別の意味

承前*1

アミン・マアルーフ『アイデンティティが人を殺す』(小野正嗣訳)。第II章「近代が他者のもとから到来するとき」。


「地球上のどこに暮らそうとも、近代化とは西洋化のことなのです」(p.88)。
当然、「近代化」=「西洋化」というプロセスの意味は、西洋人と非西洋人とでは異なった意味を持つ。


(前略)前者では、自分自身であることをやめることなく、みずからを変革し、変化に適応しながら生きていくことができます。西洋人に関しては、近代化すればするほど、自分たちの文化と調和を感じ、近代化を拒絶する者だけがそこからとり残されているのだとさえ言えるかもしれません。
残りの世界、敗北した文化に生まれた人たちにとっては、変革と近代をどう受容するかは西洋の場合とまったく違ってきます。中国人、アフリカ人、日本人、インド人、アメリカ・インディアンにとっては、そしてギリシア人、ロシア人にとっても、イラン人、アラブ人、ユダヤ人、トルコ人にとっても、近代化とはつねに自分自身の一部を捨て去ることでありました。ときに熱狂をもたらすことはあっても、近代化が何らかの苦い思いを、屈辱と否認の感情を伴わずになされることはありませんでした。[西洋に]同化することの危険についての胸を刺すような問いを、深いアイデンティティの危機を伴わずにはいられなかったのです。(pp.88-89)