噂の蛇

朝日新聞』の記事;


ツチノコの「正体」ドキュメンタリーに 監督の不思議な原体験
編集委員・小泉信一2021年9月8日 11時12分


 「幻の蛇」といわれるツチノコの目撃証言や伝承を追っているドキュメンタリー映画監督の今井友樹さん(41)=川崎市=が9日、群馬県太田市藪塚町の「ジャパン・スネークセンター」*1を訪れる。ツチノコに関する映画制作のためで、国内唯一というヘビ研究所を通じてツチノコの正体に迫りたいと話している。

 「ツチノコは蛇の一種ヤマカガシではないかという説があります。好物のヒキガエルを食べると、ビール瓶のように太くなり、その姿がツチノコのように見えるというのです」

 今井さんは、深い山々に囲まれた岐阜県東部の東白川村出身。小学6年のとき、登山の帰りに不思議なものに出合ったという。

 「斜面にあった石を剝がしながら遊んでいたときです。黒くて光沢があり、太くて体長が短い蛇のようなものを見つけたのです。手足はありませんでした」

 棒で突っつくとほんの少し動き、やがて体を丸めて転がり出したという。

 「怖くなって走って逃げました。でも岐阜県では古くからツチノコに関する言い伝えがあり、目撃者も多かった。僕が見たのもツチノコだったと、いまでも思っています」

 上京後、日本映画学校(現・日本映画大)に学び、卒業後は農山漁村の記録映画で知られる「民族文化映像研究所」(東京都)の演出助手などを経て、31歳のころ独立した。昔ながらのアユ釣りやイノシシ猟を撮影しつつ、地域の暮らしを追った。岐阜に伝わっていたカスミ網猟と山の生活とのつながりをたどる記録映画「鳥の道を越えて」も制作。2014年度の文化記録映画優秀賞(文化庁)を受賞した。

 「風土に根付いた庶民の生活文化を記録することが、日本の未来につながるのではないか。ツチノコも同じ。山では不思議なことが起こりうるということを前提に私たちの先祖の暮らしは成り立っていた。それは自然への敬いであり、畏(おそ)れだったのです」

 ツチノコを題材にした映画をつくろうと思ったのは2年前。カメラを携え、奈良、広島、兵庫、岡山、新潟などを自分の車で巡回。各地に残る伝承や目撃談を丹念にインタビューし、映像に残した。

 群馬のスネークセンターでは、敵を威嚇するときに首から下を広げ、コブラのように自分を大きく見せる特徴があるヤマカガシ*2について研究者から話を聞きたいとしている。

 「ツチノコも似たような行動をするといわれ、いくつかの共通点はある。コロナ禍で制作はなかなか進みませんが、来年には完成させたい」と話している。(編集委員・小泉信一)
https://www.asahi.com/articles/ASP977WBZP97UJHB00V.html

ツチノコ」というのは日本を代表する(?)UMAのひとつである。「ツチ」を漢字で書けば槌となるらしいけれど、言い伝えられている「ビール瓶」みたいという形状からすれば、直ちに納得できる。「ツチノコ」に関する伝承や目撃談も(上の記事でも示されているように)かなり広い範囲に広がっている。不図思ったのだけど、そもそも「ツチノコ」という名称は普遍的なものなのだろうか。まあ動植物の名称というのはそもそもローカル性がきわめて強いものだ。例えば「鰤」とか。また、柳田國男*3は各地の方言におけるカタツムリの呼び方を考察した本をものしている(『蝸牛考』)。通常は、こうしたフォーク・タームのローカル性或いは相対性を超越する仕方で生物学的なテクニカル・タームが構築されることになるのだろう。一旦テクニカル・タームが確立すると、科学(理科)教育やメディアの普及を通して、ローカルな一般人も、その地のフォーク・タームではなくテクニカル・タームによって、(例えば)鰤やカタツムリを見るようになる。「ツチノコ」はUMAなので、生物学的なテクニカル・タームが構築されることはあり得ないかも知れないけれど、やはり書籍やTVなどのメディアの普及によって、「ツチノコ」という全国統一的な名称が確立され、各地の人々もご当地のフォーク・タームではなく全国統一的な「ツチノコ」として、自らの体験や地元の伝承を語るようになるということなのだろうか。

*1:https://www.snake-center.com/ https://twitter.com/Hebiken_JSC See also https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/2021/05/13/100121

*2:See also https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20170731/1501432589 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20170801/1501558237 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20170802/1501679933

*3:https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20050623 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20061115/1163563186 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20071007/1191776411 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20071203/1196703664 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20090218/1234940110 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20090813/1250184306 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20091026/1256526561 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20091205/1259982847 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20100906/1283790345 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20110726/1311697481 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20120209/1328760047 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20120414/1334345971 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20120503/1336015456 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20130725/1374722806 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20130807/1375837356 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20130926/1380164962 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20150415/1429066617 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20160307/1457323811 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20160520/1463710878 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20161219/1482081030 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20170413/1492050912 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20180806/1533483448 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20180822/1534916496 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/2019/06/15/025921 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/2019/08/13/091137 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/2019/08/15/110306 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/2019/08/20/092445 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/2019/12/06/092112 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/2020/09/24/125747 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/2021/01/26/112537 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/2021/01/30/164048