「負の循環」(宮本太郎)

宮本太郎*1「利便追求が生む負の循環」『毎日新聞』2019年6月12日


「商品はいつでも選び放題だが、人生の選択肢は驚くほど限らている」ことへの「違和感」。


この違和感の根幹には、消費の利便性が生活全般の自由を高めるのではなく、むしろその犠牲のもとに成立し、不自由さを補完してしまっている現実がある。より便利で安い消費のために、多くの人が限界に近い働き方をしている。
残業で帰宅時間が変わるから、宅配便を受け取れなくなる。低所得の非正規雇用が増えるから、家族を持つことも難しくなる。それでも宅配便は再配達され、コンビニエンスストアに行けば、いつでも安くておいしい単身者向けの総菜を買える。宅配便の再配達やコンビニの24時間営業など、消費の利便性を追求することが新たな不自由や困難を生み出し、さらに増やしてしまうという「負の循環」が起きているのである。
消費の自由は、米IT大手のGAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン・コム)などが提供する情報インフラと、至れり尽くせりの日本型サービス経済によって担保されている。だが、GAFAなどの「プラットフォーマー」(ビジネス基盤を構築。提供する事業者)が契約先の事業者を支配し、ウェブサイトの閲覧履歴などに基づく「ターゲット広告」で消費者の選好をコントロールしている面もある。

袖擦り合うも

『Jタウンネット』の記事;


「久しぶり。前世はあなたの夫でした」 男が女子高生に声かけ、三重で不審者事案
2019年6月20日 18時0分 Jタウンネット


決して笑いごとではないのだけれど、どうにもシュールに感じてしまう。世の中では、そんな「不審者事案」がたびたび浮上する。

いまインターネット上で注目を集めているのは、2019年6月16日、三重県伊勢市に現れた男の声かけ事案だ。いったい、どんな不審者だったのだろうか。

三重県警がウェブサイトで公開している不審者情報から、その詳細を見ていこう。


「むちゃくちゃ怖い」
事案が起きたのは、夕方16時ごろ。路上を歩いていた女子高校生に、20代くらいの男が、次のように声をかけた。

「久しぶり。前世はあなたの夫でした」

何か、ドラマやアニメを見た直後だったのだろうか。妙に芝居がかった言動である。

まったく笑い事ではないのだが、こうした発言だけを見ると、どこかシュールさを感じてしまう。もちろん、疑いの余地がないくらい不審ではあるが。

男は短い黒髪で、服装はTシャツに水色っぽい長ズボン姿だった。現場の近くにはいくつか高校があるので、その生徒を狙って声かけをしたのだろうか。

こうした男の言動に、ツイッターネット掲示板ではこんな反応が。

「前世の夫?いえ、迷うこと無き変質者です」
「実際言われたらむちゃくちゃ怖い」
「世の中いろんなこと思い付く奴いるもんだな・・・」

なお、三重県警の発表文では、「怪しい人に話しかけられても相手にせず、すぐにその場を離れましょう」といった対策も添えられている。
https://news.livedoor.com/article/detail/16650823/

袖擦り合うも他生の縁という諺もあるけれどね。
こちらは千葉県市川市。屋根の上の猫ならぬ屋根の上の死体。

警察署の屋根に男性遺体 千葉県警市川署
2019.6.19 22:03社会事件・疑惑


 19日午後3時ごろ、千葉県警市川署(同県市川市鬼高)の本庁舎の2階屋根部分に、30代くらいの男性が意識がない状態で倒れているのを、同署を工事している業者が発見した。男性は搬送先の病院で死亡が確認された。同署は男性の身元の確認を急ぐとともに、死亡した経緯について詳しく調べている。

 同署によると、男性の持ち物にあった診察券の氏名が、同日午後0時半ごろに同署プレハブ棟で対応した男性の氏名と一致しているという。来署した男性は、目的の職員が別件の対応中だったため待っていたが、約10分後に「外に行く」と別の職員に声を掛けて外へ出たという。

 同署は庁舎内の防犯カメラを確認するなど、事件と事故の両面の可能性があるとみて、捜査を続けている。
https://www.sankei.com/affairs/news/190619/afr1906190095-n1.html

「義務化」はされず

塚谷裕一氏が危惧していた奴*1

毎日新聞』の記事;


ゲノム編集食品、表示義務化見送りへ
6/20(木) 17:18配信 毎日新聞


 遺伝子を効率良く改変する「ゲノム編集」の技術を使った食品を巡り、編集表示の義務化が見送られる見通しになった。消費者庁20日内閣府消費者委員会の食品表示部会(部会長=受田浩之・高知大教授)で「従来の農産物との違いを科学的に検証できず、義務違反の特定は困難」とする考えを示し、部会の委員から意見を聞いた。任意表示については検討し、8月末をめどに表示のあり方を公表する。

 消費者庁は席上、「義務表示のためには違反食品を特定し、罰則を科さなければ機能しないが、現時点では困難」などと説明。委員からは「消費者のため、任意でも情報提供の仕組みが必要」などの要望が出た。「任意表示によって『ゲノム編集でない』という表示がまん延しないような工夫が要る」という意見もあった。

 厚生労働省に対しては、ゲノム編集食品の届け出徹底を求める声が相次いだ。担当者は「事前の相談を受ける仕組みを設け、届け出を求めることを事業者に周知する」「届け出なかった事業者を公表することで一定の社会的制裁になる」と説明した。

 ゲノム編集食品を巡っては、外来遺伝子を入れる方法については遺伝子組み換え食品と同様に安全性審査の対象に含め、元々ある遺伝子を改変するだけの場合は対象外として届け出のみとする方針を、厚労省の審議会がまとめた。アレルギーなどの健康影響や成分変化などを確認して届け出るよう業者に求める。【岡礼子、阿部亮介】

 ◇ゲノム編集食品

 特定の遺伝子を切断したり、他の生物の遺伝子と置き換えたりして生物の性質を変える「ゲノム編集」の技術を使って品種改良された農畜産物や魚など。高血圧予防につながるとされる成分を多く含んだトマトなどが開発されている。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190620-00000066-mai-sctch

また、昨年12月に出された、「ゲノム編集」技術を危惧する3学会共同声明;


日本哲学会理事会、日本倫理学会理事会、日本宗教学会理事会「ゲノム編集による子どもの誕生についての声明」http://jpars.org/archives/3775  

*1:「ゲノム編集食品解禁への危惧」『毎日新聞』2019年6月6日 Mentioned in https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/2019/06/10/103326

北朝鮮とアフリカ(メモ)

「偉大なるチョソンの威光はアフリカへ!!!」http://syuturumu.hatenablog.com/entry/2019/06/20/163328


北朝鮮とアフリカを中心とする「第三世界」との関係について。それは中蘇対立の谷間から生まれた;


中国とソ連の関係が悪化し本格的な武力衝突に発展したタイミングで北朝鮮は独自の外交を方針を模索し始めました。まさに“主体”的に動いたのです。

 1969年。中国とソ連の間で国境紛争が発生した年、アフリカのマリに最初の北朝鮮イデオロギー思想である主体思想(チュチェ)思想研究グループが生まれます。その後、70年代にかけてチュチェ思想研究の組織はアジアとアフリカで増え続け70年代末には800以上の研究組織が立ち上がります。この70年代は中国にとって対米関係の修復とイデオロギーの調整のタイミングです。これもまた北朝鮮が独自の対外政策に向く大きな原因になります。


北朝鮮は中国の主導的影響力を振り切り様々なかたちで「第三世界の反米闘争」を支援していきます。ベトナムへの軍事支援、アンゴラ内戦への介入などなど。

 その過程でアフリカへの外交活動は一時期の中国をしのぐ勢いを見せました。70年代末までに北朝鮮はアフリカ諸国に1500人あまりの軍事顧問を派遣し、ほかに21のアフリカ諸国に3億ドル近くの経済援助を行いました。この成果か、ジンバブエで独立解放闘争を指導したムガベが最初に訪問したのは北朝鮮でした。

因みに、1981年に北朝鮮は人口1人当たりの米ドル換算のGNPが中国の2倍以上あったのだった*1
1980年代、北朝鮮アフガニスタン内戦を巡っては蘇聯を支持したが、インドシナ半島においては(シアヌーク*2とのコネクションのせいか)ヴェトナム、さらには蘇聯と敵対した。悪く言えば分裂している、良く言えばバランスを取っていると思った。アフリカ大陸において中蘇が確執していた場所といえば、エチオピアエリトリア*3だったけれど、愛知大ピアにおいて北朝鮮は如何に振る舞ったのか?

*1:レオン・ヴァンデルメールシュ『アジア文化圏の時代』(福鎌忠恕訳)、p.12. Mentioend in https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20111224/1324751682

アジア文化圏の時代―政治・経済・文化の新たなる担い手

アジア文化圏の時代―政治・経済・文化の新たなる担い手

*2:See https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20121016/1350347548

*3:See eg. https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20160822/1471890981

80年代の話

雨宮処凛*1「『母さんが死んだ』――27年前の餓死事件、そして更に広がる子どもの貧困。の巻」http://www.magazine9.jp/article/amamiya/12158/


2014年のテクスト。水島宏明『母さんが死んだ』*2について*3。この本は、1987年1月に札幌市で起こったシングル・マザー餓死事件についてのルポルタージュ。日本経済がバブルへ向かって駆け上がっていた頃の話。なお、札幌市では、2012年1月に、姉妹の「孤立死」事件が起きている;


雨宮処凛「札幌姉妹「孤立死」事件。の巻」http://www.magazine9.jp/karin/120523/

『アクション・カメラ術』もあった

アクション・カメラ術―盗み撮りのエロチシズム (ワニの本)

アクション・カメラ術―盗み撮りのエロチシズム (ワニの本)

馬場憲治『アクション・カメラ術』という本を見つけて、吃驚したという人がいた;


すごい本を見つけてしまった。盗撮を勧める内容は、今なら間違いなく出版できない。こんな本が堂々と売られていた昭和は戦慄の時代。女、女って書かれると、珍しい動物みたいだよね。
https://twitter.com/makiemaki50/status/1141017462055436288
以前、『写真時代』という雑誌を巡って、

(前略)まあ出版社限定でいうと、1980年代文化の表の代表が(『現代思想』の)青土社だとすると、裏の代表は(『写真時代』の)白夜書房だと言えるかも知れない。現在の白夜書房*4は遺憾ながら全然エロくない出版社であるようなのだが。『写真時代』で印象が強かったのは読者投稿の〈パンモロ写真〉。つまりはスカートの真下からの盗撮写真。たしか『ガロ』だったと思うけど、上野昂志が圧倒的に画一的な〈パンモロ写真〉をポストモダーンな御真影だとするエッセイを書いていた。『写真時代』は警察権力による弾圧を何度も蒙り、最後は〈発禁〉同然で廃刊してしまったのだが、(当時の基準でも)明白な犯罪行為だった筈の〈パンモロ写真〉がお咎めを受けたということはなかった。想像(妄想)するに、若き日の植草一秀ちぇんちぇーは『写真時代』を愛読していた筈だと思うのだが、これはやはり妄想にすぎないのだろうか。
と書いたことがあった*1。そのときは『アクション・カメラ術』のことは失念していた。『アクション・カメラ術』が『写真時代』的、〈カメラ小僧〉的な感性を技術的に下支えしていたとは言えるかも知れない。
ところで、馬場さん、石川さゆり*2と結婚した筈だけど。

鶴岡ということで

なにもかも小林秀雄に教わった (文春新書)

なにもかも小林秀雄に教わった (文春新書)

近所の図書館で木田元*1『なにもかも小林秀雄に教わった』を斜め読みしていた。山形県鶴岡のことが出てくる。鶴岡は木田先生のご母堂の郷里。そして、その前日の地震*2震度6に震えた町。また、加藤紘一*3の故郷でもある。敗戦後に木田先生が母親の実家を頼って鶴岡で暮らしていた頃は、紘一の父である加藤精三鶴岡市長だった。精三は木田先生が入学した山形県立農林専門学校の創設にも関わっていた。
木田先生は自分たちの世代は「 なにもかも小林秀雄に教わった」世代だという。その後、


なにもかも吉本隆明に教わった世代
なにもかも山口昌男に教わった世代
なにもかも蓮實重彦に教わった世代


というのは思いつくのだけれど*4、その後は思いつかない。
また、池澤夏樹の講演『文明の渚』を読んだ。

文明の渚 (岩波ブックレット)

文明の渚 (岩波ブックレット)

*1:See eg. http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9C%A8%E7%94%B0%E5%85%83 Mentioned in http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20061107/1162865739 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20070530/1180549562 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20090630/1246337552 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20090731/1249061946 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20091217/1261049929 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20101105/1288980247 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20140614/1402765013 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20140618/1403024445 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20141107/1415288740 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20180206/1517893783 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20180304/1520142007 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20180530/1527670001 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20180605/1528212943 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20180608/1528423805 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20180618/1529290063 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20180623/1529719506 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20180709/1531104306

*2:See https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/2019/06/19/093925

*3:See also http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20060815/1155648824 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20060816/1155719576 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20060828/1156761714 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20060930/1159643737 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20070418/1176877663 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20070605/1181023935 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20090905/1252159866 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20131002/1380739919 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20160419/1461067772 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20160521/1463855170 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20160729/1469758133 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20160802/1470158219 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20160910/1473516586 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20170221/1487689589 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20180127/1516979478

*4:というか、これらは別の世代ではなく、みんな世代的には重複しているか。