吉野朝(メモ)

新葉和歌集』(岩波文庫*1の「解題」にて、岩佐正氏曰く、


吉野朝は、時代的に見ると、新興武士階級が鎌倉百七十年の準備時代を経て、文学上政治上一段の進出を試みようとした時代であり、文学上では、平安朝の流をくむ公卿中心の文学に東国的な要素を注入し、将来の文学の展開の一転換期を作つたと言へる。しかも吉野朝は、建国精神即ち日本精神の展開上、やがて来たらんとする水戸学の勃興・明治維新の大業完成への伏線をなす時代でもあつた。新葉和歌集は、従来暗黒時代と簡単に称せられた、動乱のただ中に生れ出た歌集である。親房の神皇正統記は文の新葉和歌集であり、新葉和歌集は歌の神皇正統記である。(p.3)
引用にあたって、漢字は日本式簡体字に改めた。「吉野朝」すなわち南北朝時代と「水戸学」や「明治維新」との繋がりについては、例えば小島毅氏の『靖国史観』とかを思い出すが、神武紀元2600年に書かれたとはいっても、(無知を晒すようで恐縮だが)これ程のストレートな言説は見たことがなかった。
新葉和歌集 (岩波文庫)

新葉和歌集 (岩波文庫)

靖国史観―幕末維新という深淵 (ちくま新書)

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