
- 作者: 鷲田清一
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2004/04
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鷲田清一『ことばの顔』*1からまた抜書き。今度は、陰謀理論な人には〈偶然〉はないと書いたこと*2に対する補足のようなもの。
パスカル『パンセ』の
という一節を枕にした「二重性――パスカル」というエッセイに曰く、
人間は、天使でも獣でもない。そして不幸なことに、天使のまねをしようとすると獣になってしまう。
しかし、思いどおりにならない、思いとは反対のほうにばかり事態が進むというのが、ほんとうは、現実というもののいちばんリアルな感触なのかもしれない。たとえば、風がどうしても止まないとか、犬が言うことをきかないとか、子どもが思いどおりに育ってくれないとか。一筋縄でいくこと、一つの筋道としてきちんと物語れるもののほうが、なんか嘘っぽく感じられる。
融和しようのない対立を内蔵していること、じぶんの二重性に引き裂かれそうになっていること。そういう事態をまのあたりにしたとき、ぼくは、ああこれが現実なんだなあ、という思いにいたく動かされる。(p.16)

- 作者: パスカル,前田陽一,由木康
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