弥生猫

「猫はなぜ人間と暮らすのか? 日本と中国、どっちから来た?」https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20190715-00000011-pseven-life


このタイトルはミスリーディング。「日本と中国、どっちから来た?」という問題ではない。最近の発見によれば、猫の日本への渡来は今まで考えられていたよりもかなり早かったという話。


つい10年ほど前までは、奈良時代から平安時代の初期に、仏教の経典(紙)をネズミから守るため、中国から連れて来られたといわれていた。ところが最近の研究で、そんな通説を塗り替える証拠が次々と発見されている。

「2007年に兵庫県姫路市の見野古墳群から、“猫っぽい動物”の足跡がついた須恵器(日本で古墳時代中期から平安時代にかけて作られた土器)が発見されました。その年代を推定したところ、およそ1400年前、古墳時代後期から飛鳥時代のものということがわかりました」


さらに翌年、長崎県壱岐島のカラカミ遺跡から、ヘビやイノシシ、魚などの骨に交じって、十数点の猫のものらしき骨が見つかった。年代を推定した結果、これらの骨は今から約2100年前の弥生時代のものであると判明。この発見により、日本への猫伝来の時期は、約700年も遡ることになった。

「中国に猫が伝わったといわれているのが、今から約2000年前。つまり、中国に猫が伝わったのとほぼ同時期か、またはそれよりも早く、日本に猫が伝わったことになります。今までは、メソポタミアからエジプトへ、そこからヨーロッパ、さらに中国に伝わり、日本に来たという説が有力でしたが、ひょっとしたらインドや東南アジア経由など別のルートがあったのかもしれません」*1

国立歴史民俗博物館のリニューアルされた「先史・古代」の展示を観に行って*2、凄く興味を引かれたのが上で言及されている壱岐の「カラカミ遺跡」に関する展示だった。壱岐といえばツシマヤマネコ*3が棲息する対馬から遠くない。しかし、展示によれば、発見されたネコ科動物の骨はDNA分析の結果ヤマネコよりもイエネコに近いことがわかっているということだ。
また、中国人の伝承でも、猫は鼠から経典を護るために仏教と一緒に印度から渡来したということになっている。印度と日本の間に中国があるということなのだけど、問題なのは猫は中国の何処にやって来たのかということでもあるだろう。通説によれば、大乗仏教は中央亜細亜経由で先ず中国西北部に伝来した。であれば、猫も同じルートでやってきたわけだ。しかし、印度から中国へのルートはそれだけではない。印度の東部から現在の緬甸を経て中国西南部(現在の雲南)へ至るルートも考えられるわけだ*4


「化け猫の困惑」http://d.hatena.ne.jp/t-hirosaka/20160111/1452495560 *5


これは最初に引用した猫に関する新発見を反映したものではないが、ここで述べられているように、古代・中世において猫がレアな動物だったという事実は動かないだろう。