伊太利の本(木村剛久)

木村剛*1「それでも行きたいイタリア」『いける本・いけない本』15、2011、pp.25-26


僅か2頁に伊太利に関する本がぎゅうぎゅうに詰まっている。知っている本もあれば知らない本もあり、読んだ本もあれば読んでいない本もある。とにかくメモに値するテクスト。
伊太利の本の先ず最初は柳田國男『桃太郎の誕生』。これはボティチェリの「ヴィーナスの誕生」にインスパイアされて書かれたもの。柳田はこの絵を羅馬でアンデルセン『即興詩人』(森鷗外訳)を「片手に見物した」(p.25)。『即興詩人』を巡っては、安野光雅『繪本 即興詩人』と森まゆみ『「即興詩人」のイタリア』。『即興詩人』とゲーテの『イタリア紀行』の共通点は「フィレンツェが描かれていない」ということで(p.26)、和辻哲郎『イタリア古寺巡礼』。さらに、須賀敦子*2の『ミラノ 霧の風景』、『コルシア書店の仲間たち』、『ヴェネツィアの宿』、『トリエステの坂道』。

桃太郎の誕生 (角川文庫)

桃太郎の誕生 (角川文庫)

イタリア紀行(上) (岩波文庫 赤405-9)

イタリア紀行(上) (岩波文庫 赤405-9)

イタリア紀行 下 (岩波文庫 赤 406-1)

イタリア紀行 下 (岩波文庫 赤 406-1)

ミラノ霧の風景 (白水Uブックス)

ミラノ霧の風景 (白水Uブックス)

コルシア書店の仲間たち (文春文庫)

コルシア書店の仲間たち (文春文庫)

ヴェネツィアの宿 (文春文庫)

ヴェネツィアの宿 (文春文庫)

トリエステの坂道 (新潮文庫)

トリエステの坂道 (新潮文庫)


林達夫の伊太利旅行を巡る田之倉稔林達夫・回想のイタリア旅行』。池上俊一シエナ』。角田光代『あしたはアルプスを歩こう』、河島英昭『イタリアをめぐる旅想』、矢島翠『ヴェネツィア暮し』。また最後のパラグラフに曰く、

ただし、「ビバイタリア」とはしゃいでばかりはいられない。日本のコメが食べたい(昔は無理な相談)とローマの街をさ迷ううちに、ぼったくりバーに連れていかれることもあるので要注意だ。ほかならぬ埴谷雄高がその一人だったのは何やらおかしいが、かれはその経験を『欧州紀行』のなかで苦々しげに綴っている。
この『欧州紀行』は昔読んだことがあるのだが、この「ぼったくり」エピソードは忘れていた。
シエナ―夢見るゴシック都市 (中公新書)

シエナ―夢見るゴシック都市 (中公新書)

欧州紀行 (中公新書 310)

欧州紀行 (中公新書 310)

ところで、林達夫の伊太利旅行については、久野収との対談本『思想のドラマツルギー』でも語られていた。この本で語られる林の聖フランチェスコとの出会いの話は端的に感動的だ。それから、私のお薦めの伊太利本は島村菜津、マリオ・スペッツィ『フィレンツェ連続殺人事件』ということにしておこう*3
思想のドラマトゥルギー (平凡社ライブラリー)

思想のドラマトゥルギー (平凡社ライブラリー)

フィレンツェ連続殺人

フィレンツェ連続殺人

なお、伊太利本ということで誰でも思いつくだろう塩野七生*4のものはしかとされている。