「われわれの社会がいかに薬物依存者を適切に扱うすべを知らないか」

渡邊十絲子*1「道徳ではなく医学的知識でこそ説得」『毎日新聞』2021年5月15日


松本俊彦*2『誰がために医師はいる クスリとヒトの現代論』の書評。


この本は半生記として書かれているが、そこに二重写しのように、 われわれの社会がいかに薬物依存者を適切に扱うすべを知らないかということが描かれている。著者自身がなにか(たとえばカフェイン)に依存することでようやくもちこたえた日々のことも書く。人が酔うとはどういうことなのか? 依存とは何か? はたして、人は何にもい存ぜずに生きていくことができるのだろうか?
薬物をやめるよう説得するときに必要なのは医学的知識であり、依存者に対して道徳教育は無力である。「ダメ。ゼッタイ。」というせりふに頼りきった思考停止状態に、著者は人生をかけて抵抗しつづけている。