黄泉帰る？ - Living, Loving, Thinking, Again

暫く前にツィッターのTLに「竹内芳郎」という人名*1が突如登場するということがあった。
小林成彬氏曰く、

『竹内芳郎著作集　第二巻』（閏月社）、一足先に落手。本当に近いうちに書店でも並ぶはず！

本巻から編集委員を担当します。

決して安い本ではありませんので是非とも図書館にリクエストをしていただけたら嬉しいです！！ pic.twitter.com/5pmYT3Kgwm
— 緑雨 (@ryoku28) 2023年8月5日

「戦争責任、天皇制、国家、民主主義など、戦後思想の課題から、やがて言語論、文化理論に切り込んでいった竹内芳郎。その根底的な思索に接する喜びが、この著作集を通して、新たな読者に広く分たれることを願っている。」海老坂武 pic.twitter.com/dywULkSqXt
— 緑雨 (@ryoku28) 2023年8月5日

永井均氏*2；

竹内芳郎の著作集が出ているんだ！　時代の波の中で吉本隆明と廣松渉と浅田彰に、よってたかって消されてしまった気の毒な方といった印象があるが、前に触れた滝浦静雄と同様、よい本を書いていた。特に『サルトル哲学序説』。サルトルの『存在と無』は読まなくても、これはぜひ読んでほしいぞ！
— 永井均 (@hitoshinagai1) 2023年10月31日

まあ、はっきりいって、『存在と無』を独力でいきなり読むのは不可能といえる。『サルトル哲学序説』なら、いきなり独力で読める。そして、『存在と無』を読む際の助けにもなる。しかも、『存在と無』を独力で読む際の助けになる本もまた、これしかないと思う。
— 永井均 (@hitoshinagai1) 2023年10月31日

私はハイデガーの『存在と時間』よりもサルトルの『存在と無』のほうが面白いと思うが、前者の解説書の類はやたらとあるのに後者のはほぼないのは、大雑把な通俗的解説が可能な本と細部まで議論を辿らないと面白くない本との違いではないか。『自我の超越』と『イマジネール』も一緒に読むとなおよい。
— 永井均 (@hitoshinagai1) 2023年11月1日

『自我の超越』は大学二年生の時に読んだ。これもまた私が〈私〉について考察する際に(反面教師として)利用したものの一つ(懐かしい)。これには竹内芳郎訳があってそれしかないと思うが、chute d'eauが「水の落下」と訳されている(正しくは「滝」であろう)以外には誤訳がない(と思う)。
— 永井均 (@hitoshinagai1) 2023年11月5日

「時代の波の中で吉本隆明と廣松渉と浅田彰に、よってたかって消されてしまった気の毒な方」ということだけど、浅田彰氏*3が（たしか）山口昌男は竹内芳郎よりも面白いという或る意味で当たり前のことを言っているのを読んだ記憶があけれど、出典は思い出せない。また、吉本隆明や廣松渉が竹内芳郎について何か言っていたのかはわからない。ただ、丸山圭三郎 *4との関係はかなり険悪だったということは間接的に聞いたことがある。

白澤社*5「鈴木道彦・海老坂武監修　池上聡一編『竹内芳郎　その思想と時代』（閏月社）」https://hakutakusha.hatenablog.com/entry/2023/11/22/150120

池上聡一編『竹内芳郎　その思想と時代』という論集*6が出たんだね！
さて、このエントリーでは、竹内芳郎を「サルトル没後、論壇にあいまいな日本的ポストモダンが広がりつつあったムードに抗して、一人サルトルに依拠して果敢な論戦を挑んだ孤高の思想家」と形容しているのだけど、果たして「孤高」だったのか。思うのだけど、（少なくとも）『文化の理論のために』の竹内は1970年代以降の思想家としての特徴的な前提に立っており、その前提は永井均氏が竹内殺しの下手人として名指ししていた人々の中の一部には確実に共有されていたものなのだった。