闇から出た?

高知新聞』の記事;


岡田以蔵がゲームで大人気 高知市の墓にファン 広告掲載新聞に注文殺到

(08:42)



伝記売り上げも急増
 スマートフォン向けの人気ゲーム「Fate/Grand Order(フェイトグランドオーダー)(FGO)」の見開き広告が7月6日付の高知新聞朝刊に掲載され、全国のファンから新聞の注文が殺到した。広告に登場したのは、土佐勤王党員で「人斬り以蔵」とも呼ばれた岡田以蔵。ゲームのキャラクターとして人気が高く、ファンが墓参りで高知を訪れ、以蔵の伝記の売り上げ増につながるなど、大きな反響が起きている。 


 FGOは、世界各地の伝説の人物ら約300人がキャラクターとして登場するロールプレーイングゲームで、今年4月にはダウンロード数が2千万を突破した。5月からはリリース5周年を記念し、47都道府県の名所とゆかりのキャラクターを配したイラスト広告を全国の地方紙に順次掲載している。

 ゲームの中で以蔵は2018年、坂本龍馬と同時に登場した。土佐弁を話し、人斬りとして荒々しく振る舞う一方、弱気な一面も見せるギャップがファンの人気を集めた。

 見開き広告は「時代は変わるちゅうても、ここは変わらんのう」との言葉とともに、桂浜を歩く以蔵をデザイン。高知新聞社がネット販売枠として2千部を用意し、6日午前6時から受け付けを始めたところ、2時間ほどで完売した。

 ツイッターのトレンド(登場頻度が高く話題性の高い言葉)には「以蔵さん」が入り、「以蔵さんやったー!!」「(高知に)おかえりなさい」「うれしい。泣きそう」とのつぶやきが相次ぎ、ファンの熱狂ぶりをうかがわせた。

 朝刊配達を午前5時から待っていたという40代女性=土佐市=は「以蔵さんや!って、朝から友人と大盛り上がり。さっそく『聖地巡りで桂浜に行きたい』という県外の友人もいますよ」とうれしそうに話した。

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 ゲームの以蔵ブームは現実の世界にも波及している。

 高知市の歴史家、故・松岡司さんが2014年に刊行した伝記「正伝 岡田以蔵」は、FGOに以蔵が登場した2018年以降売り上げが急増した。出版元の戎光祥(えびすこうしょう)出版(東京都)がネットで宣伝したためで、「会社ができて以来のすごい勢いで売れました」と戎光祥出版。現在は6版まで出ており、「歴史の一般書でこんなに重版がかかることはまずありません」と声を弾ませる。

 高知市薊野北町1丁目の真宗寺山にある以蔵の墓でも、全国のFGOファンの姿がみられるように。墓前に用意された台帳には「やっとお会いできました」「来てよかった」などのメッセージやゲームの以蔵のイラストが寄せられている。

 台帳を管理する地元の西森一郎さん(89)は「広告の舞台が桂浜なら龍馬が登場してもおかしくないのに、以蔵が大きく出ていて感動した。えい男ですねえ」と喜び、「以蔵は裏方に徹し、歴史の表舞台にあまり出てこなかった。この広告をきっかけに、以蔵が顕彰されることを期待してます」と話していた。 (河本真澄)
https://www.kochinews.co.jp/sp/article/379912/

私も含めて多くの人が岡田以蔵*1という人物を知り、そのイメージを形成したのは、司馬遼太郎の短篇小説「人斬り以蔵」を通してだった筈。そこで得られた人物像は、武市半平太に都合のいい殺人機械として操られた無教養で粗暴な奴というものだった。これは司馬遼太郎による神話破壊でもなんでもなく、土佐人にとって、坂本龍馬*2が光だとすると、岡田以蔵の方はできることならその存在を抹消してしまいたいような存在、黒歴史だったのでは? 以蔵が闇から出てくるのはいいことなのだろうけど、この新たな以蔵というのは、坂本龍馬のような意識高い系になってしまうのだろうか? それとも〈鉄砲玉の美学〉を保っているのだろうか?
人斬り以蔵 (新潮文庫)

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