棘から花へ?

最近思いついたのだけど、前近代の日本人にとって、バラという言葉から真っ先に思い浮かぶのは花ではなく棘だったのでは? 司馬遼太郎の『燃えよ剣』が再度映画化されるということだけど*1土方歳三は子どもの頃、


バラガキ


と綽名されていた。これは、薔薇の花のように奇麗なお坊ちゃまという意味では全然なくて、バラのように刺々しいガキという意味だろう。
バラというよりは茨。「茨城という地名は、『常陸風土記』によれば、侵略してきた大和朝廷軍が「国栖」とか「土蜘蛛」とか「佐伯」とか呼ばれた先住民の棲み処に「茨」を仕掛け、棲み処に帰ってきた「国栖」たちが「茨にひっかかり、突き刺されて死んでしまった」という故事に由来する(佐伯真一『戦場の精神史』、p.32)。「茨」は最初「うばら」と念まれていたが、後に「いばら」と訛った*2。どのようにして、何時頃、この「いばら」の「い」が取れて、華やかで香しい薔薇になったのかは知らない。ところで、西城秀樹の「薔薇の鎖」*3から真っ先にイメージされるのは棘だろうか、それとも花だろうか?