失礼な言い方

蓮實重彦『見るレッスン』*1(第3項「映画の誕生」)から。


(前略)淀川長治さん*2の話をさせていただきましょう。淀川さんは、とにかく有名な方でした。テレビで独特な解説をしておられたのですから、誰もが淀川さんのことをよく知っていると思っており、「ヨドチョウさん、ヨドチョウさん」なんて、ご本人が一番お嫌いだった呼び方をしていたわけです。「ヨドチョウなんて呼ぶ失礼な人間がいますわ」ととても嫌がっておられました。
しかし、あれほど人々の間で人気があったにもかかわらず、淀川さんが実際にどんな映画を好んでおられたか、という点に関してはほとんど誰も何も知らない。しかし、淀川さんが真の意味でお好きだった映画ははっきりしております。それは、溝口健二エリッヒ・フォン・シュトロハイムにほかなりません。(p.71)
「嫌がっておられ」たのか! でも、「ヨドチョウ」という呼び方を聞いたことは殆どない。聞いたのは数度だけ。それもかなり年配の人だった。
人名のこういう略し方って、ナベツネとかミヤケンとかクロカンとか、かなり古い言い方だと思っていたのだけど、決してそうではなく、平成や令和になっても、こういう略し方は再生産されているのだった。キムタク(木村拓哉*3とかこんまり近藤麻理恵)とか。