- 作者: 鴻巣 友季子
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2012/05/23
- メディア: 文庫
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鴻巣友季子「ちがくって!」*1(in 『孕むことば』、pp.109-115)
「スプーナリズム」という「言い間違え」について;
「スプーナリズム」が本来の言い方の地位を乗っ取っちゃったという例もあるよ。「新」の念み方。アラタシ→アタラシ。
子どもに共通した言い間違えには、いろいろある。よく聞くのは、ひとつの語のなかで音韻または音または音節が入れ替わったり、別のものが入ってきたり、というパターン。英語の言語学では「マラプロピズム」*2、場合によってはもっと細かく「スプーナリズム」に分類されるものだ。「鉄筋コンクリート」が「テッコンキンクリート」*3になってしまうというあれ。とある男性編集者が口にした「マルシア・ガルケス」という間違いはおかしかった。そういえば、以前、おじさんたちは「マルケス」(作家)と「マルクス」(経済学者orコメディアン)と「マルコス」(比元大統領)をしょっちゅう言い間違えていたなあ。クンデラ(作家)、マンデラ(南ア政治家)、ミンゲラ(映画監督)というのもやっかい。
もとい、子どもの間違いで全国的に聞くのは、「じゃがいも」を「がじゃいも」、「エレベーター」を「エベレーター」と言い間違うケース。後者はうちの娘もやっていた。一時は「かさ(傘)」を「さか(しゃか)」と強情に言いつづけたし、いまでも「かんぱい(乾杯)」を「ぱんかい」、「がんばって」を「ばんがって」になったりする(そういえば、糸井重里の往年の名コピーに「アッコちゃん、ばんがってぇ。うん、ばんがるからね」というのがあった。矢野顕子さんの『オーエス オーエス』というアルバムのコピーだった)。
音韻が入れ替わるというのは、「たまご」が「たがも」になってしまうようなケース。tamago→tagamo。二つめと三つめの子音だけが入れ替わっている。娘の場合は、「テレビ」が「テベリ」、trrebi→teberiとなることがしばしばあったし、わたし自身「ヘリコプター」を「ヘリポクター」herikoputa→heripokutaと言って憚らない子であった。(pp.111-112)
ところで、話し言葉における「スプーナリズム」と書き言葉における「鏡文字」*4との関係は?
*1:Mentioned in https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/2019/03/11/234153
*2:malapropism
*3:「自転車キンクリート」という劇団がある。http://www.jitekin.com/ Mentioned in https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20170203/1486133850
*4:See https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20160921/1474477819