで、マジな話、クーリーとラカンを比較した論文とかあるのだろうか？

*1:See also https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20050619 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20091130/1259555364

*2:selfは「自我」ではなく、「自己」と訳すべきだろう。「自我」と「自己」の区別こそ、「自己と他者の社会学」にとっては重要なことではないだろうか。Cf. 酒井潔『自我の哲学史』。