「難民小説」

鴻巣友季子*1「モーシン・ハミッド『西への出口』」『毎日新聞』2020年4月18日


パキスタン出身の英語作家による、一種の難民小説」。「難民を描きながら従来の難民小説の定石をことごとく覆す革新的な小説」であるという。
さて、「英語」文学一般の状況が言及されている;


(前略)この十年あまり、英語圏では、近未来ディストピア、歴史改変小説、終末世界ものなどが、ときにSFの要素をとりこみながら数々生まれてきた。ミニマリズム文学の時代から、米国が9・11を経験し、さらに英・米の社会分断が明らかになった2010年代には、その傾向が強まった。”英文学”は再び政治の季節を迎えたと言えるだろう。国や言語などを作家の活躍も、”英文学”の視界を広げることに貢献している。本作は、こうした時代に現れるべくして現れた注目作である。