アングラにはフォーク

ななきち所長*1カルメン・マキ '70ガールズロックの裏番長」https://labo77.com/entry/2021/07/29/192821


カルメン・マキは、ここで述べられているように、「シャウト」が凄いというのはその通りなのだけど、やはりそれより凄いのは静と動のメリハリだと思っている。静かな局面での、突き放したというか、ちょっと投遣りな、歌うというよりは語るというべき歌い方が素晴らしい。カルメン・マキさんは最初天井桟敷の役者としてデビューしたのだった。彼女の歌というのはやはり「女優の歌」なんじゃないかと思ったことがある*2。所謂〈歌手〉にはああいう歌い方は却って難しいのでは? また、彼女の〈歌〉を堪能するためには、どうしても〈時間〉が必要だ。「私は風」も「閉ざされた町」も10分以上。10分以上の大曲が似合う歌手。多分日本ではほかにいないだろうし、世界的にも珍しいのでは?

カルメン・マキ&OZ

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閉ざされた町

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ところで、アングラ演劇ということで思い浮かぶ音楽はロックではなく、フォーク。それは状況劇場の音楽を小室等が一貫して担当していたせいかも知れない。アングラ系の学生劇団でも、劇中で(多くは)女優がフォーク調の歌を歌うというのはほぼ定番だったんじゃないだろうか。勿論、アングラ演劇といっても、(「時には母のない子のように」を作曲した!)田中未知やJ・A・シーザーによって担われていた天井桟敷の音楽は全く違ったものだったし、黒テントのはさらにまた違ったものだったのだけど。
あと、女優性を感じさせる歌手は例えば一青窈*3。そのベスト・アルバムを聴きながら甦ってきたのは昔のアングラ演劇の記憶だった。因みに、彼女に演劇経験はない筈だし、主演映画も侯孝賢の『珈琲時光』のみ。さて、マキオズで最も好きな曲を挙げろと言われれば、「空へ」と言う。これは「私は風」や「閉ざされた町」のような大曲ではないのだけど、最初に述べた静と動のメリハリがコンパクトに凝縮された曲だとも言える。また、

遠く聞こえる
お前の声が
いつもあたしを支えた
という時期がたしかにあったのだ(個人的には)。
III

III

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