「解脱会」など

森まゆみ*1「見守るおいなりさん」『毎日新聞』2020年3月9日


『山谷ブルース』の著者エドワード・ファウラー夫妻と新宿区荒木町のとんかつ屋「鈴新」で会うという話。
「鈴新」の主人で「郷土史家」でもある鈴木洋一氏の語り;


(前略)そこの下の策の池*2徳川家康が鷹狩りの時にここでムチを洗ったという伝説ですが*3、昔の池はもっとずっと大きかった。マンション業者に買われて埋め立てられそうになってさ。解脱会にお願いに行ったら、土地を買ってくれたの
唐突に「解脱会*4の名前。解脱会って埼玉県の北本じゃないかと一瞬思ったのだけど、北本は教祖である岡野聖憲の出生地であり教団発祥の地ではあるが、宗教法人としての解脱会の本部は新宿区荒木町なのだった。それにしても、何の解説もなく「解脱会」という名前を見せられて、普通の人はそれがどういう「会」なのか、即座に了解できるのだろうか。
森さんのテクストから外れるけれど、堀越正光氏によると、荒木町を舞台とした小説として、佐々木譲の『地層捜査』、柚木麻子の『あまからカルテット』があるという。因みに、丸山眞男は四谷の愛住町育ちだが、荒木町は近所、子ども時代の丸山の行動範囲だった(Cf. 苅部直丸山眞男――リベラリストの肖像』*5)。
丸山眞男―リベラリストの肖像 (岩波新書)

丸山眞男―リベラリストの肖像 (岩波新書)

  • 作者:苅部 直
  • 発売日: 2006/05/19
  • メディア: 新書
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鈴木さんと出会ったのはもう20年も前。私は雑誌の「アラーキー荒木経惟さん)が荒木町を撮る」という企画に付き合って、毎日、荒木町で話を聞いては、夜は居酒屋で飲んでいた。その頃、荒木町にお金を落としていたフジテレビ、文化放送は湾岸に越し、街はちょっと寂れかけていた。鈴木さんは「荒木町を発見する会」を起こして、町のことを調べ、もり立てようとしていた。
タイトルにある「おいなりさん」とは金丸稲荷神社のこと*6