面と線 - Living, Loving, Thinking, Again

ななきち所長*1「ムーミン“トリビア”と、リトルミイの名言！」https://labo77.com/entry/2021/08/08/001040

８月９日はトーヴェ・ヤンソンの誕生日に因む「ムーミンの日」*2だった。
さて、（私も含めて）多くの日本人にとっての「ムーミン」*3のイメージは、1990年代に放映されたアニメ『楽しいムーミン一家』に基づいているのではないだろうか。勿論、（私を含む）上の世代は1960年代末から70年代前半にかけて放映された、岸田今日子が「ムーミントロール」の声を担当し、井上ひさしが主題歌の作詞を行っていた『ムーミン』の影響を引き摺っているということはあるにせよ、この世に溢れる「ムーミン」のキャラクターはみな、この『楽しいムーミン一家』をベースにしている。因みに、私が卒業した大学もイメージ・キャラクターとして「ムーミン」を使用していた。井上圓了の感想を聞いてみたい気もする。さて、「ムーミン」は日本でアニメ化される以前からヴィジュアルな存在だった。トーヴェ・ヤンソン自身によるイラストレーションがあり、さらに弟ラルス・ヤンソンによる漫画もある。或る時「ムーミンコミックス」の『恋するムーミン』（冨原眞弓訳）を読み、それまで慣れ親しんでいた（アニメの）「ムーミン」とのイメージのギャップにちょっと吃驚したのだった。漫画は元々英国の新聞に掲載されたものなので、大人向けに作られているということはある。それよりも、アニメやそれに基づくイラストレーションが色が塗られた面の集まりとして構成されるものであるに対して、漫画は基本的には単色の細い線の集まりとして構成されるということの方が大きいように思う。面か線か。ところで、トーヴェ・ヤンソンの絵もまた線を強調したものだった*4。ほかにも、こういうギャップを経験したという人はいるのだろうか。