阪急電車にて

Via neanderthal yabuki*1「「大阪の人は電車の中で、平気で子供に小便をさせる人種である」(谷崎潤一郎)」https://nean.hatenablog.com/entry/2015/04/20/212305

東京紅團「谷崎潤一郎の西宮・芦屋・神戸を歩く」http://www.tokyo-kurenaidan.com/tanizaki-kobe1.htm


谷崎潤一郎*2ってこんなこと書いていたんだ!


関東大震災の後、一時京都に滞在しますが、大正12年12月から昭和19年4月まで関西に住居をかまえます。谷崎潤一郎が大正14年の文藝春秋阪神見聞録」で大阪の人について書いています。「大阪の人は電車の中で、平気で子供に小便をさせる人種である、――と、かう云つたらば東京人は驚くだらうが、此れは嘘でも何でもない。事實私はさう云ふ光景を二度も見てゐる。尤も市内電車ではなく、二度とも阪急電車であつたが、此の阪急が大阪附近の電車の中で一番客種がいいと云ふに至つては、更に吃驚せざるを得ない。……大阪の人――それも相當教養のあるらしい、サラリーメン階級の人々 - は、電車の中で見知らぬ人の新聞を借りて読むことを、少しも不作法とは考へてゐないやうである。それも長い汽車の道中とか、つい隣席にゐる人の物なら分つた話だが、大阪人のはその借り方がいかにも不躾で、づうづうしい。たとへば私が大朝と大毎の夕刊を買つて乗り込むとすると、執方か一つ、私の手に取らない方の新聞を、ちやんと眼をつけて直ぐ借りにくる。」とあります。いまの大阪でもこんな事はありませんよ。とくに阪急電車は一番品のいい電車ですよ。
谷崎は東京では既にそんな悪習はないという前提で語っている。フロイトを持ち出す迄もなく、言語の習得とともに、トイレット・トレーニングは育児(子どもの社会化)の要諦といえるだろう。子どもにとっては、最初の社会的抑圧の実感といえるかも知れない。何しろ、自分が出したい時に出すことを禁止されるわけだから。日本におけるトイレット・トレーニングの慣行はどうだったのか。そして、近代化(西洋化)はそれをどのように変容させたのか。そういうことを考えてみる必要があるだろう。
中国では、赤ん坊は今でも尻割れズボンを穿かされていることが多い。伝統的には幼児の排泄の抑圧はかなり緩かったといえるだろう。上海に住んでいた頃、流石に(谷崎が吃驚していたような)公共交通機関内での排泄を見たことはなかったけれど、ショッピング・モールとかで「子供に小便をさせる」というのはけっこう目撃していた。尿意が切羽詰まってしょうがないということではない。ショッピング・モールというのは、数分歩けば必ずトイレに駆け込める場所なのだ。また、上海は東京よりも公衆トイレに恵まれた都市である。歩道や公園で「子供に小便をさせる」というのは日常茶飯事。しかし、何時でも何処でも数分歩けば公衆トイレがあるような場所なのだった。とすれば、文化の問題だということになるのだけど、中国の場合、世代というファクターがとても重要だということがある。中流の中国人の場合、基本的に父母は育児をしない。祖父母が育児をすることが多い。そして、公共空間で「子供に小便をさせ」ているのは(管見の限りでは)ジジかババであった。さて、今般の新型コロナウィルス騒動で、野外で子どもを散歩させること自体が制限されたわけだが、それに伴って公共空間で「子供に小便をさせる」という文化も絶たれたのだろうか。

*1:See also https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/2020/09/19/080900 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/2020/09/20/081408

*2:See also http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20070123/1169516497 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20070313/1173808241 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20070415/1176614680 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20070608/1181276365 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20070902/1188716333 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20080310/1205085875 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20080912/1221241060 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20091127/1259344635 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20100201/1264996751 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20110426/1303793393 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20110814/1313322168 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20110823/1314126106 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20120316/1331915706 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20120318/1331998796 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20150722/1437535845 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20151228/1451281770 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20160106/1452046770 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20160902/1472787810 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20170605/1496633759 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20170814/1502688096 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20180122/1516594067 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20180311/1520779514 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/2019/01/17/030303 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/2019/01/21/124932 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/2019/02/02/113901 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/2019/02/25/103829 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/2019/11/18/131108 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/2020/04/28/014844 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/2020/06/25/015948 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/2020/07/29/084939 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/2020/11/10/164946 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/2020/11/11/094725 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/2020/11/12/130801