パスカルを5分

渡邊十絲子*1「アントワーヌ・コンパニョン『寝るまえ5分のパスカル』」『毎日新聞』2021年11月20日


アントワーヌ・コンパニョン『寝るまえ5分のパスカル』(広田昌義、北原ルミ訳)は『パンセ』*2の解説本であるらしい。


(前略)この本は41章からなるが、毎日5分間のラジオ番組がもとになってできた本なので、ラジオを聞き流すつもりなら5分間で1章が読めるというのがタイトルの意味。リスナーに語りかけるように『パンセ』の見どころを示してくれる著者は、文理融合型の知識人である。

急いで読了する必要はない。わたしは1章ずつ日をおいて読んだ。ゆっくり読み進めればやがて、パスカルが〈相反する二つの主張〉のどちらかに立つのではなく〈両方とも間違いであることを示して、両者を越える第三の主張を提案する〉人であったことや、人間を〈悲惨と偉大のあいだに引き裂かれた中間的な存在〉ととらえていたことなどがわかる。断片的に知っていたパスカルの考え方も、立体的につながって見えてくる。これはとてもよい入門書だと思う。