「キーワードは自由」

藤原帰一*1「懐かしい一冊 『あなたと原爆 ジョージ・オーウェル評論集』」『毎日新聞』2020年5月23日

いくつか抜書き。


オーウェル*2には、共産主義を批判した人だというイメージがあった。代表作は、人間に代わって動物が主人となった農場にロシア革命をなぞらえた『動物農場』、そして全体主義の支配する世界を描く『一九八四年』。学生運動よりものちの世代の私は、オーウェル全体主義批判に古風なものしか感じなかった。
動物農場 (角川文庫)

動物農場 (角川文庫)

一九八四年〔新訳版〕 (ハヤカワepi文庫)

一九八四年〔新訳版〕 (ハヤカワepi文庫)


オーウェルのキーワードは自由である。「白人が暴君となるとき、かれが破壊するのは自分自身の自由なのだ」と書いたオーウェルは、自由を奪われることを拒み続けた。同時代のサルトルと違って哲学に入ることはなく、他社の自由を奪うことなしに自由はあり得ないなどと極論に向かうこともない。常に実際的かつ現実的に、自由を奪われない社会を考え続けた人だ。

へそ曲がりだった。スペイン内戦でも、オーウェルが加わったのは少数派。大英帝国保守主義も大嫌いな一方で、ソ連の暴政を見て見ないふりをする同世代のインテリのことが耐えられない。そもそも本人がインテリのくせに、インテリのことが大嫌い。そのへそ曲がりは、晩年のガンジー論にも現れている。(攻略)
この藤原氏の一文が発表されたとき、まだ岩波新書の川端康雄『ジョージ・オーウェル』は出ていなかった。