コータローが休んだとき - Living, Loving, Thinking, Again

承前*1

neanderthal yabuki*2「中山ラビ」https://nean.hatenablog.com/entry/2021/07/30/050423

先日他界した中山ラビを巡って。
作詞家の及川眠子さん*3のトリビュートを知る；

中山ラビの歌に出会わなかったら、おそらく私は音楽の仕事に就くことも詞を書くこともなかっただろうと思う。最も影響を受けたアーティストだった。私はいつまで経っても彼女に追いつけない。
ご冥福をお祈りいたします。https://t.co/XJ5yZpxd8H
— 及川眠子『猫から目線』発売中 (@oikawaneko) 2021年7月5日

一度だけライブ終わりに話をさせてもらったことがある。短い会話だった。職業作詞家という道を選び、どんなジャンルや内容であろうと来た仕事は受けて立ち、売れることヒットさせることにひたすらこだわり続ける私は、たぶん互いに「唯一無二」を目指していても、彼女と共通の話題がなかったから。
— 及川眠子『猫から目線』発売中 (@oikawaneko) 2021年7月5日

こんなふうになりたいと願っても同じにはなれない。どんなに影響を受けても出来上がった作品は違う。でも他者からの影響や刺激があるからこそ、自分をはっきりと認識できるのだ。私をつくってくれたものたちに、ただ感謝の気持ちあるのみ。
— 及川眠子『猫から目線』発売中 (@oikawaneko) 2021年7月5日

また、泉谷しげる *4の回想も*5。

高校時代、金曜の深夜というか土曜の早朝は山本コータローの『パックインミュージック』を聴くのがルーティンだった*6。或る時、山本コータローが諸般の事情で休むということがあって、急遽代打としてマイクに向かったのが中山ラビだった。そのとき、初めて中山ラビの声を聴いた。中山ラビということで強く記憶に引っかかっていることがあるのだけれど、もう大学生になっていた頃、甲斐よしひろがNHKでやっていたラヂオ番組で唐突に中山ラビの曲をかけたのだった。遺憾ながら曲名は失念してしまったけれど、そのとき感じたのは、こんな触覚がダイレクトに伝わってくるような歌詞は今まで聴いたことがなかったということだった。
泉谷しげるが言及している、ボブ・ディランの翻訳者であった中山容。「中山ラビ」の「中山」の由来でもあるのだけど、この「中山容」というのは本名ではなく筆名なのだった*7。1997年に他界*8。ボブ・ディランのほかに、翻訳家としての業績としては、何よりもオーラル・ヒストリー・インタヴューのパイオニアであるスタッズ・ターケル *9の翻訳、またジョン・オカダの『ノー・ノー・ボーイ』の翻訳ということになるのだろうけど、私としては「エロス」を軸とした戦後米国思想史であるリチャード・キング『エロスの社会学』*10の訳者という印象が強いのだった。