S2P

鴻巣友季子*1「『ポー傑作選 1~3』(河合祥一郎訳、角川文庫)」『毎日新聞』2023年4月29日


シェイクスピアの専門家である河合祥一郎*2エドガー・アラン・ポーを訳す!


(前略)訳出するのは当然ながら意味だけではない。ライム(押す韻)に加えてミーター(韻律)までが再現される驚き。ポー自ら「構成の原理」で分析した「大鴉」(「ゴシックホラー編」)の緻密な翻訳には腰を抜かすしかない。各連の一行目と三行目に仕込まれた中間韻もすべて再現されているではないか! 「怪奇ミステリー編」はセレクションと共に、ポーの怪死に迫る解説も圧巻。死の前にポーが見せた痙攣、幻覚、 おかしな言動……。従来の通説が鮮やかに覆される。三巻目を「ブラックユーモア編」としたことにも快哉を叫びたい。短編小説、謎かけ詩、創作論も収められ、特に「Xだらけの社説」を読めば、ポーが大いに天邪鬼で悪魔的なユーモリストであることがわかる。巻末の「ポーを読み解く人名辞典」は永久保存版だ。