「時代に逆行する」「人造人間」

鴻巣友季子*1「アフマド・サアダーウィー『バグダードフランケンシュタイン』」『毎日新聞』2021年4月24日


「時代に逆行する型破りな人造人間を登場させた傑作」。


(前略)本作もイギリス古典の本歌取りだ。メアリー・シェリーの『フランケンシュタイン*2に端を発する人造人間だが、本作は約二百年後の二〇〇五年、多国籍軍の侵攻とその後のイラクを舞台にしている。
ある古物商が爆弾テロで吹き飛んだ遺骸のかけらを寄せ集めて一個の人体を造りあげる。この体に、一人の警備員が入り込んでしまい⋯⋯。中東のセクト主義地政学的なドタバタとバイオレンスとホラー風味の混交がすさまじい。作品の下絵として、ポーの分身小説『ウィリアム・ウィルソン*3とワイルドの『ドリアン・グレイの肖像』も使われているのでは。英米の大古典をエイヤッと背負い投げる不条理ファンタジー
See also


Frankenstein in Baghdadhttps://en.wikipedia.org/wiki/Frankenstein_in_Baghdad
Sarah Perry “Frankenstein in Baghdad by Ahmed Saadawi review – strange, violent and wickedly funny” https://www.theguardian.com/books/2018/feb/16/frankenstein-in-baghdad-by-ahmed-saadawi-review