梶川はいなかった?

産経新聞』の記事;


2017.2.21 11:49更新

警視庁正面玄関、70代男が自分の腹切る 制止の警察官切られ手にけが

 21日午前11時10分ごろ、東京都千代田区霞が関の警視庁本部正面玄関で、警備中の機動隊員から「刃物を持った男がいる。捜査員が刺されている」と警視庁麹町署に連絡があった。

 麹町署によると、玄関脇の待合室で、相談に訪れた70代の男が、持参した刃物で突然自分の腹を切りはじめ、止めようとした捜査2課の捜査員が、男ともみ合った際に左手小指を切ったという。男は現場にいた他の警察官に取り押さえられた。2人は病院に運ばれたが、ともに軽傷だという。警視庁は詳しい経緯を調べている。
http://www.sankei.com/affairs/news/170221/afr1702210018-n1.html

この記事に添えられている写真のキャプションには「切りつけ事件」という表現があるけど、本当に「切りつけ」たのだろうか。記事の本文からだと、揉み合っているうちに刃が警察官の「小指」に当たってしまったという印象を受ける。前者だとしたら傷害事件ということになるだろうし、後者であれば事故だ。この爺さんを取り押さえたときに、かつての梶川与惣兵衛*1のように、浅野殿、殿中でござる! といいながら、後ろから羽交い絞めにしたのだろうか。
梶川も職務を忠実にこなしただけなのに、ポピュリズム的な浅野贔屓の空気の中でバッシングの対象ともなり、そのバッシングは子孫にまで及んだという損な役回りを歴史に押し付けられた。その一方で、〈刃傷松の廊下〉というか浅野内匠頭による吉良上野介に対する傷害事件について私たちが知っていることは殆どこの梶川や(内匠頭切腹に立ち会った)多門伝八郎*2の証言に拠っているのだった(See eg. 佐藤孔亮『「忠臣蔵事件」の真相』)。
「忠臣蔵事件」の真相 (平凡社新書)

「忠臣蔵事件」の真相 (平凡社新書)

話を元に戻すと、この爺さんの(政治的・宗教的背景を含む)動機はおろか、その素性すら明らかにされていない。まだ何もいうなと言われているようなものである。しかし、根拠のない印象で言わせてもらえば、2015年7月に東海道新幹線車内で灯油を被って焼身自殺した杉並区の男を真っ先に思い出した*3。また、切腹ということだと、2006年に加藤紘一の実家に放火して切腹したけれど果たせず〈生きて捕囚の辱め〉を受けてしまった右翼の爺さん*4はまだ存命なのだろうか。序でに、梶川ゆきこという女性が広島県にいた筈だけど*5、今はどうしているのかなとも思った。