知恵蔵の?

NHKの報道;


横溝正史「幻の金田一作品」か 未発表の映画シナリオ見つかる
2023年4月29日 6時55分


金田一耕助シリーズで知られる作家・横溝正史*1が原作を担当した未発表の映画のシナリオが新たに見つかりました。金田一耕助が活躍するストーリーで、専門家は「幻の金田一作品だと考えられる」と話しています。

今回見つかったのは、「石膏美人」という仮のタイトルが付けられた未公開の映画のシナリオで、二松学舎大学が入手した横溝正史の資料の調査で見つかりました。

シナリオは、原作を横溝が、脚本を脚本家の日高繁明*2が担当したもので、調査した山口直孝教授らによりますと1950年代に書かれたとみられ、同じタイトルの横溝作品とは内容が異なっているということです。

遺産相続をめぐる殺人事件の捜査に乗り出した名探偵 金田一耕助が石膏像に塗り込められた遺体の謎に挑む物語で、これまでの金田一シリーズには含まれていない作品だということです。

横溝正史の作品には「石膏魔」というタイトルの未完成の小説があったことが知られていますが、序盤だけしか残っておらず金田一シリーズの作品かどうかも分かっていませんでした。

今回のシナリオは設定やセリフなどが「石膏魔」と非常によく似ていることから、この小説を原作として書かれた可能性があるということです。

山口教授は「幻の金田一作品と考えられる。『犬神家の一族』などのあとサスペンス要素が強まり、行動的に活躍する金田一耕助が描かれた時期の作品とみられる。小説の続きも残されていないか調査したい」と話していました。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230429/k10014053181000.html

銀幕上の「金田一耕助」は先ず片岡千恵蔵*3だった。『本陣殺人事件』を原作とする『三本指の男』が1947年に作られ、1956年の『三つ首塔』まで計7本に及ぶ。『石膏美人』ももし実際に撮られていれば片岡千恵蔵主演だったのだろうか?さて、横溝正史は『犬神家の一族』以降「サスペンス要素が強まり、行動的に活躍する金田一耕助が描かれ」るようになるという。これはミステリーの文学史に照らせば、本格(安楽椅子探偵)からハードボイルドへ、ということになるだろう。そこで思い出したのは片岡千恵蔵なのだった。石坂浩二以降の「金田一耕助」と千恵蔵の何処が最も違うのかと言えば、石坂以降の金田一が書生風の和服を着ているのに対して、千恵蔵は洋服、スーツにネクタイだったということだろう。千恵蔵の金田一からは、ハンフリー・ボガードのようなハードボイルドな探偵が容易に連想された筈なのだった。また、「サスペンス要素」というのはちょっと違うのではないかと思う。ハードボイルドな探偵は自ら身体を投げ出すことによって積極的に事件に介入していく。それに対して、「サスペンス」の主人公は一般人(素人)であり、受動的に事件に巻き込まれることによって、「サスペンス」(未決定状態)、ハラハラやドキドキを経験するというのが主眼になるのでは? その意味では、最近発見された戦時中の横溝正史の非ミステリー小説『雪割草』は十分に「サスペンス」であったと言える。