Careless whisperから始まり

最愛の子ども (文春文庫)

最愛の子ども (文春文庫)

松岡宗嗣*1「「同性愛がうつる」と教室から追い出され、家にも帰れなくなった。10代の性的マイノリティが学校で受けた差別」https://www.huffingtonpost.jp/entry/story_jp_5ffe466ec5b6c77d85eb0b74


松浦理英子*2『最愛の子ども』のオチから物語が始まるという感じ。しかし、これは小説ではなくノンフィクションであり、また時代も昭和ではなく、平成、しかもどうやら21世紀に入ってからであるようだ。


江口優花さん(仮名)は、高校生の時、通っていた学校の先生から「同性と付き合っているのは不純だ」「同性愛が他の生徒にうつる」と言われ、クラスでの授業を受けることができなくなった。

当時一緒に住んでいた親戚にもアウティングされ、家に帰れない日々が続き、学校では教室から追い出され、別室で個別で教えられるように。


「1年生の時、クラスの友人と”恋バナ”をしていたら、『彼女いるの?』と聞かれて、付き合っている人がいるよと答えました。そうしたら、『彼氏じゃないでしょ』と言われたので、そうだよと、女性と付き合っていることを伝えました。」

友人からは「別に良いんじゃない」とスムーズに受け入れられたという。しかし、次の日、江口さんが学校にいくと突然教員に呼び出され「心当たりない?」と指導室に連れていかれた。

「誰かが先生にアウティングをしていたようです。誰が言ったのかはわかりません」

そこから江口さんの高校3年間が大きく狂わされてしまうことになる。

アウティング*3というと禍々しい感じがするけれど、「アウティング」した人も、確かに軽率(careless)ではあったけれど、こんな大事になるとは思っていなかったのでは? 

「指導室には先生と校長先生がいました。『あなたが同性と付き合っているということが噂になっています。これは本当なの?』と聞かれて、私が答えようとする前に『それは不純な交際だから』『普通じゃないよ』と言われました」

「その後は、先生たちから『同性愛が他の生徒にうつる』とか『海外で育ったからクラスのみんなを”ソッチ側”に引きずり込もうとしているのでは』など散々なことを言われました」

さらに、付き合っている人と別れることを強要された江口さんだが「自分は何も間違ったことはしていない」と、到底受け入れることはできなかった。

すると「江口さんが教室にいると他の生徒に悪影響だから」と、その日から別室で授業をうけさせられることになった。

「『昨日、親戚のお家にも電話したから』とも言われて、あ、今日からお家に帰れないんだなとすごくショックだったのを強く覚えています」

江口さんが住んでいた親戚の家も、規範意識が強い家庭だった。

露西亜人の場合もそうだけど*4、一般的な想像力において、「同性愛」や「クィア」というのは「うつる」ものなのか! まあ感染しても、そんなに不都合はないだろうけど。


松岡宗嗣「「アウティングされ内定取り消しに」Xジェンダーの塾講師が受けた差別」https://www.huffingtonpost.jp/entry/story_jp_60079758c5b6efae62fcc788


これも酷い話だ。
ところで、どちらの話も、組織名は特定されていない。当事者のプライヴァシーや身の安全を守るためというなら仕方ないけれど、特定の性的指向に対する差別を躊躇いなく実行しているような組織は、できるだけその名前を曝して、社会的な批判の対象とすべきであろう。