「思いどおりにならない」(メモ)

ことばの顔 (中公文庫)

ことばの顔 (中公文庫)

鷲田清一『ことばの顔』*1からまた抜書き。今度は、陰謀理論な人には〈偶然〉はないと書いたこと*2に対する補足のようなもの。
パスカル『パンセ』の


人間は、天使でも獣でもない。そして不幸なことに、天使のまねをしようとすると獣になってしまう。
という一節を枕にした「二重性――パスカル」というエッセイに曰く、

しかし、思いどおりにならない、思いとは反対のほうにばかり事態が進むというのが、ほんとうは、現実というもののいちばんリアルな感触なのかもしれない。たとえば、風がどうしても止まないとか、犬が言うことをきかないとか、子どもが思いどおりに育ってくれないとか。一筋縄でいくこと、一つの筋道としてきちんと物語れるもののほうが、なんか嘘っぽく感じられる。
融和しようのない対立を内蔵していること、じぶんの二重性に引き裂かれそうになっていること。そういう事態をまのあたりにしたとき、ぼくは、ああこれが現実なんだなあ、という思いにいたく動かされる。(p.16)
パンセ (中公文庫)

パンセ (中公文庫)

See also http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20110609/1307650973