モノかココロか

堀江宗正*1島田裕巳――「心の時代」からオウム真理教へ」(in 苅谷剛彦編『ひとびとの精神史 第8巻 バブル崩壊――1990年代』、pp.75-103、2016)


冒頭に曰く、


「バブル」というと、お立ち台で踊る女性を映し出す。そのようなテレビのバブル表象にはうんざりさせられる。むしろ私が記憶しているのは「心の時代」というキーワードである。バブルが始まった一九八六年一一月発表の総理府調査によれば、「女性はすべての年齢層で「物質より心の豊かさ」を重視。男性も[中略]*2心の時代を先取りした女性を追いかける形となっている」という(『読売新聞』八六年一一月三日、一頁)。
スピリチュアルな遍歴をつづった女優シャーリー・マクレーンの自伝『アウト・オン・ア・リム』の紹介記事によれば、「宗教的、オカルトっぽいものとして軽視されがちだった「精神世界」「心の時代」がようやく形を見せて歩き出したようだ」という(『日経流通新聞』八九年七月一一日、一九頁)。「心の時代映す!? 宗教事典――乱立する新新宗教にも光」と題する記事は、弘文堂刊『新宗教事典』、岩波書店刊『岩波仏教事典』の良好な売れ行きを伝えている(『日本経済新聞』九〇年三月一一日、朝刊二五頁)。(p.76)
「お立ち台で踊る女性」というか大規模ディスコ「ジュリアナ東京*3が話題になったのは「バブル」というより、平成になって、みんなが「バブル」の崩壊にそろそろ気付き始めた頃だったのではないかと思う。それはさておき、こうした「心の時代」を背景としてオウム真理教幸福の科学という1990年代以降の日本社会を大いに騒がせ、その騒動に島田裕巳*4が深く関わることになる教団が登場したのだった。