寧ろ暴力装置 - Living, Loving, Thinking, Again

たぬき*1「『燃えよ剣』に描かれたテロリストの美学」https://campingcarboy.hatenablog.com/entry/2019/04/19/002021

「れいわ新選組」という政治グループを立ち上げた人もいるのだけれど*2。
司馬遼太郎の『燃えよ剣』*3を巡って。

　司馬遼太郎は、『燃えよ剣』ではっきりと新選組がテロ組織であることを謳っている。
　　彼らは、「勤王派」の人間であればみさかいなく斬りまくり、仲間に対しては、粛正という恐怖政治で組織を鍛え上げた。
　　その戦闘方法や粛正方法も、相手の油断に乗じた不意打ちや騙し討ちが多く、しかも、その計画は狡知を搾り出して周到に練られたものばかり。
　そういった意味で、今風にいえば、彼らは高度に訓練された「テロ組織」だった。

また、新撰組、特に近藤勇や土方の農民性や「武士」に対するアナクロニックな憧れというのもその通りだと思う。ただ、近藤や土方はテロリストだったのかと問われれば、頭を軽く横に振らざるを得ない。勿論、terrorの字義的な意味に遡って、「恐怖（terror）」によって他者を縛り付け・支配するということであれば、新撰組は「テロ組織」であり、近藤や土方はテロリストだったといえる。しかし、一般に謂われるところのテロとかテロリストとはちょっとずれている。寧ろ新撰組が目の敵にしていた所謂志士たちの方がテロリストと呼ばれるのに相応しい。特に吉田松陰の弟子ども*4。「テロ」というのは武器や爆弾で書かれた鯵ビラというか、（第三者から見れば）トンデモ的・妄想的であったとしても、何らかの〈理想〉の名の下で行使される暴力だと言えるだろう。昔の毛沢東主義者にしても、最近流行りのジハード主義者や極右にしても。「寡黙」な新撰組の暴力は寧ろ「暴力装置」*5、それも純化された「暴力装置」ということを体現しているのではないかと思った。