アナキズム本

山口侑紀「日本のアナキズムアナーキスト」『書標』(丸善ジュンク堂書店)504、pp.6-9、2020


山口さんは花伝社の編集者。昨年急死したデヴィッド・グレーバー*1を読み、「それまで「アナーキスト=政府を否定する人」という単純な(そして間違った)理解を抱いていたため、個人の生き方としてのアナキズム、民主主義の限界を知りつつもそこに期待を寄せる形のアナキズムに衝撃を受け、急遽「アナーキスト」を名乗ることにした」という(p.6)。また、


私は、ヒトラーの政権掌握翌年に処刑されたドイツのアナーキスト、エーリヒ・ミューザムの顔や彼の作詞した曲が好きで、自分で彼の顔写真が大きくプリントされたTシャツ(もちろん黒色)を作ってしまったほどなのだが、ミューザムはアナキズムについて、次のような定義をしている。それは、支配されないことを指し、強制や暴力、奴隷制や法律、中央集権や国家からの解放を意味する。代わりに、アナキズムが重視するのは、自発性、理解、契約、慣習、連帯、そして人々だ、と(一九一二年)。(ibid.)
以下、山口さんが薦めるアナーキズム本。


村山由佳『風よ あらしよ』
伊藤野枝の伝記小説。
栗原康*2『村に火をつけ、白痴になれ――伊藤野枝伝』
伊藤野枝の伝記。

瀬戸内寂聴*3『美は乱調にあり――伊藤野枝大杉栄
瀬戸内寂聴『諧調は偽りなり――伊藤野枝大杉栄
伊藤野枝大杉栄の伝記小説。
美は乱調にあり (角川文庫)

美は乱調にあり (角川文庫)

玉川信明『放浪のダダイスト辻潤――俺は真性唯一者である』(社会評論社
伊藤野枝の最初の夫であった辻潤の伝記。
伊藤野枝の著作は、森まゆみ*4編『伊藤野枝集』(岩波文庫)。
伊藤野枝集 (岩波文庫)

伊藤野枝集 (岩波文庫)

  • 発売日: 2019/09/19
  • メディア: 文庫
大杉栄の著作;
『新編大杉栄追想
『日本脱出記』
大杉栄自叙伝』
自叙伝・日本脱出記 (岩波文庫)

自叙伝・日本脱出記 (岩波文庫)

  • 作者:栄, 大杉
  • 発売日: 1971/01/16
  • メディア: 文庫
金子文子*5については、鈴木裕子編『金子文子 わたしはわたし自身を生きる』(梨の木舎)。伝記小説としては、瀬戸内寂聴『余白の春――金子文子』、キム・ビョラ『常盤の木――金子文子と朴烈の愛』(後藤守彦訳、同時代社)。
現代日本アナーキスト」として、山口さんはブレイディみかこ、栗原康、森元斎を挙げている。

『ぼくはイエローでホワイトでちょっとブルー』(新潮社)
『女たちのテロル』(岩波書店

アナキスト本を読む』(新評論
『狂い咲け、フリーダム――アナキズム・アンソロジー』(ちくま文庫
菊とギロチン――やるならいましかねえ、いつだっていましかねえ』(タバブックス)*6

アナキズム入門』(ちくま新書
『国道3号線――抵抗の民衆史』(共和国)

また、


アナキズム文献センター』http://cira-japana.net/pr/