日曜日にGlamour Barで、舒浩崙*1のドキュメンタリー『郷愁(Nostalgia)』*2を観る。Glamour Barで映画を観るのはこれで2度目*3。
上海に生まれ育った 舒浩崙は華東理工大学を卒業後、米国のイリノイ州立大学で映画制作を学び、修士号を得て上海に帰国後、インディペンデントな映画作家として活動している。
この映画は大きく3つの部分からなっている。先ずは舒浩崙の祖母の語りと「大中里」。静安区の旧英国租界にある「大中里」に、寧波生まれの彼女は1935年以来もう70年近く住み続けている。映画では彼女の昔語りとその日常生活(例えば近所の人たちと麻雀を打ち続ける)が延々と写し出される。次いで、「大中里」で育った舒浩崙自身の幼時の追憶。ここでは、1980年代初頭に中国でオン・エアされた日本のTVドラマ『燃えろ!アタック』*4や山口百恵の「ありがとう、あなた」などが引用される。さらに、1980年代前半に中国で大ヒットしたという某ユーゴスラヴィアの映画の主題歌が流れ、映画はエンディングとなる。さらに、「大中里」のような古い石庫門とは対照的な現代的上海。この映画が撮影されていた時、「大中里」は取り壊されて、新天地のようなおしゃれなショッピング・モールになることが決定されていた。「大中里」に隣接する四季酒店(Four Seasons Hotel)から鳥瞰される「大中里」は或る意味で、この映画の中で最も衝撃的なショットであるかもしれない。また、この映画ではカラー/モノクロの差異によって作家の感情的な強度が表現されていることも付け加えておく。
上映後のトークによれば、 舒浩崙の祖母はこの映画の完成後に逝去し、「大中里」も現在既にその90%が取り壊されてしまったという。
映画の後で、福州路の「老正興」*5で食事。
*1:http://haolunshu.spaces.live.com/
*2:Cf. http://www.mtime.com/movie/45750/ http://www.xici.net/b2467/d43822891.htm また、香港で上映されたときのMichelle Chanのレヴュー(http://thestandard.com.hk/weekend_news_detail.asp?pp_cat=40&art_id=49464&sid=14535931&con_type=3&d_str=20070721)も参照されたい。
*3:Cf. http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20071203/1196651492
*4:これについては、劉文兵『中国10億人の日本映画熱愛史』(Cf. http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20070611/1181541252 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20070618/1182147489 )、pp.181-187を参照されたい。 中国10億人の日本映画熱愛史 ― 高倉健、山口百恵からキムタク、アニメまで (集英社新書)